#1529 生きても塔ができねばな、この十兵衞は死んだも同然!
それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。
十兵衛が傷を負って帰った翌朝、いつものように起き出したので、お浪は驚いて「まあ滅相な、ゆるりと休むでおいでなされ。どうか休んでいてくだされ。お湯ももうじき沸きますので、うがいも手水も私がしてあげましょう」。十兵衛笑って、「病人あしらいされることはない。手拭だけを絞ってもらえばひとりで洗ったほうがいい気持ちじゃ」。お浪は呆れて案ずるが、十兵衛は少しも頓着せず、朝飯を終わって立ち上がり着替えをするのを、お浪は「とん