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この本のこと

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個人的に思い入れのある本、大切にしたい本、知人が書いた本や、私がちょっとだけ載ってる本などについて書いています。
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#この本のこと

ラテン音楽と『彼岸過迄』

小さいころから本が好きでした。覚えているのは、地元の小学校の校庭に毎月1度だけやってくる「移動図書館」のこと。マイクロバスいっぱいに運ばれてきた本の中から、面白そうな絵本や児童文学を選ぶのが楽しかった思い出。 日本の昔話や、海外の童話など、いろいろ手当たり次第に借りては読んでました。五味太郎さんの絵本とか、好きだったなぁ。「ずっこけ三人組」シリーズもよく読んでた。 次第に小学校の図書館でも本を借りるようになり、名探偵ホームズシリーズがとても面白くて図書館にあるだけ全部読み

高等遊民が羨ましかった

ロサンゼルスの、陽気なラテン音楽が流れる週末のコインランドリーで、僕はよくこの本を読んでいた。夏目漱石先生の『彼岸過迄』。リトル東京のはずれにある古本屋さんでこの日焼けして茶色く変色した本を見つけ、1ドルで買ったもの。奥付には「定價百四拾圓」と書かれている。 大学を卒業して、僕はホームレスになった。仕事が見つからないまま、車で西海岸を移動しながら職探しの旅を続けていた。その状況は、「お前はこの社会に必要のない人間なのだ」と言われているようで辛かった。しかしもっと辛かったのは

英語を習得するきっかけとなった『英語基本語彙辞事典』

高校三年生も半ばを過ぎて「留学するぞ!」と決意した時、僕の英語力は悲しいくらい低かった。そもそも、高校の英語の授業が嫌いだった。英語でまともに会話をしたことなんてなかったし、そもそも外国人に知り合いなどいない。海外に一度も行ったことすらないのに、なぜか留学を決意してしまうとは……。 なんとなーく進学校へ進み、なんとなーく大学を目指していた高校時代。特にこれといって学びたいことがあるわけでもなく。学費が安いという理由だけで私立ではなく国公立を目指すように親から言われ、みんなが

人生で何度も読み返す『Flowers for Algernon』

久しぶりに散歩をしながら「Flowers for Algernon」のオーディオブックを聴いた。3年前に、Audibleで購入したもの。 一番最初に読んだのは、10代の頃。妹がこの本の日本語訳である『アルジャーノンに花束を』のハードカバーを持っていて、それを借りて読んだのだ。ストーリーに感動して、最後少し泣いた。 高校三年生で留学を決意して、英語の勉強にどっぷり浸かっている頃に、「なにか洋書を読んでみたいな」と思って選んだのが、この「Flowers for Algerno

博物館学とインターン

博物館が好きだ。 科学や歴史、地理、生物学、考古学などなど、ありとあらゆる学問のエッセンスが詰まった「人類の叡智」の象徴みたいな感じがして、ワクワクする。展示や標本を見たり、触れたりすることで、新しい発見があり、学びがある。興味あることに対して理解が深まっていくし、また同時に全く新しい扉が開くこともある。子どもの頃から好きだったが、大人になってもずっと楽しい。 きっかけは、小学生の頃。友人と一緒に、上野にある国立科学博物館を訪れた。まず、その収蔵品の多さに圧倒された。展示

陶芸の釉薬調合―660レシピと応用例

火(fire)と水(water)、土(earth)、そして空気(air)。昔の人は、この4つの要素が全ての物質を構成していると考えられていた。世界を形作るための4つの元素。現在は、元素周期表を見ると118個の元素が並んでいるけど、実際に我々の身の回りにあるのは80種類以上、90種類くらいであると言われている。そう考えると、たった4つの元素が世界のすべてを構築していると信じていた時代はなにか物足りないものに見えるかもしれないが。陶芸の世界ではわりとこの4つの要素が作品制作の全て

15日間アメリカ長距離列車の旅

1996年から97年に変わる年越しの瞬間、僕はシカゴへと向かう列車の座席でうとうととしていた。サンフランシスコからシカゴへの約4千kmの道のりを2泊3日かけて走る長距離列車、アムトラックのカリフォルニア・ゼファー。僕は、15日間乗り放題のUSAレイルパスを購入し、当時住んでいたリノの駅からこの列車に乗車した。移動している間に太平洋時間、山岳部時間、中部時間とタイムゾーンが変わっていくので、だんだん現在時刻があやふやになり、気づいたら新しい年を迎えていた。年越しの瞬間、ラウンジ

『fotolog.book』に載ったピンホール写真

Instagramが世界的に認知されて広まっていくよりも前、Fotolog.netというオンライン上の写真コミュニティがあった。世界中の写真好きが集まっていて、いろんな国のそれぞれいろんな個性を持ったプロ・アマ混交のフォトグラファーさんたちの写真が見られるのが楽しかった。2002年にサービスインして以来、すごい勢いでユーザー数が伸びていった。僕が使い始めた2003年頃には、日本でもかなり話題になっていたと思う。無料会員だと、1日に1枚しか投稿ができない。なのでみんな、渾身の1

スペイン語のすすめ

アメリカに留学して、アートを学ぶと決意した時、おそらく卒業してから就職に苦労するであろうことを見越して、英語の他にもうひとつ外国語を身につけることにした。スペイン語を選んだのは、そんなに深い理由はない。単に、開講しているクラスの数が多かったのだ。アートのクラスを取りながらでも、選択できる曜日と時間帯のクラスがあったから。フランス語や中国語にも興味はあったが、スペイン語ほどクラスの数が多くなかったのでやめておいた。 最初にスペイン語のクラスを受講した時、びっくりした。初級の一

アンバサダー・マーケティング

今日は、「アンバサダー」をテーマに個人的な考えとか、体験とか、とりあえず思うところなどを書いていこうかと。 最初にざっくりとこれを書いている私「前田とまき(TOMAKI)」のことを説明すると、一応本業は「デジタルマーケティング」の代理店というところで働いていて、外資系のわりと大きな系列会社の日本にある末端の会社みたいなところで仕事をしています。もともとは、ウェブ制作会社でデザイナーからディレクター、プロデューサみたいなところを担当していて、その後プロジェクトマネージャーに転

留学してた頃に撮った写真

1994年、サンフランシスコにフィールドトリップで訪れた時の写真。ヨセミテ公園だったかな。とにかく、大きな木。 白黒で撮影したものをカラーにしてみた。留学したばかりの頃のクラスメイトと、ジオグラフィーの先生。 白黒で撮影した写真をAIを使って高解像度化し、さらにカラーに着色してみた。 ピラミッドレイクで撮った写真。一緒のクラスだったのは、留学して初めての夏学期だけだったけど、その後も卒業間際までずっと仲良くしてもらってた。時々、彼女の家にも遊びに行ったり。 友達と呼べ

梶井基次郎の『檸檬』

気づけば自宅に、梶井基次郎の『檸檬』の文庫本が3冊もあった。好きな本で、今までに何度も繰り返し読み返している。 初出が1925年(大正14年)なので、もうすぐ執筆されてから100年も経つのか。今も色あせない、名作だと思う。 最初にこの本を手に入れたのは、ロサンゼルスの古本屋だったと思う。夏目漱石の『彼岸過迄』を購入したのと同じお店だったはず。旧仮名遣いの細かい文字で、本全体がびっくりするほど日焼けして変色している。そして、この古びた本が発するニオイ。こういう本は、大好きだ

中銀カプセルスタイル: 20人の物語で見る誰も知らないカプセルタワー(Nakagin Capsule Style)

クラウドファンディングで支援したこの本には、僕の名前が入っている。銀座八丁目に昨年まで存在していた、「中銀カプセルタワービル」についての本。僕は、このビルに2019年10月から11月にかけての1か月間住んでいた。 1972年に竣工したこのビルは、黒川紀章さんの設計によるもの。新陳代謝を意味する「メタボリズム」という建築コンセプトのもと、140個あるそれぞれ独立した「カプセルユニット」が日本のコアシャフトに固定されており、細胞が増殖・成長するように、建物自体も有機的に入れ替わ

ヨシダナギさんの生き方が素敵

ヨシダナギさんに初めてお目にかかったのは2018年。写真展を観に行って、夫婦で一緒に写真を撮ってもらいました。その時に購入したのが、この本『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』。 ヨシダナギさんの少数民族との出会いや、エピソードが満載。もともとナギさんは、ブログを書いていらっしゃってて、その内容を書籍にまとめたものですね。 とにかくまぁ、すごいなぁ、と。少数民族のおっかけ、みたいな感じでどんどんその世界に入り込んでいく様子とか。静かな物腰や語り口なのに行動力や好奇心が半端ない。で