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#読書日記
誠実も生きるためのひとつのポーズ――小川さやか著『都市を生きぬくための狡知』
「やってみればわかる」と古着を手渡されたところから始まる。その後、何百もの取引先を抱え、自分の店を持つまでになったというから驚きだ。
アフリカの路上商人についてのフィールドワークをまとめた『都市を生きぬくための狡知』を読んだ。著者の文化人類学者の小川さやかさんは、タンザニアの都市ムワンザで自ら商人となった。
商いは古着の販売だ。古着をまとめて仕入れる卸売商と、それを一般の客に販売する小売商によ
仕事の好みを可視化すれば、より良いマッチングができる――武藤北斗著『生きる職場』
仕事の場では個人的な好みを表明してはいけない、という暗黙の意識が自分の中にあった。どんなことでも対応するのができる人のイメージだからかもしれない。均質で安定していることが価値だと思っているからかもしれない。そんなイメージをくつがえしてくれたのが『生きる職場』という本だ。
東北にあった小さな食品加工会社の話で、著者はその社長である。まだ若く40歳そこそこだ。震災後、大阪に移転して営業を続けてい
読む人を圧倒しない普通の人の視線――川内有緒著『晴れたら空に骨まいて』
『晴れたら空に骨まいて』を読んだ。国連機関で働いた体験を書いた本や、バングラデシュに伝統音楽の歌い手を探しにいく本を出している川内有緒さんの新刊だ。キャリアはすごいのに文章は平易で、何かいいなあと思っていたので、この本も手に取ってみたのだった。
何かいいなあって、具体的に何がいいのだろう?
国連で働くほどの人の知性に触れたいのかもしれない。芸大から海外の大学院に行って国連に入ったという
「引き」と「寄り」を兼ね備えたら「深い」のかも
松田青子さんの短編小説集『ワイルドフラワーの見えない一年』はウィットが効いていた。ウィットというか、アイデアが散りばめられている。いつもメモをしていると、前に読んだエッセーに書いてあったので、そういうアイデアがこの小説にも生かされているのかなあと思いながら読んでいた。
例えば「少年という名のメカ」。これは映画やマンガに出てくる「少年」キャラ、純粋で周りの人がみんな応援したくなるような「少年キ
戦争というレイヤーが背景に下がった
写真家の橋口譲二さんによる『ひとりの記憶 海の向こうの戦争と、生き抜いた人たち』を読んだ。20年かけて作ったというライフワークのような本だ。
橋口さんは、戦後も現地に残って暮らした日本人を訪ねて話を聞き、ポートレート写真を撮影した。インドネシア、台湾、中国、韓国、サイパン、ロシア、キューバなど、各地にそういった歴史を持つ日本の人が住んでいる。もう高齢になっているこの人たちのために何かしなけれ
北風より太陽の質問術
インタビューをして文章を書くことを何度かやってみたら、どんな質問をすればよいかが気になるようになった。飲み会なんかのときでも、どう聞けば話が展開するのか、おもしろい話が引き出せるのか、と意識するようになった気がする。
『良い質問をする技術』(粟津恭一郎著)が目に留まったのは、そんなふうに質問に興味を持っていたからだろう。自己啓発っぽいんじゃないかと先入観があったけど、読んでみると、実際に誰か
「それ自体を楽しむ」とは?
留学でもしてみたい、と思っているのだけど、いざまじめに考えようとすると、とくに学びたいことが思いつかない。
どんなことでも学べばおもしろいはずだ。でも、知識を吸収するところまではいいとしても、ではそれを使って何か研究なり、活動なりをしてみましょうとなると、尻込みしてしまう感じ。心理学とか興味あるけど、心理学者になりたいのか? カウンセラーになりたいのか? と自問すると、そういうことではないな
普通の人でもできそうなノンフィクション作家の始め方
常々、日記をきちんと書きたいと思っている。とくに海外に出かけたときなどはそうだ。でも旅先では忙しかったり、疲れていたりして、なかなかきちんと日記が書けない。出来事もいろいろあるし、新しいことも目にするし、気づくことや思うことも多いから、なかなか全部書けない。そのときはいちいち書いておかなくても忘れないだろうと思うけれども、後になったらやっぱり忘れている。
早稲田大学の探検部の出身で、ノンフィ