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金沢 - Kanazawa

投稿の最後に、今回写真で挿入したアドレスのリストを掲載しています

11月下旬から本格的な降雪シーズン - 私が子どもの頃は、ほぼクリスマス辺りが初雪だったように記憶している - が始まるまでの2〜3週間、北陸は特殊な天候の時季に入る。

(1)到着した日の朝、金沢駅東口、“つつみ” をモチーフにした意匠的な門の前で。
この時節、安定の鉛色の空。

基本的にはほぼ荒天で、暗い曇りか寒い雨。それがみぞれに変わることもしばしばで、晴れることはまずない。お天気は変わりやすく、冬至前もあって一際暗い上に空はいつもゴロゴロ…ゴロゴロ…と弱い雷がずっと鳴り続けている。かと思えばドン、と大きく落雷することも。地元の人はこれを “雷おろし” (今回調べたところ、“雷おこし” “ブリ起こし” とも言うらしい)と呼び、空がゴロゴロ鳴りだすと、本格的な降雪シーズンが間近に迫って来たことを実感する。

(2)石川県立歴史博物館 - 厚ぼったい雲と、今にも降り出しそうな怪しい空。赤レンガの建築は戦前の陸軍兵器庫を経て、戦後は金沢美術工芸大学として使用されていたもの。内部もクラシックで、趣ある雰囲気を楽しめる。
(2)石川県立歴史博物館

そして、まるで雪のような “雪虫” と呼ばれる虫がふわふわと飛ぶのもこの時節。子どもの頃、学校の帰り道に飛んでいる雪虫を、帽子を網のように使っては捕まえ、本当に雪のような、小さく消え入りそうなあの虫たちをじっと手のひらの中で観察したものだった。

(3)2021年秋に東京から移転した国立工芸館。移転した理由は、ここ石川県が伝統工芸が最も盛んな地域であることがその一つだという。中央にたたずんでいるのは叔父。(常設展はなく特別展開催時のみ開館で、残念ながら私たちは入れなかった。また次回金沢を訪れる理由にしたいと思う)
(4)国立工芸館 - 次回予告の美しいパネル

子どもというのは気分を天気に左右されないものなのか、あの頃はあの天候をそんなものだと思って、午後4時には薄暗くなる勉強部屋で、“暗いなぁ” と思いながらも電気も点けずに机に向かっていたことを今でも覚えている。あの鉛色の空から悪魔が本当に出てくるんじゃないか、となまじ本気で考えながら。

(5)Kamu Kanazawa のレアンドロ・エルリッヒの作品 “INFINITE STAIRCASE” の前で。このアドレスも長年私のリストに入っていて、今回ようやく念願叶って訪れた場所の一つ。

郷里を離れてもう20年以上。すっかりお天気に気分を左右される大人になってしまい、けれど私はこの降雪前の特殊な北陸の天候にはどうも懐かしさを覚えてしまうようで、またそのうち “あの “雷おろし” の時季に帰りたい” と師走を迎える度に、ぼんやり妄想していたものだった。

(6)金沢城脇のお堀通り。屋敷を囲む門に張り付けられているのは “わら” で編まれた “むしろ”。“こも掛け” というそう。雪が土塀に染み込んで凍ると、ひび割れを起こしたり付着した雪と一緒に土が剥がれ落ちてしまうので、それらを避けるために張られている。北陸では従来から続く降雪のための風習が随所に見られる。右手奥は叔母。

もしかしたら、先週金沢を訪れた理由の一つはこれだったのかもしれない。

(7)町屋を現代風にアレンジした台湾料理のお店 四知堂スーチータン Kanazawa。

今回の主なミッションは約6年ぶりに会う叔父叔母と過ごすことだったが、二人と終始一緒だったこの二日間は、平たく言っても忘れられない思い出になった。

(8)伝統工芸繋がりで教えていただいた金沢菓子木型美術館。創業400年になる和菓子の老舗森八さんの所蔵する和菓子の木型が一挙に見られる。緻密で驚くほど精巧な木型は、和菓子も伝統工芸の一つであることを如実に物語っていた。
(9)美しい落雁らくがんの木型。叔母によると、木型の職人さんが知り合いにいるものの、何の木型かわからないそう。その方も和菓子の木型職人かどうかはわからないけれど、これも北陸には数え切れないほどの工芸があると思い知らされたエピソード。

コロナを挟んで長いこと金沢を目的に訪れていなかったので、私の金沢アドレスはかなりの量になっていたものの、その偏ったリストに全て付き合ってくれ、写真にも嫌がらず応じてくれた叔父と叔母。そんな彼らと郷里の味を堪能し、そしてこの時節特有のあの天候さえもたのしみ、いつもなら億劫な雨も曇りも雷さえも、“これだ” とワクワクしながらその天候をいつくしみ全身で体感して、私は師走の北陸と金沢を味わい尽くした。

(10)石川四高記念館 - 赤レンガの建築と美しい雪吊り - 北陸の雪は水分を含んで重いため、木々がその重みで倒れてしまわないよう、降雪シーズンを前に縄で木々の枝を支える風習。地元の人々には珍しくはないものだが、これも北陸独自の冬の風物詩。

郷里の伝統工芸を改めて知り、見返すこともまた今回の目的の一つでもあった。この伝統工芸が盛んな地域で生まれ育った私がごく最近になって、自分が伝統工芸に興味があるということにようやく気が付いたことは、よくよく考えれば、そもそもそれはDNAのなせる技だったと考えても不思議ではないかもしれない - それほど身近だった伝統工芸。40代後半になって、今さら - いや、「今だから」なのかもしれないが - 本質に立ち返ることがいかに重要なのかということを思い知り、また知らされた今回の旅。

(11)金沢から少し足を延ばして訪れた、かほく市の石川県西田幾太郎きたろう哲学記念館。建築は安藤忠雄氏によるもの。

叔父叔母とは再会を約束し、雨時々みぞれ止まぬ金沢を後に、私は大満足の境地で帰京した。

(12)光と影、打ちっぱなしのコンクリートとミニマリズム。

東京の生活はすっかり長くなったけれど、最近は満足に方言も話せない似非えせの石川県出身者かもしれないけれど、やはり私のDNAの故郷ふるさとはここだと再確認した師走の旅。おじちゃんおばちゃん、本当にありがとう。また遠からぬ将来、会えることを楽しみにしています。

(13)金沢駅東口、つつみ門の前で。

金沢アドレス

※ 数字は挿入された写真の番号と連動しています。

(1)(13)金沢駅 東口 つつみ門・もてなしドーム
金沢市木ノ新保町きのしんぼまち1-1
https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/spot/detail_10050.html

(2)石川県立歴史博物館
金沢市出羽町でわまち3-1
https://www.ishikawa-rekihaku.jp/

(3)(4)国立工芸館(旧:東京国立近代美術館工芸館)
※ 2020年10月に東京より移転
金沢市出羽町でわまち3-2
https://www.momat.go.jp/cg/

(5)Kamu Kanazawa
金沢市広坂ひろさか1-1-52
https://www.ka-mu.com/

(6)金沢城  お堀通り(尾山町おやままち側、伴天連ばてれん屋敷跡付近)

(7)四知堂(スーチータン)Kanazawa
金沢市尾張町おわりちょう2-11-24
https://www.tua-kanazawa.jp/

(8)(9)金沢菓子木型美術館
金沢市大手町おおてまち10-15
https://www.morihachi.co.jp/honten_museum

(10)石川四高記念館(石川四高記念文化交流館)
金沢市広坂ひろさか2-2-5
http://www.pref.ishikawa.jp/shiko-kinbun/

(11)(12)石川県西田幾太郎記念哲学館
かほく市内日角うちひすみ #1
http://www.nishidatetsugakukan.org/

※ 挿入されている写真及び画像はすべて筆者によるものです。また、施設等の情報は、当記事執筆時点(2022年12月)のものとなります。

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