英語を習得するきっかけとなった『英語基本語彙辞事典』
高校三年生も半ばを過ぎて「留学するぞ!」と決意した時、僕の英語力は悲しいくらい低かった。そもそも、高校の英語の授業が嫌いだった。英語でまともに会話をしたことなんてなかったし、そもそも外国人に知り合いなどいない。海外に一度も行ったことすらないのに、なぜか留学を決意してしまうとは……。
なんとなーく進学校へ進み、なんとなーく大学を目指していた高校時代。特にこれといって学びたいことがあるわけでもなく。学費が安いという理由だけで私立ではなく国公立を目指すように親から言われ、みんながやっているからというだけで僕も最低限の受験勉強はしていたけれど、正直入れれば大学なんてどこでも良かった。
塾も、予備校も、行ったことがなかった。高校ではもっぱら、授業以外の時間は図書室で本を読むか、放課後に陸上部で走っているかのどちらかだけ。友達もいないし、もちろん彼女ができる気配すらない。決して学ぶことが嫌いだったわけではなく、むしろ読書を通じて未知の世界を感じることはとても好きだった。ただ、大学受験のためだけに勉強をするというのが嫌だったのだ。特に嫌だったのが、英語の授業。定年間近のおじいちゃん先生が、カタカナ英語で受験対策の文法などを教えているのをずっと聞いているとうんざりする。「こんなんじゃ、いくら経っても英語が喋れるようにはならないよ!」と、叫び出したくなる。僕は、大学受験のための英語ではなく、リアルな英語を学びたかったんだ。英語で表現したり、意思の疎通をしたり、英語を使ってコミュニケーションをとりたかった。世界のことをもっと学んで、グローバルな視点で日本のことを知りたいと思った。
そんなわけで、僕は留学することを決意した。もし、高校の英語の授業がもっと実りのある素晴らしい役に立つものだったら、僕はきっと留学をしようとは思っていなかったかもしれない。そんなわけで、ある意味僕はあの時の英語の先生に感謝している。
さて、「留学するために、英語の勉強をしよう!」と決意したものの、どこから手を付けて良いか分からない。とりあえず手にしたのが、高校の図書室で見つけた『英語基本語語彙辞事典』という本。3000語の英単語がアルファベット順に並んで詳しく紹介されているこのやたら分厚い本を読破してみようと思ったのだ。
いくら読書が好きだと言っても、今まで辞書を最初から最後まで読んだことはもちろんない。この本は、辞書のような体裁でありながら、言葉同士の横のつながりや、微妙なニュアンスなども細かく紹介してくれている。例文も豊富にあって、単純に読み物としても面白い。今まで、バラバラに暗記していた英単語が、どんどん結びついていって、関係性が分かるようになってくる。
例えば、「clever」という単語について書かれた説明文を読むと、まずこの言葉が「1.利口な、物わかりのはやい」と「2.器用な、抜け目のない」という意味を持つことが書かれている。さらに解説を読むと、この言葉が場合によっては「ずるい」という意味も持つ場合もあるというのがわかる。つまり、外国人に「あなたはクレバーね」と言われたら、それは「頭いいね」という誉め言葉か、あるいは「ズル賢いね」という皮肉である可能性もあるのだ。
さらにもっと解説を読み進めると、同じ頭の良さを表す単語でも、brightは聡明な子どもに対して使われたり、smartは機敏で抜け目のないビジネスマンをよく表す単語であることや、wiseは尊敬される賢者が導く知見を表す場合によく使われるといったことが分かってくる。そしてもちろん、それぞれの単語は誉め言葉になるし、文脈や話し方によっては皮肉にもなる。
こんな風に、それぞれの単語のちょっとした意味合いの違いや使われ方を例文とともに解説してくれるのがすごく面白いし、勉強になった。というわけで、850ページもあるのにもかかわらず、わりとすんなり楽しく読めてしまった。そして、この本を読んだ後はようやく英単語がそれぞれ関連性のある生きた言葉として理解できるようになった。パターンが見えてくると、たとえ知らない単語が出てきても、似ている単語を思い浮かべることで類推もできるようになる。
「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。