日替りランチのあの味を再現してみたい。
お気に入りの洋食屋さんには、平日のお昼限定の日替わりランチがあります。
🍴日替わりのわくわく
お店の前に立てられた黒板には、チョークでその日のメニューが書かれていて、日替わりのAランチは、2品のコンビになっています。きょうはハンバーグとイカフライだ。またある日はポークソテーとコロッケだ、アジフライとミートボールだ、とバリエーション豊かなメニューの組み合わせに心を踊らせます。
その多くは、何種類かあるレギュラーのランチセットには載ってなくて、夜のグランドメニューにもいない、日替わりだけで出会える料理だというのも、稀少性があって、わくわくが倍増。
もちろん平日のみなので、ふだんオフィスで働いている身にとって、本来ならそうそういけるはずないのですが、この数年の在宅勤務という環境のおかげで、週に2回くらいは通っています。
そのペースで3年も通うと、日替わりランチのメニューになじみもでてきて、そろそろあれがくるかなとか、やったぁ、きょうはお気に入りのあれだ、とか黒板の文字だけで大喜びできたりするようにもなりました。
🍴味付けの謎
そんな日替わりメニューの中で、特に嬉しく思うのがこちら。
メニュー名はスタミナ炒めとかそんな感じで、牛肉と野菜を炒めたいわゆる肉野菜炒めなのですが、これがなんとも白ごはんに合って、いかにもニッポンの洋食なひと品なんですよね。
特長はこんな感じです。
お肉はてろてろした薄切りの牛
野菜が入ってる
わりと甘めの味付け
と書くと、洋食屋さんとはいえ、みりんと醤油をからめた、焼き肉定食的な味かと思うところですが、これが食べると絶対にお醤油味じゃないんですよ。
おいしくて大好きなんですけど、なにで味付けしてあるのか、とっさには判断できない不思議な味付けなんです。
🍴あの味付けへ突き進む
というわけで、今回は日替わりランチのあの味付けを、解明してみようというお話です。100%再現は無理でも、すこしでも近づけたら嬉しいなと希望的観測をもって、突き進んでみることにしました。
まずは材料の紹介から。
🥩材料(1皿分)
・牛肉…50グラム
・にんじん…1/4本
・ピーマン…1/2個
・玉ねぎ…1/8個
・もやし…軽くひとつかみ
お肉は薄切りの牛肉を用意しますが、食べたときにやわらかい、あのてろてろした食感を出すのに、脂身がしっかり入ってるものがおすすめです。
野菜は玉葱は薄切り、にんじんとピーマンは細切りにしておきます。
まずはにんじんと玉ねぎを炒めます。
しんなりしてきたら、牛肉投入。
さっと炒め合わせて、ピーマンともやしも合わせます。
🍴この味でいこう
ここでいよいよ問題の味付け。
洋食感を出すためにバターを用意しました。
そして、さんざん考えて、頭をひねってたどり着いた味付けがこちら。
🥄味付けの材料
・みりん…1/4カップ
・粉末コンソメ…小さじ1
・粗びきこしょう…小さじ1
・おろしにんにく…1片
・バター…5グラム
ベースにするのはみりんです。あの甘い味付けのために、砂糖を使おうかとも思ったのですが、そうではない気がして、洋食定番のワインのかわりに、みりんがいいかなと思って試してみることにしました。
あとは、醤油ではなく、塩味と旨味があって、洋風の調味料という理由で、粉末のコンソメを選出。スタミナ炒めみたいな名前なので、にんにくもスタンバイ。仕上げはこしょうでいこう。
合わせた調味料をフライパンにイン。
みりんの水分を飛ばしながら、炒めていきます。
そしてバターを。さあ、どんな味に仕上がるでしょうか。わくわくします。はたして結果は…。
その前に。
🍴付け合せも洋食ランチ風
ここで付け合せの紹介です。
茹でたショートパスタをケチャップ、ウスターソース粉チーズとあわせて火にかけます。
水分がなくなって味がからんだら、こしょうを振ってできあがり。赤いマカロニ、洋食屋さんぽいでしょ。もちろん、スパゲティでもOKです。
続いて目玉焼き。フライパンではなく、小鍋にすこし多めに油を入れて、鍋を傾けて揚げ焼き的にすると、白身の縁はカリカリ、黄身は半熟にうまく焼き上がります。
🍴ついにあの味が
さあ、いよいよ盛り付けです。
煮詰まったみりん&コンソメのソースは、ぱっと見お醤油系の焼き肉ソースみたいですね。
目玉焼きをトッピングして、あの日替わりランチのスタミナ炒めにそっくりなルックスのひと品が完成しました。
見た目はホントいい感じです。お肉がちゃんとてろてろしてて、野菜の混ざり具合もご本家っぽい。さあ、あとは味だ、味。
何度も食べて大好きになったけれど、どんな味付けなのかがわからなかった、あの味。
そろそろあのメニューが出てくればいいのになと思いつつ通った、洋食屋さんへの道のりが脳裏をよぎります。たどり着いたお店の前の黒板に、スタミナ炒めの文字を見つけたときの高揚感が、いま自分の中で再現されています。
さあ、いよいよ、実食のとき。
お皿にのばすお箸が、心なしかふるえているようにも感じます。どきどき。つかまえたお肉は持ち上げるとぷるぷるとしています。なんてったって、“てろてろ牛”ですから。
いざ、ひと口。ぱくり。
お。おおっ。
これはかなりいい感じです。もちろん、まったくおなじではないけれど、甘さがメインの味付けになってて、しかもコンソメとバターでちゃんと洋食屋さんぽさをかもしだしてます。
てろてろお肉も理想のてろてろ加減で、玉ねぎ、にんじん、ピーマンの食感がやわらかなお肉の裏を支えるアクセントに。うん、まったくおなじとはいえないけれど、たしかにそれっぽい。
実際のお店の味付けに、どんな調味料が組み合わされているのかはいまだに不明のままですが、かなりあの気分になれます。成功という名の高揚感に包まれます。
🍴やっぱり好きだから
ずっとわからなかったあの味、今回の再現チャレンジは、80%くらいの満足度です。考え抜いたかいがありました。これで、それらしき味は自宅でいつでも楽しめます。
でも、きっとまた、いつもの洋食屋さんにいく、そんな自分の姿も浮かびます。たとえ、近い味がつくれるようになったとしても、やっぱりあのお店が好きだから。
清潔で飾り気のない店内。お店を営む老夫婦はけっして愛想がいいとはいえないけれど、誠実なサービスと、たしかな味。クラシックな日本の洋食を食べたいとき、かならず足が向かうはずです。
そして、また平日にうかがえるときは、お店の前の黒板に記されるメニューの名前がなんなのか。それを楽しみにして、足を早める自分がいるのです。