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『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬 著)

※ネタバレします。


【内容】
第二次世界大戦下のロシアで、村ごと壊滅し家族を殺された少女のセラフィマは狙撃兵となり、数々の戦場を渡り歩くこととなる。

2022年本屋大賞受賞作。


【感想】
かなり集中して、興味深く読めました。

なんでこんなに集中力を切らさずに読めたのだろうと、考えてみたのですが…
まず第一に、もう華やかでアツい展開になるような設定が整えられているなあと…
そもそも第二次世界大戦の悪役の定番であるナチスドイツに、村を全滅させられた美少女が狙撃手として立ち向かうとか、もう設定だけでもアツい物語が想像出来る。

また、ロシアの習慣として、女性同士が心を許し合った時にキスをする習慣があるそうで、若いロシア美人同士の愛抱擁とかは絵になりそうで、そうしたシーンがここぞという時に出してくる。
基本的に軍事訓練や戦闘シーンなどがメインのこの小説で、恋愛をあまり描かないこの小説の中で、そうした華やいだシーンが挟み込まれることで、殺伐とした印象が緩和されているのではないかと…

そんなことを考えながら、この小説をメディアミックス的に展開させていくとするとどうなるのだろうと、考えてみたのですが…
登場人物の性質上、日本人の役者で実写映画化するのは難しいでしょうが、宝塚歌劇でやるなら、よい物語かも知れないなあと思いました。
Netflixとか配信向けのコンテンツとしてもなかなか良いとも思いますし…
以前なら、主演ミラ・ジョボビッチとかやる感じですかねえ…個人的には、『クイーンズ・ギャンビット』に主演していたアニャ・テイラー=ジョイあたりにやってほしいなあと思ったりしました。
アニメにするのなら、プロダクションIGあたりが力を入れて作ったら面白そうだなたと感じました。
まあ、ロシアのウクライナ侵攻のことを考えると、実現の可能性はないんですけれど…

小説は設定や描写、キャラクターなどよく考えられていたのですが、ただ気になる点はあるとすれば…
書き口が若いというか軽い、ライトノベル感があるなあ。
そうしたことを著者本人も気になっていた部分もあったようで、色んな本からこの戦争に関する記述を引用していたりもしました。
実際のソ連の女性兵士を取材した本『戦争は女性の顔をしていない』のその後のキツい現実のことを思うと、これはちよっと物足りない部分があるなあ…
と思って読んでいたら、大戦後民間人として生活する主人公の元に『戦争は女性の顔をしていない』の記者が取材に来ると言ったエピソードが挿入されていたりして、著者本人もそうした見えない(?)視点も取り込んで、作品としてまとめようという貪欲さも感じました。

あと、ラストの展開は、なるほどなあという気持ちがありつつも、理屈に落ちるというか、ちょっと強引なような気もしたり…
まあ、タイトルがちゃんとフリになっているというのとか、いちいちよく配慮して書かれているとも思いました。

とか色々とは書きましたが、エンタメ小説として、かなり良く出来た作品だと思いました。

https://www.hayakawa-online.co.jp/smartphone/detail.html?id=000000014980

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