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トロオドンの表現活動

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詩や物語、絵、などなど。
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記事一覧

追憶 〈詩〉

追憶 〈詩〉

夜中にふと目が覚めたから
あなたの肌に触れて息をした

心臓の音が手を伝ってくる
私を生かすリズム
いつかどうやっても別れが来るなら
今の幸せのまま溶けてしまいたい

あなたの湿った肌や柔らかい髪の毛
確かに触れられるのに留めてはおけない

すべてを覚えていたいのに
指の間こぼれていく何気ない記憶
あなたが大切にしてくれたことも
愛しさを帯びた眼差しも
必ず忘れてしまうだろう

ずっと続くと信じら

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アイデンティティ 〈詩〉

アイデンティティ 〈詩〉

土のようなものだろうか
それともパスタのように 棒状だろうか
雲のように あやふやなものだろうか

統合したり崩壊したりするらしい

どんな手触りだろうか
どんな色だろうか
どんな匂いで どんな味だろうか
少し酸っぱいだろうか
少し苦いだろうか

花束のようならいいなと思う
一種類じゃなくて 色とりどりの
手にした時に笑顔がこぼれるような

曼荼羅フライト 〈詩〉

曼荼羅フライト 〈詩〉

太鼓の音に
鐘の音が重なるとき
ふっと軽くなる
輪のひとりになる

光に溶けたような
闇にまぎれたような
形は消えても
気配は残る

まわるまわる
水に流されるように
それとも蝶の乱舞
後に続いて連なるのに
決まりは何もなくて
きみとすれ違うときに
気づいてくれなくても
ひとり微笑む
湖面にはさざなみも立たない

枝分かれしたりひとつになったり
ただ泳ぎ回っているだけで
何かを描いている
わたしは

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実りの音 〈詩〉

実りの音 〈詩〉

ちょうちょ ちょうちょ 
ちょうちょの道に
こぼれるリン粉
3つの火の玉

ちょうちょ ちょうちょ
追われているの?
はぐれた ちょうちょ
編まれたベッドで 羽を休める
ここは静かで 温かい

水の音 海の音
流れる 揺れる
「一人の方が安心できる
仲間は全部食べてしまった」
小さな魚は 力強く
けれども流れに逆らわない

はじける実 大きな雷
畑に響く 実りの音

におい 〈詩〉

におい 〈詩〉

秋のにおいは パリのにおい
しめった葉っぱのにおい
冷たい石畳のにおい
澄んだ夜のにおい

こわいものなしで
世界の喜びも楽しさも希望も
全て手に入れていた におい

私にも あれだけの自由があったと
胸が わしづかみにされる におい

それは 過去への羨望やあきらめではなく
宝物を ながめるような ウキウキした におい

元気な人の論理 〈詩〉

元気な人の論理 〈詩〉

これ全部、元気な人の論理。
元気じゃないときに言われても響かない。

ポジティブになったからって
いつだって好転するわけじゃない。

元気な人の論理は、たまに重く
たまに息苦しい。

爪痕 〈詩〉

爪痕 〈詩〉

昔、書いた詩。
見つけたから、載せときます。

急に、何も告げずに、消えてしまいたい
そうしたら、みんなの心に爪痕を遺せるもの
と、彼女は言った

気づけなかったことを悔やんだり
もっとできることがあったはず、と
自分を責め続けるから
ずっとみんなの記憶に遺る

できるだけ何気ないタイミングで
蝋燭の火が急に瞬いて消えるように
消えてしまいたい

それは、彼女の最期の演出
彼女の物語の結末の1ペー

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