2022年6月の記事一覧
【ショートショート】ひとつ多いよ
花子は息子のエイ太、ビイ太を連れて、久しぶりにファミリーレストランへ来た。案内された席に着くと、すぐ後ろから来た男のひとり客が、隣のテーブル席に座った。
──あら、いい男。
──お、いい女。
一瞬、ふたりの目がぴたりと合った。
「ママ、本当にひとり1つ頼んでいいの?」
小学3年生のビイ太が聞いた。
「もちろんいいわよ。そのためにわざわざ来たんじゃない」
「うわーい、何年ぶり
【ショートショート】ひょひょいのひょうい
「太郎くん、涙が……」
吉男が太郎の顔を見て、びっくりして心配そうに言った。
──あれ? 僕、あの人を見ていると、なんだか懐かしいような悲しいような……なぜだろう、どこかで会ったことがある気がする……
「あっちの人も泣いているね」
吉男が太郎の視線の先にいる初老の紳士を指差して、太郎の耳元で囁いた。
──やっぱり、あの人も何か感じるんだ……たまたま中学の修学旅行で来ただけだけど、