「それ自体を楽しむ」とは?
留学でもしてみたい、と思っているのだけど、いざまじめに考えようとすると、とくに学びたいことが思いつかない。
どんなことでも学べばおもしろいはずだ。でも、知識を吸収するところまではいいとしても、ではそれを使って何か研究なり、活動なりをしてみましょうとなると、尻込みしてしまう感じ。心理学とか興味あるけど、心理学者になりたいのか? カウンセラーになりたいのか? と自問すると、そういうことではないなあと思ってしまう。
そんなところに、『学びとは何か』(今井むつみ著)という本が目に留まった。
著者は認知心理学が専門で、脳の仕組みから、有名な心理学の実験まで網羅しつつ、人が何かを学ぶとはどういうことなのかを解説している。直観は、全体の終着点についての直観(=ひらめき)と、次の手についての直観の2種類あるという羽生善治の話や、アマチュアと熟達者の違いは練習中の集中力の差、など、なるほどと思うことがいろいろ書かれていた。
個人的に印象に残ったのは、「遊び」はそれ自体が目的であるという話。例えば、大人が子どもと遊ぶとき、何かを教えてやろうという態度では子どもは乗ってこない。それ自体が目的になって初めて、子どもは楽しみを見いだす。
最近は何かをするときに、どうしても目的を考えてしまうことが多くなっていた。そのせいで楽しいことでも、こんなことをしていていいのか、自分にとってメリットがあるのか、とか考えてしまって、心から楽しめなかったり、ブレーキをかけてしまったりする。逆に、何かを実現するためには、逆算してこれをしなければならない、と頭で考えても、どうしても面倒になって体が動かないこともある。
それ自体を楽しめることを見つける。もしくは、今やっていること自体を楽しめるようになる。それができれば、人生はもっと充実するんじゃないか。
具体的にどうしたらいいんだろう?
習慣化が近い気がする。習慣になってしまうと、いちいちこれは何のためにするのだ?とは考えない。そういう状態になると、それ自体を楽しむことに近づいてくる気がする。例えば、筋トレとかストレッチをしながら、今日は調子がいいな、とわかってくるような。その行為の中にある変化を味わえるようになること。それが「それ自体を楽しむこと」に近いのではないか。
態度を褒められたグループの子どもは、正解を褒められた子どもより算数の理解の向上が著しい、という実験結果も興味深かった。態度を褒められると、もっとやってみようという意欲が湧いて、努力を継続できるのだろう。プロセスに注目した方が遠くへ行けるのだ。
でも、プロセスを評価するのは、結果だけを評価するより難しい。経過をしっかり観察したり、詳しく聞き取りをしたりしなければならない。プロセスが大事だというのは、結果を出せていない人の言い訳だといわれることもあるけど、そればプロセスを評価するのが面倒くさいだけなんじゃないだろうか。
考えてみれば「それ自体を楽しむこと」も、つまりはプロセスを味わうことだ。学びとはプロセス、ということなのかもしれない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?