アンバサダー・マーケティング
今日は、「アンバサダー」をテーマに個人的な考えとか、体験とか、とりあえず思うところなどを書いていこうかと。
最初にざっくりとこれを書いている私「前田とまき(TOMAKI)」のことを説明すると、一応本業は「デジタルマーケティング」の代理店というところで働いていて、外資系のわりと大きな系列会社の日本にある末端の会社みたいなところで仕事をしています。もともとは、ウェブ制作会社でデザイナーからディレクター、プロデューサみたいなところを担当していて、その後プロジェクトマネージャーに転身。途中、コミュニケーションマネージャー的なこともしつつ、基本ずっとウェブのクリエイティブやフロントエンド、コンテンツ制作的な部分をずっとやってきました。
ウェブ制作の黎明期から外資系多国籍企業と呼ばれる会社のウェブサイトをつくったり、ガラケー時代のモバイルコンテンツ、通信キャリアの公式サイト、医療系のウェブサイトなどをいろいろやってきました。2年周期で客先のオフィスへベンダーとしてフルコミットしたりしつつ、基本はいわゆるフロントエンドのウェブ屋さんです。
一方で、週末は「日曜アーティスト」を名乗って自由気ままな創作活動をしているわけですが。ガラケー向けの待ち受け画像などをつくりまくってたら携帯コンテンツバブルにのっかってコンビニなどで売られている携帯画像専門誌(20年前にはそんなのがあったのです)や、書籍や漫画雑誌やらムックやらなにやらで150冊くらいの本で私のサイトや待ち受け画像作品が紹介されたこともあります。でもまぁ、私みたいな待画職人は他にもたくさんいて、つまり需要が多かったということですよね。mixiに私のファンサイトが立ち上がったのですが、管理人がいなくなったので私がしばらく引き継いでいたり。自分のファンサイトを自分で運営することになるとは……。
2010年頃から「ブロガー」として活動するようになり、ブロガーイベントなどによく参加してました。いろんな企業が「ブロガーマーケティングだ!」みたいな感じで、ブロガーたちを集めて面白いイベントやコミュニケーションが生まれていた頃。アサヒビールさんの企画で余市の蒸溜所へウイスキーをつくりにいくというプロジェクトや、ヤマハ発動機さんのマリンアクティビティーイベントに参加してその流れで船舶免許を取ったり、あるいはテストコースでバイクに乗ってみたり。ANAのボーイング787のお披露目イベントで、巨大なハンガーで新品のジェット機を見上げたり。携帯電話やスマートフォンの新製品をいち早くお借りしてブログレビューを書いたりなど。カメラ、プリンター、パソコン、モニターディスプレイ、音響機器など、さまざまな企業がそれぞれの切り口でブロガー向けのマーケティング施策を展開していました。そういうのが面白くて、いろんなところに顔を出して首をつっこんでは、個人のブログにせっせと記事を書いていました。
「旅ブロガー」になるきっかけとなったのが、2012年12月にカナダ政府観光局さんの公募企画で「オーロラ王国ブロガー観光大使」に選ばれ、カナダのホワイトホースへオーロラを観に行ったこと。ブロガーとして選ばれましたが、その肩書きが「観光大使」であったことから、そのオーロラの旅が終わって日本に帰ってきてからも、私は「カナダで観たオーロラはすばらしかったよ」と、身近な人やブログ・SNSなどを通して伝え続けました。これが、自分にとってのアンバサダー活動の始まりだったと思います。
ロブ・フュジェッタ氏が2012年に上梓した『Brand Advocates』という書籍が、日本で『アンバサダー・マーケティング』というタイトルで翻訳されて発売されたのが2013年10月。くしくも、ブログマーケティングがSNSの台頭によってブログに限定されずにより広いオンラインコミュニケーションにシフトしていた頃。この頃から、ブランドやサービスの「ファン」を対象にしたマーケティングのあり方というものが考えられるようになってきました。そのうちのひとつが、「アンバサダーマーケティング」であったということ。
商品やサービスを一緒に盛り上げてくれるファンと一緒に、PR活動を推進していこう、と。さらにこの頃から、「インフルエンサーマーケティング」も台頭してきました。SNSなどで影響力のある(フォロワー数の多い)人たちに、サービスや商品を宣伝してもらおうというもの。
この、アンバサダーとインフルエンサーは似ているようで全く違うものです。アンバサダーは、あくまでその商品やサービスが好きなファンのこと。必ずしも、影響力がある人でなくても構いません。家族や友人など、周りの人たちに製品やサービスをおすすめしてくれる人であれば、SNSのフォロワー数が少なくても「アンバサダー」と言えます。
一方で、インフルエンサーは影響力がある人ということで、どちらかというと広告媒体と同じような役割となります。報酬を払って、インフルエンサーに自社の宣伝をしてもらうということ。ちょっとややこしいのは、昔のテレビタレントなどが「アンバサダー」として企業から任命されて製品の宣伝をするというようなことが、現代ではSNSのインフルエンサーがやっているということ。昔のタレントアンバサダーは、現在のインフルエンサーの活動に近く、昨今のアンバサダーとは別物である、ということ。
昔のアンバサダー、〇〇大使 → 影響力を持つ有名人など
インフルエンサー → オンライン上などで影響力を持つ人
現在のアンバサダー → 製品やサービスに対して熱量を持ったファン
ここらへん、ロブ・フュジェッタ氏が「アドボケイト」と呼んでいたのを翻訳で「アンバサダー」と名付けてしまったため、ややこしくなってしまったように思います。ファンマーケティングとも呼ばれますが、お得意様を大事にするという基本的な考え方は昔からあるものです。ただ、インターネットの普及によってそういった「ファン」の発言が可視化され、ブランド側からも直接リーチできるようになってきたことにより、そのコミュニケーションについて論じられるようになってきたのだと思います。
インターネットの台頭によりオンラインの口コミなどがより影響力を持つようになったことにより、オンラインで情報発信をするブロガーを対象にしたマーケティングが興隆し、さらにSNSの普及によってアンバサダーやインフルエンサーを対象にした施策も増えてきました。SNSのプラットフォームはさらに広がりを見せ、多様化していく中で、今後どのようなマーケティング手法が出てくるかはまた別のところで議論するとして。
ここからは、私が関わっているアンバサダープログラムについてご紹介していきます。
まずは、現在アクティブに活動しているアンバサダープログラムから。
チェコ親善アンバサダー
今、私が個人的に一番アクティブに活動しているのが、チェコ政府観光局による「チェコ親善アンバサダー」です。2016年と2017年にブロガー/プレスツアーに参加してチェコを訪れ、以来チェコの大ファンに。2018年に公式にチェコ親善アンバサダーに任命していただいて以来、チェコの魅力を周りの人たちに伝える活動をしています。つい先日開催されたWBCに、チェコ代表チームが初めて一次予選に出場した際は、東京ドームで試合を観戦し、さらに懇親会でチームの選手たちに会うこともできました。ますます、チェコが好きになっています。イベントへの登壇や、展示ブースのスタッフ、アンバサダー名刺の制作など、自分のできる範囲でいろいろなお手伝いをしています。
デル アンバサダー プログラム
デル社製のパソコンのアンバサダープログラムです。コロナ以前は、定期的にリアルな会場でのイベントがありましたが、最近は目立ったイベントはありません。定期的に新製品のモニタープログラムを実施しているので、1か月間パソコンをお借りして、それを自由に使ってみてブログにレビューを書くということをしています。懇親会では、デル社の社員さんと直接お話する機会があったり、ユーザー同士の交流もあったり、素敵なアンバサダープログラムでしたので、新型コロナが収まって早くイベントも復活して欲しいです。そういえば、イベントでライトニングトーク(短いプレゼン)をしたこともありました。またやりたいですね。
いいちこ アンバサダー
大分県の三和酒類株式会社による、焼酎「いいちこ」を対象としたアンバサダープログラムです。SNSなどでいいちこに関する情報を拡散したり、オンラインイベントなども。大分の工場見学などもあるようですが、私はまだ大分には行ったことがありません。都内で開催されるイベントやポップアップ的なお店などによく訪れたりはします。つい先週も、銀座三越の催事場で開催されたイベントでいいちこの飲み比べセットを買った際に、「アンバサダーやらせてもらってます」と、挨拶をしてきました。
おもいでばこアンバサダーズ
アンバサダープログラムの運営に代理店を挟む企業が多い中、バッファロー社の写真ストレージデバイス「おもいでばこ」のアンバサダーは、自社のチームで運営していて、とても温かみがあって親近感を持てるので好きなアンバサダープログラムです。元中学校のアート施設3331 Arts Chiyodaでのイベントに参加したのがきっかけで、製品ファン向けのアンバサダープログラムには初期から関わっています。他に、インフルエンサー的な立ち位置のアンバサダーもいらっしゃいます。イベントでの工作ワークショップコーナーを担当したこともあります。担当者の方が転職されてからは、あまり積極的に関わることができていないのですが。今でも好きな製品です。
アイロボット ファンプログラム
お掃除ロボット「ルンバ」を開発・販売しているアイロボット社のファンプログラム。新製品発表会へ参加したり、オンラインでの製品メンテナンス講座などにも参加しました。マーケティング担当者さんたちの製品愛があり、イベントにもいろいろなアイデアがあって、好きなアンバサダープログラムのひとつです。
BenQアンバサダー(BenQ)
プロジェクターやモニターディスプレイのの製品モニターレビューや、フォトウォークを含む製品体験イベント、「CP+」でのボランティアスタッフ体験など、ユニークで面白い取り組みを行っていたBenQアンバサダー。2020年2月に運営が変わってからは、単なるメルマガ会員プログラムになってしまったようです。それでも、昨年はアンバサダープログラムとは別に個別に製品体験レビューをさせていただいたりなど、個人的に好きなブランドなので応援しています。
その他、現在在籍しているアンバサダープログラム
上記以外にも、あまり積極的に活動はできてないですが、メンバーとして在籍しているアンバサダープログラムは以下の通り。
・キッコーマン ごはん部(キッコーマン)※2023年3月末終了
・もぎたてファームアイスの実 アンバサダー(グリコ)
・堅あげポテト 応援部(カルビー)
・ピューロアンバサダー(サンリオ)
・ボンマルシェアンバサダー(朝日新聞)
・LG21アンバサダー ~胃人ライフスタイル~(明治)
・毎日グリル部(ノーリツ)
過去に活動していたアンバサダープログラム
10年以上に渡っていろいろなアンバサダープログラムに参加してきたので、終了してしまったものも数多くあります。マーケティング施策のひとつとしてのアンバサダープログラムという立ち位置ですので、結果が出なかったり予算がつかなかったりすると終了してしまうのは仕方がないですが。広告とちがって、アンバサダープログラムは広報やPRに近いものだと思うので、安易に「終了」にしてしまうのはもったいないなといつも思います。製品やサービスを好きでいてくれるお得意さんに、突然「あなたとの関係を終了します」と伝えるのは、感じが悪いですよね。
ここらへん、インフルエンサーマーケティングとアンバサダーマーケティングとの違いだと思います。お金を払って宣伝をしてもらうインフルエンサーは、広告と似ています。予算の範囲で、なるべく効率的にターゲットに向けて情報を拡散してもらう。一方で、アンバサダーはブランドの推奨者との良い関係性を構築するためのもの。基本的に「終了」ということはあってはならないはずなのですが、マーケティング施策としてのアンバサダープログラムにはこうしたことが起こりがち。「終了」の通知をもらうたびに、なんだか寂しい気分になります。
「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。