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アイデンティティ 〈詩〉
土のようなものだろうか
それともパスタのように 棒状だろうか
雲のように あやふやなものだろうか
統合したり崩壊したりするらしい
どんな手触りだろうか
どんな色だろうか
どんな匂いで どんな味だろうか
少し酸っぱいだろうか
少し苦いだろうか
花束のようならいいなと思う
一種類じゃなくて 色とりどりの
手にした時に笑顔がこぼれるような
曼荼羅フライト 〈詩〉
太鼓の音に
鐘の音が重なるとき
ふっと軽くなる
輪のひとりになる
光に溶けたような
闇にまぎれたような
形は消えても
気配は残る
まわるまわる
水に流されるように
それとも蝶の乱舞
後に続いて連なるのに
決まりは何もなくて
きみとすれ違うときに
気づいてくれなくても
ひとり微笑む
湖面にはさざなみも立たない
枝分かれしたりひとつになったり
ただ泳ぎ回っているだけで
何かを描いている
わたしは
におい 〈詩〉
秋のにおいは パリのにおい
しめった葉っぱのにおい
冷たい石畳のにおい
澄んだ夜のにおい
こわいものなしで
世界の喜びも楽しさも希望も
全て手に入れていた におい
私にも あれだけの自由があったと
胸が わしづかみにされる におい
それは 過去への羨望やあきらめではなく
宝物を ながめるような ウキウキした におい