tokkodo/とっこうどう

古本屋を営んでいます。本を読むのが好きです。

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マガジン

  • ちょっとだけ明治はじまり雑学集

    いま身の回りにある、あんな物もこんな言葉も、すべては明治時代に原点がありました!当ブログ連載中にちょっとだけ紹介した雑学を一挙に集めてみました!

  • 坪内逍遥の『小説神髄』に挑戦だ!

    この国に「小説」を根付かせる!では一体「小説」とは何なのか!「小説」の性質と意義を理論的に紹介したのが坪内逍遥の『小説神髄』です!近代文学を読む上で避けては通れない理論書をはたして読破できるのか、挑戦しました!

  • 『中国小説史略』読書奮闘記

    「小説」という語源の『荘子』から20世紀に至るまで、中国小説の歴史を初めて学問的にまとめたのは小説家の魯迅でした!「小説って、なんで小説なんだ?」という疑問から始まった魯迅の『中国小説史略』の読書日記です!

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こんな始まりかたでもいいんじゃないかな

気がつけば… ぼくは立派なおやじになり、 気がつけば… ぼくは古本屋の店主になっていました。 歳というものは、生きていれば勝手に取るものですから、致し方ありません。しかし、よりにもよって、21世紀というデジタルまっ盛りの時代に、どうしてぼくは古本屋の店主になったのでしょうか。 古本屋の店主になるくらいですから、当然、本が好きなわけですが、それなら新刊書店の店員でも図書館の職員でもよかったわけですが、なぜか古本屋の店主になってしまいました。 思い返してみると、ぼ

    • #1531 その三十二は、東京が暴風雨に襲われる様子から……

      それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その三十二」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! 「六十四」には、易の八卦をふたつ掛け合わせて構成される、宇宙の万象を包含できると考えられる基本図表「六十四卦」があります。「易に太極あり、是れ両儀を生ず。両儀、四象を生じ、四象、八卦を生ず。八卦、吉凶を定む」とあることから、「江戸四里四方」と掛けたのかもしれません。「六十四年は既に過ぎたり」とは、「魔王の封印が解き放たれた」ということでしょう

      • #1530 その三十一は、いよいよ五重塔が完成するときの様子から……

        それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その三十一」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! 坤軸とは、大地の中心を貫く軸のことです。 ここでいう八宗とは、おそらく平安時代までに日本に伝わった仏教の八つの宗旨を指しており、倶舎宗・成実宗・律宗・法相宗・三論宗・華厳宗・天台宗・真言宗の八つを指します。九宗となると、ここに浄土宗または禅宗を加えます。 虎豹鶴鷺とは、虎と豹は勇猛で、鶴と鷺は優美であることから、それぞれに優れた存在である

        • #1529 生きても塔ができねばな、この十兵衞は死んだも同然!

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 十兵衛が傷を負って帰った翌朝、いつものように起き出したので、お浪は驚いて「まあ滅相な、ゆるりと休むでおいでなされ。どうか休んでいてくだされ。お湯ももうじき沸きますので、うがいも手水も私がしてあげましょう」。十兵衛笑って、「病人あしらいされることはない。手拭だけを絞ってもらえばひとりで洗ったほうがいい気持ちじゃ」。お浪は呆れて案ずるが、十兵衛は少しも頓着せず、朝飯を終わって立ち上がり着替えをするのを、お浪は「とん

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          #1528 その三十は、傷をおった翌日の十兵衛の様子から……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その三十」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! 『五重塔』は1891(明治24)11月から連載されますが、その二年前の1889(明治22)年、遠いベルリンの地で、北里柴三郎(1853-1931)がコッホ研究所において、破傷風菌の純粋培養に世界で初めて成功し、翌年の1890(明治23)年には破傷風菌の毒素に対する抗体を発見します。 破土竃とは、ひび割れた土のかまど、羽虧け釜とは、端の欠けた釜

          #1528 その三十は、傷をおった翌日の十兵衛の様子から……

          #1527 わかった!えらい!もう用はなかろう!お帰りお帰り!

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 「誰か来たようだ、あけてやれ」と、がらりと戸をひけば、お吉と気づいて、「親分、なんの、あの、なんの姉御だ」と、せわしく奥へ声をかけます。「おうそうか。お吉よく来た。そこらのゴミのなさそうなところへ座ってくれ」。二つ三つ無駄話してのち、お吉は改まり、「清吉は寝ておりまするか」。「清吉はすやすや寝付いて起きそうにもない容態じゃが、頭のサラを打ったわけでもない。ひどく逆上したところをメチャメチャに打たれたため一時は気

          #1527 わかった!えらい!もう用はなかろう!お帰りお帰り!

          #1526 その二十九は、お吉が清吉を見舞うところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その二十九」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! というところで、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

          #1526 その二十九は、お吉が清吉を見舞うところから……

          #1525 息子が人様に恨まれることのないようにせねばなりませぬ

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 源太のもとを清吉の母が訪れます。「いいところでお目に掛りましたが、どちらへかお出掛けでござりまするか」。「まあよいわ、遠慮せずともこちへ入れ」。「ありがとうござります。お出掛けのところをすみません。もう御存知でござりましょうが、あの清吉めがとんだことをいたしましたそうで、ふだんからして気の早い奴で、一人前になっておりましてもいまだガキのような頑固者。曲がったことはしませぬが分別のなくなる困った奴で……どういう筋

          #1525 息子が人様に恨まれることのないようにせねばなりませぬ

          #1524 その二十八は、清吉の母親が源太のもとを訪れるところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その二十八」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! 「その二十八」は、清吉の母親が源太のもとを訪れたところからですね。 幼児の病気を「虫」といったため、「虫持」とは「病弱な子」という意味です。 ということで、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

          #1524 その二十八は、清吉の母親が源太のもとを訪れるところから……

          #1523 その二十七は、源太が十兵衛のところへ見舞い、謝罪するところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その二十七」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! 「池の端」は、不忍池の西から北にかけての外周にある町名です。 「への字」とは、腰の曲がっている様子をいいます。 というところで、「その二十七」が終了します。 さっそく「その二十八」を読んでいきたいと思うのですが…… それはまた明日、近代でお会いしましょう!

          #1523 その二十七は、源太が十兵衛のところへ見舞い、謝罪するところから……

          #1522 つまりは我が口よりいでし過ち

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 「源太いるか?」と入って来る鋭次。お吉が立ち上がって、「おお親分様、ああこちらへ」と火鉢の前に案内します。お吉の顔を見て「顔色悪いがどうかしたのか。源太はどこへ行ったのか。もう聞いたであろうが清吉めがつまらぬことをしでかしての。それゆえちょっと話があってきたが、むむそうか、もう十兵衛のところへ行ったと……。ははは、さすが源太、すばやい。なあに、お吉、心配することはない。十兵衛と上人様に謝罪をして、幾重にも勘弁し

          #1522 つまりは我が口よりいでし過ち

          #1521 その二十六は、事件のあらましを仲介するために、鋭次が源太の家を訪ねるところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その二十六」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! 鋭次さん……清吉をけしかけたの……目の前の女ですよ…… いやいや……おっちょこちょいで、耳を切られたら、たまったもんじゃないよ! ということで、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

          #1521 その二十六は、事件のあらましを仲介するために、鋭次が源太の家を訪ねるところから……

          #1520 親分!馬鹿め!放して!馬鹿め!親分!馬鹿め!放して!

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 木を切る音、鉋で削る音、孔掘る音に釘打つ音の響き忙しく、木っ端は木の葉のように翻り、おが屑は晴天の雪のように舞う、にぎやかな感応寺境内。のみを砥ぐ爺や道具探しにまごつく童、しきりに木を挽く日雇い、そのなかに総棟梁ののっそり十兵衛。ここをどうして、そこにこれだけと、仕事の監督として指図命令。仕様を書いて示し、彫物の絵を描いてやっているところへ、いのししよりも速く飛び込んで来る清吉。忿怒の形相で目を一段見開き、「畜

          #1520 親分!馬鹿め!放して!馬鹿め!親分!馬鹿め!放して!

          #1519 その二十五は、いよいよ五重塔建設というところで大事件が発生するところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その二十五」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! 「乳虎」は、子に乳を飲ませている牝虎のことで、もっとも獰猛であるといわれています。 ということで、この続きは…… また明日、近代でお会いしましょう!

          #1519 その二十五は、いよいよ五重塔建設というところで大事件が発生するところから……

          #1518 その二十四は、清吉が、お吉の不機嫌を浴びせかけられるところから……

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 今日から「その二十四」に入ります!それでは早速読んでいきましょう! 「夜光の璧」とは、昔、中国で、随侯の祝元陽が蛇から授かったと伝えられる暗夜でも光るという貴重な宝玉のことです。 というところで「その二十四」が終了します。 さっそく「その二十五」を読んでいきたいと思うのですが…… それはまた明日、近代でお会いしましょう!

          #1518 その二十四は、清吉が、お吉の不機嫌を浴びせかけられるところから……

          #1517 憎き十兵衛、お吉いよいよ腹を立ちぬ

          それでは今日も幸田露伴の『五重塔』を読んでいきたいと思います。 十兵衛いよいよ五重塔の仕事をすることが決まって、寝ても起きてもそのことばっかり。朝飯を食う時も寝る時も、まして仕事しているときは妻あることも子供いることも忘れ果て、昨日の自分を浮かべもせず明日の自分に想いをなさず、木を伐るときは満身の力をこめ、一枚の図を引くときは一心の誠をそそぎ、必死とばかり勤め励みます。さきの夜に源太に言われたことも、のっそりゆえにトンと打ち忘れ、ただただ仕事にかかります。五宝五香五薬五穀を

          #1517 憎き十兵衛、お吉いよいよ腹を立ちぬ