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『あぶない一神教(著:橋爪大三郎・佐藤優)〜反知性主義と無宗教の狭間で…日本人が知らない世界理解の弱点

【内容】
宗教学や社会学の学者である橋爪大三郎氏と、神学部卒業の外務官僚として活躍した佐藤優氏とによる、一神教という観点から今の社会を読み解いた対談本。


【感想】
佐藤優氏が、橋爪大三郎との対談本『ふしぎなキリスト教』を読み、興味を持ったことがきっかけで、この本が生まれたそうです。先日読んだばかりのその対談本を通じて、橋爪との新たな対話が始まり、この作品が形になったとのことでした。

キリスト教などの一神教の理解のなさからくる日本人の世界理解の弱さや、資本主義の成立にキリスト教が果たした役割など、佐藤氏のこれまでの著作でたびたび取り上げられてきたテーマを、より深く掘り下げ、キリスト教との関連性なども含めて論じていました。
特に、近年問題視されている反知性主義的な動きに対する批判は、氏の思想をより鮮明に浮かび上がらせていました。

この本を読み、私は日本人の宗教観について改めて深く考え直したりしました。日本の「無宗教」は、神道的な多神教と仏教的なバックボーンの上に成り立っており、禅宗の神秘体験の否定や浄土真宗の来世観など、多様な要素が複雑に絡み合っているのだと改めて感じました。
仏教でも、禅宗による徹底した神秘体験的なものや神的なものの否定、同時に浄土真宗的な人は皆死ぬと浄土に行くといった思想…
それから溢れたものは、様々な真言宗や神道的な現世利益や先祖崇拝的なものに回収されていく仕組み全体を含めて、日本で言うところの無宗教なのではないかと…
明治期以降の文学者達の試みは、そうしたもの日本の総体としての精神風土みたいなものを、その時代に合わせ生きていこくための試みのような気がしたりしました。
ただその社会的な仕組みや人々の集合意識のようなものが、これから先継承されていくかというと、そこも疑問符が付くような気がします。
今までは、なんとなく親や祖父母、親戚や地域社会の人間から目に見えない形で継承されてきたものが、凄まじく断絶していってあるのだろうなあとも思ったりもしますし…

特に、現代日本の若者を取り巻く状況は深刻だ。映画『あんのこと』に描かれたように、親や社会からの搾取や虐待によって、少なからぬ若者が苦しんでいるのだろうと…このような状況は、日本の社会構造に根ざした問題であり、単に個人の問題として片付けることはできないのだろうと感じます。
様々な問題が複雑に絡み合い、解決の糸口が見えにくい現代社会において、私たちはどこに向かって進んでいるのか…
そんなことをぼんやりと考えが浮かんびながら、この本を読んでいました。

https://ebook.shogakukan.co.jp/detail.php?bc=098252560000d0000000

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