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デリダ「正しく食べなければならない」

お腹空いた=食べる 
好きだ=キスをする
お母さん(綺麗なお姉ちゃん)=おっぱいを吸う
あいつ腹立つ=〇〇○と噂を拡散する

全て口を通すものである。何か違いがあろうか?デリダはこう言う

口を通る必然性を文字通りに受け取ればよいのだ。口を通るものが言葉であれ物であれ、文であれ、日々のパンであれ葡萄酒であれ、他者の言説=舌であれ、唇であれ乳房であれ。

「正しく食べなくてはならない」in「主体の後には何が来るのか」)

食べること、
愛すること、
生殖すること
そして

語り 語られること

捕食=同一化するという
ひとつの大きな力による状態変化。
自己を喪失
他者を消化する自他融合の行為である

数学者ルネ・トムは著書「構造安定性と形態形成」でこの数学的分析を行っている(笑)
そして
恋=愛とはフロイトによると
盲目に
「憧れ」「自己を失うこと」
「所有」し「占拠」されること。

英語表現ではPosessionとなるが、
ドストエフスキーの「悪霊(Posession)」のように憑依、悪霊に取り憑かれ「投影同一視」=「取り憑かれ」「同一化」すること。誰かを愛しすぎると
「自尊心が低下」し
自信を失くし
「自己が失われ」

その愛する「誰か」になる。(フロイト ナルシシズム入門)

例えばAさんを愛していたR君とBさんを愛するようになったR君は愛に於てメタモルフォーゼを経験し全く異なる人間となっていると平野啓一郎が「分人」という語を提案したことは有名である。

つまり他者(牛、豚、愛する人…)を自分のものとするという行為は
自己が融解し、
新たな形態「人格」へと生成変化する
「催眠」=解離状態。

その生殖と捕食が生み出す主客の区別の喪失自分が自分でなくなるそのカタストロフ(状態変化)はエネルギーを消費し死に近く=眠くなる。だから数学者トムは言う

食事と情事の後には睡眠が来る

ルネ・トム「構造安定性と形態形成」

文字通りの「催眠」状態。
バタイユはこれを「死を前にしての歓喜の実践」=過剰エネルギーの消費=経済的と論じている。


解離=催眠は
ジャネやフロイト、フェレンツィにより同一化として議論され、
フェアベーン、アブラハム&トロークにより「取り込み」「体内化」として更なる分析が行われている。

そして
歴史を遡ると、この生成変化はアリストテレスにより「何かから何かへ」という消滅を含む構造、ヒュポケイメノン=あらゆる述語を取り生成変化する「投げ出される」可能性のある主体として「自然学」第5巻第1章で論じられている。

あらゆる変化は何かから何かへ[の変化]である。(このことは名前からも明らかである。つまり、他の何かの 後にあるとは、一方がより先にあり、一方がより後にある)。それゆえ、変化するものは4つの仕方で変化しう ることになる。すなわち、ヒュポケイメノンからヒュポケイメノンへ[変化する]。ヒュポケイメノンからヒュ ポケイメノンでないものへ[変化する]。ヒュポケイメノンではないものからヒュポケイメノンへと[変化する]。 ヒュポケイメノンではないものからヒュポケイメノンではないものへと[変化する]、である

Phys. V1, 224b35–a7


つまり 生成変化は必ず

口を通して起きる。

これをデリダは「象徴的食人」🟰刻印化と呼ぶ

口を通るものが、
日々のパンなどの食べ物であれ、
唇であれ乳房であれ、
他者の言説=舌であれ 

口を通れば
現実的 及び 象徴的に
他者によって食べられるがまま
食べ=話し=内化する」ことで

モノ は 非モノ 
主体 は 非主体
へと脱固有化される。

「食べる」とは何か?
を問うべきなのである。

食べる 
愛する 
語る=他者に刻印を与える ということは

他者に同一化し、
他者を同化し、
内化し、
致死」させること
では
「主体の後に誰が来るのか?」
この著書のタイトル(ジャン=リュック・ナンシー設定)にデリダは怒りを隠さない。

この言説は「主体の純然たる清算を結論する」
「この言説こそ、まず、批判ないし脱構築するべきだと思う」

他者を
切断したい場所で切断するわけにはいかない
これは他者の「抹殺=粛清」を意味する。
極論ではあるが
テロリストでない人を テロリストという型枠で切り取ったり
詐欺の意図も全くない人を 詐欺師として「決済」しては「犯罪」なのだ。
「汝 殺すなかれ」
「隣人を食べてはならない」
「私だけ栄養豊かであってはならない」

デリダは強調する

他者を「正しく食べなければならない」

しかし我々は

いかに主体を切り取るべきかが
けっして分からないということを、
これまで分かったためしがない

デリダ 「正しく食べなければならない あるいは主体の計算 ジャン=リュック・ナンシーとの対話」in「主体の後には誰が来るか」












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