それでは今日も坪内逍遥の「没理想の由来」を読んでいきたいと思います。
上の原文では、「Idiosyncracy」となっていますが、正しくは「Idiosyncrasy」です。
『比較文学』(Comparative Literature)という名の書物を出版し、文学研究の新たなフィールドを開拓したパイオニアは、ニュージーランドの文学者ハッチソン・マコーレー・ポスネット(1855頃-1927)です。ポスネットが『比較文学』を出版したのは1886年のことです。「没理想の由来」が書かれたのは1892(明治25)年のことですから、出来立てホヤホヤの新ジャンルですし、それに飛びつく逍遥の嗅覚の鋭さが何よりスゴイですよね!当時の新興思想は、チャールズ・ダーウィン(1809-1882)の自然選択の進化論とハーバート・スペンサー(1820-1903)の適者生存の社会学です。ポズネットの文学における歴史的対比研究も「社会及び一個人の進化とその周囲の自然との関係」に基づいた変化であることの証明を試みる内容となっています。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!