『発達性トラウマ「生きづらさ」の正体(著:みき いちたろう』〜心の病、多様性の時代
【内容】
トラウマによって発達障害に近い症状が出るということを、心理学の見地から紹介した解説書。
【感想】
近年ブームとなったトラウマの存在に対して否定的な見解を持つアドラー心理学とは対照的に、この本はトラウマの存在を認めることで、さまざまな社会問題を捉え直そうとしています。近年、発達障害や人格障害と診断される人々が増え続けていますが、その中には極度のストレスからくるPTSDが影響しているケースもあるとの見解が述べられていました。
この本は、アドラー心理学に対する揺り戻し的な本であり、公認心理師としてカウンセリングを行う著者が、実感をもとにした見解を述べていると感じました。
私個人の見解としては、PTSDによる障害もあれば、発達障害や人格障害といった障害もあり、それぞれが時代や環境的な要因によって多様な形で発現する、あるいはしないのではないかと考えています。たとえ障害が発現したとしても、時代や環境によっては問題化しない場合もあると感じました。
人間は可塑性の高い存在であり、環境や自己の行動によってさまざまに適応していくものです。そのため、どの理論が正しいかということも大切ですが、それ以上にいかに個々の理論を効果的に機能させられるかが重要なのではないかと感じました。
https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2934-4
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