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日記;父母覚書

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脳内出血で倒れた父と認知症の母。もう亡くなりましたが、日記にしたためていたメモを公開
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#覚書

父母生前覚書

父母生前覚書

実際のところ夏を越したらもう無理だろうと覚悟していました。

主治医曰く

「全く嚥下が出来ません。機能的には出来る筈なのですが、それが出来なくなっていますので、点滴のみに頼っている状態。胃ロウか、喉切開で栄養摂取するかという

選択、或いは、このまま自然に任せるという選択、どちらかでしょう。

手術は・・正直進められません、お母さんの体力がもたないでしょう」

退院前、そう言われました。決断しな

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入院中のメモ

入院中のメモ

「白い三角巾はあまりに病人っぽい」と・・娘が100均で購入したというバンダナを二枚縫い、

それはそれは素敵なonly1の三角巾を持って来てくれる。

夜、消灯時間のあとは長い。

緊急病棟ゆえに痛みを訴える方、術後の方、重篤な方多し。

一番好きな77歳のご婦人。夜中に「たすけてください。もう痛いのは厭です。

自尊心を粉々に壊されるのも厭!

何故?何故、あの方達は意地悪するのでしょうか。

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父母生前覚書

父母生前覚書

くわっ!と、その目を見開き

”お前は!”と、怒声を発せよ

入道雲の如く

大岩の如く

圧倒的な畏怖を

わたしに味あわせよ

事の推移

 わたし自身の風邪にて一週間訪れなかった間

 父は隔離室に入れられ点滴を受け

 頬削ぎ落ち目は窪み

 久し振りに会う父は死に行く人の如く変貌遂げていた

 お父さん!と声を掛けても眠ったまま

 「何も食べないからです。」介護士が憎憎しげに答える

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父母生前:覚書

父母生前:覚書

それでも母は父を覚えているのだ。
多くを忘れようと、母が口にする
「一番大事な人を忘れるわけがなかろうもん」

母の大手術ののち、車椅子で近付いた父が
「おい、オレが誰かわかるか!?」の問いに
即答した母であった。既に三年前・・

認知症という病は、特効薬が無い。が、症状を遅らせることは出来るのだ。それを助ける薬もあるにはあるが、何といっても、周囲の言葉や働きかけ、母の表情を察知し
喜んでいるとわ

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父よ母よ

父よ母よ

あと二ヶ月で、父、奇跡の生還より丸三年経過する。

脳出血で高次脳機能障害となった父は、リハビリを続けるも未だ歩けない。

当初あった言語障害は回復。

父の入院時より、母の認知症は悪化した。

父母の三年は、私にとっても、新しい三年でありました。

尊大で倣岸不遜が服着て歩いているような、巨躯の父は

その肉体のみ半分になり。伊達男たる父は、全てのスーツ、ネクタイ、手を通すことも着ることも

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父母生前覚書

父母生前覚書

緊急搬送後、しばらくナース室の前に母は移されていました。

サービスステイション、見守りや検査、点滴、他、治療必要な方が入る場所。

血圧、体温、他、一応安定ということで、本来ならば本日21日に、従来の父との部屋に

戻すという医師、看護士さんのお達しあり。

が、何しろ、父がうるさい。

「夫婦を別々にするヤツが居るか~!夜、お前たちは、ずっとA子の様子を見れるんか?

俺が寝ずの番をする。早く

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覚書:父よ母よ

覚書:父よ母よ

あと二ヶ月で、父、奇跡の生還より丸三年経過する。

脳出血で高次脳機能障害となった父は、リハビリを続けるも未だ歩けない。

当初あった言語障害は回復。

父の入院時より、母の認知症は悪化した。

父母の三年は、私にとっても、新しい三年でありました。

尊大で倣岸不遜が服着て歩いているような、巨躯の父は

その肉体のみ半分になり。伊達男たる父は、全てのスーツ、ネクタイ、手を通すことも着ることも

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ただそれだけが嬉しくて

ただそれだけが嬉しくて

母は喋ることも忘れつつあるのか、とみに無口になった。

栄養士さんとの面談。三ヶ月更新、状況報告あり。食べる量が減っていますとのこと。

前は80%は食べていたのが、60%、体重も急に5キロ落ちた。

なのに~クダンの医師め!母に間食させるなと?

BMIがどうだってのさ。そもそも、母の身長からして計算ミスでしょ。

母は165センチあったのだ。多少、縮んだにせよ・・背中の湾曲で145センチって計

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俺は鬱だー!

俺は鬱だー!

車椅子に乗り、半身麻痺の父は、大声でそう喚く。

脳内出血時の損傷箇所が大きくて、リハビリを頑張るも、結局、歩くこと叶わず。

ただ・・好きこそものの上手なれ。違うかw

生来、口の達者な、いや、饒舌、多弁、父が口を開けば誰もが時に感動で、時に

唇かみ締めて・・去ったという、その性格が幸いしてか

はたまた、言語療法士さんが、とびっきりの(父好みの)

スレンダーな若い美女だった為か、

言葉だ

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雛あられ、母が食べた

雛あられ、母が食べた

母が大好きな千鳥屋のカステラと、ふと目に留まった可愛らしい雛あられを買い、

僅かな時間、ホームに寄って戻る。

カステラは、口に含むも吐き出す。嚥下が困難になっているのか?と嘆くも、

突如、袋開き、「うわ~~可愛い、美味しい!」と、雛あられを音立てて食べた母。

色とりどりの小さなあられを無心に笑顔で口に運ぶ母。

ああ、嬉しい!

「ホントにお前は子どもになってしもうたのぅ」と・・苦笑しつつ

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