質問101:玉突きの練習効果と、フォームについてのイライラと
回答
▶集中力とタイミングの精度を高める「玉突き」
玉突きは、ボールに対する集中力と、タイミング合わせの精度を高める効果的な練習です。
練習相手も壁も広いスペースも不要の手軽さ。
ぜひ続行していただければと思います。
ポイントは2点。
ボールを見ること、タイミングを聞くこと。
▶「1本1本」が見て取れる細やかさの追及
ボールを見るとき、フェルトのケバにフォーカスします。
「1本1本」がご自身の目で見て取れる細やかさを追及。
「上手く当てよう」「芯で捉えるには?」「グリップの持ち方はどうする?」などは一切気にせず、「1本1本」に目のピントを、鮮明に合わせ続けます。
すると、打ち方、やり方など考えなくても、続きます。
いえ、打ち方、やり方を考えないから、続きます。
▶タイミングの点と点をつなげて、線のリズムに乗る
そして、タイミングの音を聞きます。
玉突きであってもインパクトの瞬間は見えませんけれども、耳で聞くことはできます。
トントントンと、タイミングとタイミングが線でつながると、リズム感が出てきて、コチラで述べているとおり「乗る」ことができます。
そして、線となるリズム感が出てくると、点であるタイミングがまた合うのです。
▶セルフトークは、鎮めようとすると始まる
これを続けていると何が起こるかというと、ご自身がお困りだという頭のなかの独り言「セルフトーク」が、ものの見事に鎮まるのです。
セルフトークは、鎮めようとしても鎮まりません。
むしろ「鎮めなきゃ!」というセルフトークが始まるのです。
▶玉突きで「ひとり1000球ラリー」
下に突くか、上に突くかのご質問につきまして、まずは比較的簡単な「下に突く」から試してみてはいかがでしょうか?
「上に突く」のは、難易度が高いですからね。
ラファエル・ナダルのハンド・アイ・コーディネーションをもってでさえ、406球です。
https://www.youtube.com/watch?v=qgvdDZ7o9Ng
「下に突く」を、目標1000球として達成を目指してみる。
100球目くらいで安定持続性が出てきて落ち着き始め、300球を超えたあたりからシーンと静まり返った無心に入る。
500球の折り返し地点あたりで、手に汗、腕に疲労感を覚えるかもしれません。
700回を超えると「イケるかも」などのセルフトークが交じる。
そんなときにもケバケバの「1本1本」です。
900回を越えたあたりから緊張感が再び走り出し、「982球」くらいで、「もう大丈夫!」「あと少し!」「ここでミスするわけにはいかない!」「初めからやり直しになる!」などのセルフトークが、大騒ぎかもしれません。
そんなときにも「1本1本」です。
▶頭で知識を知るだけではなく、体で経験すると力になる
やっている行為は単調な玉突きなのですけれども、精神状態はアップダウンを繰り返すジェットコースター。
これを、頭で知るだけではなくて、実際に体を使って1000球へ至る過程を経験することがトレーニングです。
頭で知るだけというのはたとえば、スクワットのやり方について学んでも、筋トレをやらないようなもの。
力は培われません。
▶「勝ちビビリ」はこうして生まれる
ジェットコースターにたとえました。
それはまるで、テニスの試合の縮図です。
やっている行為は淡々とした打ち合いだとしても、6ゲーム先取のゲームカウント5-2で迎えた40-0のセットポイント。
ここで「あと1ポイントだ!」「絶対に落とせない!」などのセルフトークが口火を切ります。
するとよくあるのがこのゲームはまくられて、ゲームカウントは自分からの5-3。
次のゲームで相手がサービスキープに成功すると、あっという間に5-4です。
やっている行為は、淡々とした打ち合いだとしても、追う側と追われる側とでは、勢いが違います。
するとますますあせり出すのが「勝ちビビリ」。
そんなときにも立ち返るのはいつも、「回転」「ケバケバ」です。
▶順調に上達していくポイントは「順序」
難易度の高い「上に突く」の前に、比較的易しい「下に突く」から取り組むご提案をしました。
あせる必要はまったくありません。
漸進性の原則に従い、また公文式のステップダウンにならい、順序(段取り)を踏まえる取り組みは、順調に上達していくにあたって遵守したいポイントです。
▶パスタソースをかけてから茹で始めると……
料理と同じです。
茹でて、お湯を切って、器に盛ってから、パスタソースをかけます。
パスタソースをかけてから茹で始めてお湯を切り、器に盛るのは、得策ではありません。
茹でる、お湯を切る、器に盛る。
それぞれのスキルはあったとしても、一つひとつの順序に則った順番を誤ると、結果も誤ります。
▶ラケット面でやっても、ど真ん中を外すのだから
先に難易度の高い「上に突く」から始めると、ひとり1000球ラリーの目標には、不可能ではないかもしれないけれど、なかなか到達しないでしょう。
ですからステップダウン。
「下に突く」で1000球を達成したら、次は下にバウンドさせて跳ね上がってきたボールを「上に突く」を1000球繰り返す。
サイドフレームで「下に突く」さえ難しければ、さらにステップダウンして「ラケット面で下に突く」でも、全然構わないのです。
それですらボールに集中しないと、スイートスポットで捕えられずにラケット面のど真ん中を外す打球も混じるでしょう。
もしそうであるならば、相手とボールを打ち合うラリーで真ん中を外すのは言わずもがな。
「ラケット面で下に突く」場合にも1000球を目標に、ケバケバの「1本1本」を見て取るようにして、集中力を高めていきます。
▶自分にもっと、甘く甘く!
私たちは生身の人間ですから、日によって、体調によって、気分によって、コンディションが変わるのは当然です。
高い目標を設定して自分に厳しくするのではなく、自分にもっと、甘く甘く!
ハードルを下げるのです。
よく言われます。
なかなか勉強のやる気が出ないときは、「ノートを開くだけ」を、やってみる。
すると目に飛び込んできた文字を見て何か気になり出し、調べているうちに勉強が始まっていたというふうに勢いが出てきます。
最初の第一歩をできるだけスモールステップにすると、順番を誤らず、やる気も出てきて、漸進、そして前進していけるのではないかと思います。
▶「1、2、3、4」はご明察
もうひとつお尋ねいただきました「サーブレシーブ」についてのご質問。
結論から言うと、ご明察です。
『究極のテニス上達法』をお読みいただければ、「1、2、3、4」がなぜそれほどまでに有効なのか、より精度を高めるにはどうすればいいのか、セルフトークを鎮める取り組みから集中力を発揮するリズム合わせまで、ご自身のテニスにご活用いただけます。
▶「地動説」を証明したガレリオ・ガリレイの悲哀
顧問がフォームに関して一々注意してくる問題。
今のテニス指導のあり方を俯瞰してみると、今すぐ停止を求めるのは難しいかもしれませんね。
それが正しいかどうかは別にして、何しろ「常識」ですから。
コペルニクスが発見した(だけど弾圧を危ぶんで発表しなかった)「地動説」を証明して有罪となったガリレオ・ガリレイは、「それでも地球は回っている(「E pur si muove」(それでも動く)」となおつぶやき、裁かれたのでした。
▶こんなときこそ、「自己肯定感」の出番です
フォーム指導は、今は圧倒的に支持者が多い「天動説」です。
もちろんとはいえ、顧問によるフォーム指導でご自身が「イライラする」のは人として当然で、集中しようとしているのに一々妨げられるのですから、それは不満も溜まります。
ただしそれでは、現実問題としてテニスのパフォーマンスは下がるでしょう。
こんなときこそ、「自己肯定感」の出番です。
▶「他者肯定感の高さ=自己肯定感の高さ」
顧問のアドバイスにイライラするのに、なぜ自己肯定?
そんなふうに思われるとすれば、次の方程式を思い出してください。
「他者肯定感の高さ=自己肯定感の高さ」
それは正比例の相関なのでしたね。
つまり顧問を肯定する(ありのままを受け入れる)リスペクトによって、ご自身が自己肯定され、イライラとは無縁でいられるのです。
「ちょっと待て!」と、話を遮りたくなるお気持ちは分かります。
今まで散々、常識的なテニス指導をテニスゼロは批判しておきながら、ここに来て今さら「顧問を肯定するって、フォーム指導を受け入れるっていう寝返り?」と、思われるかもしれません。
そしてここに、自己肯定感が誤解されやすいいちばんのポイントがあると、私は痛感するところです。
▶顧問は顧問なりに今まで生きてきた
「フォーム指導」を受け入れるのではありません。
「顧問のありのまま」を受け入れるのです。
両者の何が違うのか?
顧問は顧問なりに今まで生きてきた過程において、「フォームを直せば上達する」と信じ込まざるを得なかった何かしらの事情があったのです。
顧問も自身が学生時代の部活を通じてそう教わったのか、テニス部顧問に就任するにあたってテニスの技術解説書を読んだのか、詳しくは分からないとしても、信じ込むに至る経緯があった。
また顧問が、担当する部活の競技経験者とは限らないケースも、少なくありません。
中学時代の私が職員室を訪れた際、机の上に置かれた『サッカー入門』の書を見つけたときには衝撃が走りました。
それはさておき、詳しくは分からないとしても、信じ込むに至る経緯があった。
その「ありのまま」を肯定して受け入れるのです。
それは「仕方がなかった」こと。
なぜならほとんどの人が「天空の星々が動いている」と信じ込んでいる時代が確かにあった。
今も多くのプレーヤーや指導者が、「フォームを直せば上達する」と信じ込んでいるのだから、顧問にも疑う余地はなかったのです。
だからといってそれを押しつけられるのは確かにイライラしますが、「信じ込んでいる人」にとってはそうせざるを得ない事情も納得のいくところです。
▶自分の上達を妨げないための合理的な戦術
顧問も、まさか嫌がらせでフォーム矯正を押しつけてくるわけではなくて、ご自身の上達を思いやっての指導です。
私はこのような事態にあってはよく、「罪は罪でも人は憎まず」とお伝えしています。
フォーム指導は、確かに私から言わせれば(プレーヤーのテニス人生を不幸にするから)「罪」なのだけれど、だからといってそれを指導する「人」を憎むと、「他者否定感=自己否定感」の相関だから、自己肯定感を著しく損ないます。
顧問を肯定するとは、フォーム指導を是とするわけではないのです。
それは「顧問を正すため」などでは決してなくて、幸せなテニス人生を送る戦略を遂行するための、自分の上達を妨げない合理的な戦術です。
▶「人を変えようとする」のは完全な領域侵犯
また「顧問を正すため」などといって「人を変えようとする」のは完全な領域侵犯。
暴力的なディスリスペクトであり、「他者否定=自己否定」の強烈すぎるブーメランが返ってくるので、くれぐれも気をつけたいものです。
▶常識を覆す力
もちろん、「あなたは間違っている!」と否定するのではなくて、(素のまま真っ直ぐ)素直に「私はそれは違うと思います!」と言い返せればいいのだけれど、それは商業ベースの「コーチとスクール生」の関係であれば可能だとしても、部活がリクリエーションではなく、教育によって人心を導く文教ベースである以上、「顧問と部員」という立場を踏まえると、またお二人の普段の間柄によっても、どうするのが得策かは冷静にアセスメントしたいところです。
最後になりますがご自身のご活躍が、これまでの常識を覆していく力になります。
花の高校生、散るな。
応援しています。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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