#951 「没理想」の由来とは!?
さて、今日から、没理想論争の逍遥サイドの最終回に突入しますよ!逍遥が軍記物仕立てにした没理想論争の批評を立て続けに読みたいがために、最後まで後回しにしていた『早稲田文学』第13号に掲載された「没理想の由来」を、今日から読んでいきますよ!
イギリスの文学者・ジョゼフ・アディソン(1672-1719)に関しては、逍遥の『当世書生気質』で、小町田くんと守山くんとの会話のなかでも登場します。詳しくは#095を読んでみてくださいね!ちなみに、2020年に、第10000号の出版を達成した、イギリスで現存する世界最古の週刊誌『スペクテイター』(創刊号は1828年7月6日)の名は、アディソンとリチャード・スティール(1672-1729)が1711年に創刊した日刊紙「スペクテイター」の名からいただいたものです。
「三同の則」は、「三一致の法則」とも呼ばれ、17世紀のフランスの古典劇の作劇法の規範とされた演劇理論です。劇中の時間で一日のうちに(時の単一)、ひとつの場所で(場の単一)、ひとつの行為だけで(筋の単一)完結するべきであるという劇作上の制約のことです。アリストテレスの「詩学」の悲劇論の誤用からはじまったもので、アリストテレスが強調したのは「筋の単一」だけです。
「カベムル」は、おそらく「カムベル」の誤字なのではないでしょうか。「カムベル」なら、スコットランドの詩人トマス・キャンベル(1777-1844)のことかと思われます。#044でちょっとだけ紹介した、外山正一(1848-1900)、矢田部良吉(1851-1899)、井上哲次郎(1856-1944)の詩集『新体詩抄』は1882(明治15)年に刊行されますが、その中の訳詩のひとつ『カムプベル氏英国海軍の詩』は、矢田部良吉がキャンベルの「Ye Mariners of England, a Naval Ode」(1800)を翻訳したものです。明治初期は、キャンベルを「カムプベル」や「カムベル」と表記し、1879(明治12)年に刊行された吉田五十穂訳纂『伊呂波分 西洋人名字引』には「カムベル(トーマス)ハ蘇格蘭[スコットランド]ノ有名ナル詩家ナリ」と書かれています。キャンベルは1876年に『The dramatic works of William Shakespeare』という評伝を出版しています。
「スチーヴンス」は、シェークスピア研究者のジョージ・スティーヴンズ(1736-1800)のことかと思われます。スティーヴンズはサミュエル・ジョンソン(1709-1784)とともに1765年に『The Plays of William Shakespeare』を出版します。
エドモンド・マローン(1741-1812)に関しては#665でちょっとだけ紹介しています。
「ファルネス」は、アメリカのシェークスピア学者のホレス・ハワード・ファルネス(1833-1912)のことかと思われます。フィラデルフィアに本社を置く出版社J・B・リッピンコットから「The Variorum Edition of Shakespeare」という名で数多くのシェークスピア作品を翻訳出版しました。
「ハドソン」に関しては#664で、「コールリッジ」に関しては#663で、「ハズリット」に関しては#665でちょっとだけ紹介しています。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!