シン・映画日記『零落』
ユナイテッドシネマ新座にて斎藤工主演、竹中直人監督作品『零落』を見てきた。
浅井いにお原作で「ビッグコミックスペリオール」で連載していた作品で、
人気が低迷した漫画家かデリヘルで風俗嬢に出会い、心を癒やし、取り戻していく。
主人公で漫画家の深澤薫は連載が終わり、入れ替わる形で新進気鋭の若手に押され、家でもやり手の編集者である妻に当たってしまい、居場所がなくスランプに陥る。そんな最中、たまたま入った風俗店でちふゆと出会い、荒んだ心を癒やしていく。
中盤までの斎藤工が演じる漫画家・深澤薫の零落れぶりがいい。編集者が集まる飲み会でも蔑ろにされ、事務所を一旦畳む時にはアシスタントに謀反を起こされたり、久しぶりに集まった大学の同窓生からも影で笑われたり、編集者との打ち合わせでも終わったあとそそくさとされたり。そのボンクラ、ダメさ加減が負のオーラの味わいがある。竹中直人はかつてつげ義春の「無能の人」を映画化しているたけのことはあってか、どことなく、つげ義春臭もする。
中盤からはこうした零落れ漫画家のダメダメライフとデリヘルでの風俗嬢ちふゆとのやり取りが大半になる。
ちふゆを演じる趣里のちょっと不思議ちゃんな雰囲気があるかわい子ちゃん系の女のコで、クセがある趣里が何割増しか可愛く見える。
心情表現なのか、荒波の様子を見せたり、コンピューターの画面を歪ませたやつを見せたり、澱んだ心情を映像で表現する。色使いや、小道具の置き方、ごちゃごちゃとした室内をアートに見せ、芸術映画的な側面も見せる。
終わって見れば『無能の人』の系譜のボンクラダメ男の負のループを見る映画に仕上がっていて、意外と良かった。