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自己調整学習理論から逆算して分かった子どもに任せる授業の極意~「教師主導」から「学習者主導」へ移行するポイント


はじめに~「任せる」「委ねる」とは言うけれど

近ごろ、「子どもに任せる」「子どもに委ねる」という言葉をよく耳にします。
「主体的な学び」「個別最適な学び」のためには、教師が教え込む授業ではなく、子どもたちに学習活動を任せ、委ねることが重要だ、と。

しかし、実際にどう実践するかは、そう簡単ではありません。
先生方の中には以下のような疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

  • どのタイミングで、どれくらい、どのように任せていけばいいのか?

  • 任せたら、何もしちゃいけないのかな?

  • 子どもに任せるとぐちゃぐちゃになってしまうのでは?

そこで、自由進度学習などを実践をしている先生に聞いてみるわけですが、
「難しいですよね」
「まずはマインドセットを変えることが必要」
「任せる勇気が大事」
といった抽象的な答えが返ってくることも…。
じゃあどうするの?、というところは分からず、迷うばかり。
そして、思い切って子どもに任せた結果、うまくいかないことも…。

こういった悩みは、私自身が経験してきたことでもあります。
現在公立小学校で、自己調整学習の理論を基に実践をし、こうしてSNSやnoteで発信したり、ときにはセミナーにも登壇している私ではありますが、正直なところ、はじめは子供に委ねるということが不安で、ためらっていた時期も結構ありました。

また私には、いわゆる効果的な「授業技術」「教え方」なども学生時代から積極的に学んできた過去もあります。
「白杉先生の授業は分かりやすい」「授業が楽しくなった」といった子ども達からのうれしい言葉をもらったこともあります。
だからこそ、子どもに任せる授業を目指そうとすると、その「分かりやすい授業」「楽しい授業」をなんだか捨ててしまう気がして、ためらっていたのかもしれません。

しかし、この葛藤をある程度自分の中で整理できる瞬間がやってきたのです。
それは、日本教育技術学会(現在白杉は非会員)が2022年に設立した「向山洋一教育賞(第1回)」への応募です。

実は、大学院時代に自己調整学習の理論を学んだ私は、当時学んでいた授業技術を学術的に整理・体系化しようと思っていました。
そこで、様々な教育実践・技術を収集し、自己調整学習の理論を基に分類し、考察する論文を修士論文として提出しました。

この時は、様々な実践家が提唱した授業技術を取り扱ったのですが、今回「向山洋一賞」ということで、紙幅の関係もあり、向山洋一先生が発表している授業技術に限定して、新たに調査・研究し直して論文を応募したのです(修士論文は未発表のため、問題なし)。

この論文は、ありがたいことに最優秀の「教育技術賞」に選出いただき、静岡県の大会で表彰していただいたのでした。

以下のYouTubeで発表動画をご覧いただけます(堀田龍也先生のご講評あり)。


この論文応募を通し、大学院生時代の自分の研究を、学校現場を経験した状態で読み返し、さらにブラッシュアップしたことが、自分自身の授業実践に大きな影響を与えました。

向山洋一先生の発表している授業技術は、まさに「一斉授業」の授業技術です(あくまで『授業の腕を上げる法則』や法則化運動などで発表されていた明示的な授業技術に限定しての話です)。

自己調整学習では、子どもは自らの学習を自ら調整していきます。
子供に「任せる」「委ねる」授業では、この自己調整学習を子どもたちが行っているわけです。
一方、教師が技術を駆使した一斉授業では、教師の「発問・指示」で学習が進むため、子どもが学習を自己調整する場面は少ないと言えます。


それをあえて、それを自己調整学習の理論を基にして、分析してみた。

すなわち、自己調整学習の状態から逆算して、一斉授業の技術を分析したのです。
自己調整学習では、子どもが自らやる気を出し、学習に集中し、振り返って次の学習につなげます。

でも、はじめから子どもができるわけではない。
だから、やる気を出せない子どもに教師がやる気を出させ、学習に集中させ、フィードバックして次の学習につなげていく。
つまり、優れた一斉授業とは、「教師が子どもの学習を効果的に調整している」授業といえるのではないか、と考えたのです。

このように考えると、「一斉授業」と「自己調整学習」は実はひとつながり(連続体)であるといえます。
そう考えれば、何も全部いきなり子供に任せる必要はない、ということがわかります。
最初は教師が調整する場面が多くて全然かまわない。けれども、だんだんとそれを子どもが自己調整できるように、主導権を受け渡していく。
全体的なイメージとしてはそのような捉え方になります。


ただ実際、具体的な問題として生じるのは、
その途中の「移行していく」段階は、どのような授業になるのか、教師は何をすればよいのかということです。

論文で受賞してからの3年間は、その移行について自分なりに様々試行錯誤し、気づきを理論的に考え、さらに実践し…と理論と実践を行き来していました。
そして、このnoteに言語化できる程度にはまとめられるようになりました。

このnoteでは、私が大学院時代から研究してきた内容、受賞した論文を作成する過程で見つけた知見、その他さまざまな論文や著作を読んで自分なりに整理した内容、そして自分自身の試行錯誤と実践を基に、以下の疑問を解決する超具体的なヒントをご紹介します。

  • どんなふうに委ねていくの?→【委ねる4ステップ】を紹介

  • 具体的にどんな授業を行っているの?どんな教材を使っているの?→実際の事例や教材を紹介【PDFダウンロード2点・ICT教材事例画像あり】

  • 教師の授業技術がどう子どもたちに委ねられていくの?→【超具体的】に委ねるプロセスを紹介

  • 任せるとぐちゃぐちゃにならないの?その場合の対応は?→【実際の言葉かけ】の例を紹介

記事のイメージ(抜粋)

単なる私の経験だけでなく、理論的な裏づけもあることがポイントです。


ただし、この内容に至るまでにかなり多くの時間と労力、そしてお金をかけてきたことは事実です。
その内容を細かく書き記したため、2万字近いnoteになってしまいました汗
また、実際に私が作成・使用した教材などもダウンロードできるように載せてあります。
教材の画像も、真似していただけるように掲載してあります。

そこで恐縮ではありますが、このnoteは有料ということにさせていただきます。
以上をご理解いただき、お金を払っても読みたい、という方にのみ、シェアさせていただきたいと思います。(記事内容の特性上、返品は受け付けておりません)
あらかじめご了承ください。



1.まずは自己調整学習理論の理解から

まずは、自己調整学習理論について正確に理解することが不可欠です。

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