難病患者のボク流「影響力の武器」~自分らしさの磨き方と障害受容~
影響力の武器
「自分らしく」あることは難しいことだと思います。
僕が障害者雇用で働いた時は、周囲から病気の特性に対する理解が得られず、スキルアップやキャリア形成を否定されました。
その中で、上司に「障害者らしくないから、障害者らしくしろ」と言われたことは今でも嫌な記憶として残っています。
明るく振る舞えば、明るく振る舞うほど、苦しんでないとか楽をしていると誤解され。
クローン病や潰瘍性大腸炎の病気は総理大臣になるような恵まれた人がなる病気だ。恵まれない人は世の中にもっといる。支援を受けるのはあなたのような人じゃないとハッキリ言われ。
傷つけられたという気持ちもなかったわけじゃないけれど。
それ以上に、他人から「かわいそう」と言われることは本望ではありませんでした。
僕は、悲しみや辛さを前面に押し出して同情をかったり、悲壮感を誘うのは嫌いです。
ですから。
障害者らしく難病患者らしく「したくない」というのが、今でも自分の変わらない気持ちです。
過去の失敗を相手のせいにするのは簡単なこと。
ハラスメントで揉めに揉め、転職会社に嫌われ、就職先がなくなったことは僕にも非があると思います。
負けは負けと認めなければ、先に進めない。
社会に受け入れてもらえなかったからには、僕の負けだと思いました。
とにかく自分自身が変わりたい。
自分の感情に逆らうこと、偽ることは心理的な負担がかかります。
無理は持病のクローン病を悪化させるかもしれない。
ありのままの自分でありながら、組織や集団に受け入れてもらえるような努力が必要だと思いました。
さまざまなことを独学し、100冊以上の本を読んだ中、出会ったのがこの本でした。
アメリカの社会心理学者ロバート・B・チャルディーニ氏が提唱し、他人を説得して影響力を与える心理学的アプローチ方法が書いてあります。
お値段は3000円とちょっとお高め。
でも、その価格の価値があったと僕は思います。
ビジネス書を何冊も読むよりか、この一冊を読む方がその内容が凝縮されています。
この本は、「承諾の心理」を利用した6つの戦術を解説しています。
「承諾の心理」とは、人が他人からの頼み事や提案を納得して受け入れる心理です。
この知識は、「自分らしく」ありながら、周囲の理解や協力を得ることができるようになると思います。
自分を飾らない自己紹介、自己PRにも使える知識です。
嘘をつかなくて済みます。
クローン病の自分をありのまま受け入れる障害受容の面からも役立ちました。
この本が自分らしく生きるためにも、障害受容にも、どのように役に立ったのか。
今回は難病患者のボク流「影響力の武器」の解釈を紹介していきたいと思います。
病気は体だけでなく心までも蝕むことがあります。
「自分らしく」あるためのヒントにしてもらえたら、うれしいです。
(ここまでの前置き、なげーな。。。)
1.返報性の原則
受けた恩は返したくなる心理です。
わかりやすく言えば、「ギブアンドテイク」。
他人から優しくしてもらえたとき、人は恩義を感じ、それを返したいという気持ちになります。
頼みごとをする際は、先に相手のために何かをすることで、頼み事を受け入れてもらいやすくなります。
例えば、友達に旅行のお土産をもらったら、今度は自分もお返しを贈らなきゃって思うヤツです。
人は自分の思考や行動と矛盾する認知を抱えているときに、不快感を覚えます。
つまり、いきなり誰かに何かをしてもらったら、自分も何かをしなきゃと思います。
思考では、相手にお返しをしないといけないことを理解するのですが、行動では、今すぐにお返しをできるわけではない。
そこに、人は申し訳ないという罪悪感を持つのです。
この自分の中に矛盾する2つの認知が生じたときに感じる不快をアメリカの心理学者レオン・フェスティンガー氏は、「認知的不協和」と呼びました。
返報性の原則は、この認知的不協和を使ったテクニックです。
要は、普段から他人に親切にしておけよ。
それすれば、困ったときに助けてもらえるから。
それでは、友人にお金を貸してと頼まれたり、宗教の勧誘を受けたら、断ってはいけないのでしょうか?
すぐに断ってください。
僕の考える返報性の原則は次の2つです。
・困っている人がいたら、その場で自分がすぐにできることなら、してあげること。
特別なことはしなくていいです。
自分が考えたり、悩んだりすることならしなくてオッケー。
何も考えずにすぐできることなら、助けてあげましょう。
・何かをしてもらったら、必ず「ありがとう」を言おう。
感謝も相手に渡す「優しさ」という恩です。
言葉にしなくてわかってもらえるというのは甘えです。
必ず言いましょう。
人は「ありがとう」と言ってくれる人を助けたくなるものです。
これだけの簡単なことなんです。
しかし、これができていない人はすごく多いです。
毎日、続けていれば、相手の反応が変わってきますよ。
2.一貫性の原則
人は自分の言動を一貫したいという心理を持ちます。
わかりやすく言えば、「約束を守りたい」という気持ち。
人は、自分が言ってしまったことを後から否定しづらいものです。
法律の議論でも「禁反言の原則」というものがあり、「自分がとった言動に相反する主張をすることは許されない」とする原則があります。
前言を翻したり、矛盾する行動をとることはアンフェアだとされます。
例えば、誰かと口喧嘩をしてしまった。
「ごめんなさい」と言いづらくありませんか?
怒ってしまった過去の自分を正当化させたいからなんですよ。
僕の考える一貫性の原則は、次のことです。
・まず先に自分から「悩み」を打ち明けよう。
先手をとった「悩みの自己開示」。
勇気のいることですが、難病患者や障害者は病気や障害の開示でもいいと思います。
ただ自己開示をすればそれでいいというわけではなくて、自己開示と同時に相手から助けてほしい支援の約束も取り付けてしまうのです。
承諾してもらえれば、こっちのもの。一貫性の原則を利用できます。
「えー。あのときは、助けてくれると言ってたのに」とチクチクと。
相手が約束を守らざるをえない状況にすることも可能になるでしょう。
そして、この一貫性の原則は自分に使うことでもう1つの効果があります。
・自分の言動が一致すると相手からの信頼が得られる。
円滑に仕事が進められたり、人間関係のトラブルが減ったり、周囲からのサポートを得やすくなることに役立ちます。
「虚仮の一念岩をも通す」なんて諺もあり、どんなに愚かな人でも、思いを一途に通せば、岩をも貫通するような大きな仕事ができるようになるって言われたりしますよね。
僕はできるだけ「嘘」をつかないように、気をつけています。
そうすれば、ある程度の言動は一致できますから。
3.社会的証明
自分が周りの人の行動と同じ行動をとることで安心する心理です。
わかりやすく言い換えれば、「同調圧力」でしょうか。
赤信号、みんなで渡れば怖くない。
例え、間違っていることでも、みんなでしてしまえば罪に問われない。
みんながやっていることに安心感がある。
流行なんかも同じですね。
郷に入れば郷に従え。
組織や集団のルールに従うことで、周りの理解が得られるでしょう。
しかし。
僕は、社会的証明においては、まったく逆のことを提唱します。
・出る杭は抜けきってしまえ!
出る杭は打たれるなんて言いますが、杭は中途半端に出ているから打たれるのです。
どんぐりの背比べ。仲間意識の強い組織であるほど、違う背丈のものを嫌います。
だけど。
杭は抜けきってしまえば、打ちようがない。
中途半端に刺さってるから、打たれるのです。
アメリカの心理学者レオン・フェスティンガー氏は社会的比較理論の中で、人間は他者との比較をするときは、「価値観の比較」と「能力の比較」を行うと大きく2つに分けています。
つまり、まったく違う価値観、まったく違う能力であれば、比較しづらくなるのです。
この心理を応用して、人と比べられないほど「自分らしく」いることも1つの手段ではないでしょうか。
僕自身、社会保険労務士として、難病患者の「病気の治療と仕事の両立支援」を経営の主軸に置いたこともこの考え方によります。
まだ誰もやっていない仕事だから。
他の一般的な社労士と同じように一般的な社労士の仕事をしても、健康面で競り負けてきます。
病気は治らないんだから、努力や根性の精神論でなんとかなるようなものではありません。
クローン病と20年以上、闘病してきた自分だから、よく知っています。
だったら、自分が戦う土俵から、自分で作らなければならないのではないか。
杭は抜けきってしまえば、比べられません。
すなわち、負けるということもなくなります。
組織の中でもあまりに異質な人は、周りの人が協調してくれます。
マイペースに生きてもよいのではないでしょうか。
4.好意
好きな人の言動は肯定しやすい心理です。
今風に言えば、「推し」の心理です。
小規模のファンマーケティングをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
好きなアイドルの言ったことは、何でも正しいって思っちゃうことありませんか?
それです。
自分が好かれる人になりましょうってコト。
好かれる人間になれば、応援してもらえる。
「えー。自分、アイドルになんてなれないよ。」って思ってる人いますよね?
ルックスやカリスマ性の話じゃない。
そんなに難しくないんですよ。
好意は、「好き」だけじゃなくて、理解をしてくれたり、評価してくれたり。
肯定的な意思表示をするだけでいいんです。
話を聴いてあげるだけでも大丈夫。
それだけで相手に好印象を持ちます。
他者から好意を抱かれやすい心理学のテクニックも2つ紹介しておきます。
1つめは、「ハロー効果」。
ある人を評価するとき、一部の特徴的な印象に引きずられ、全体的の評価が歪んでしまうことです。
例えば。
東大出身の人であれば、間違いはしない、とか。
見た目が綺麗な人は、きっと部屋も綺麗だ、とか。
身長が高い人は、スポーツもできる、とか。
この認知の歪みをうまく使うことで、人に好印象を持たせることができます。
僕はスタイリストの本をたくさん読んで、ファッションの勉強はかなりしました。
GUやZARAの安物の服ばっかだけど、まあ、清潔感のある格好はできているかな、と。
部屋の掃除が苦手で、むちゃくちゃ汚い部屋に住んでいるけど、バレてはいないはず。(笑)
見た目の印象で得をするということもあります。
メモをよく取ると、まじめそう、とか。
いつも楽しそうに笑っていると、明るそう、とか。
効果はいろいろとありますから、みなさんも使ってみてください。
2つめは、「類似性」です。
人は自分と似た人を好みます。
主義主張、経歴、性格、ライフスタイルなど。
つまり、好意を持って欲しい人たちと同じ共通点を見出すことは大事なことです。
よく会社の先輩が野球の話をしたほうがいいとアドバイスしますよね。
これは年配男性の話題の共通項が「野球」という人は多いんですよ。
俺らの仲間に入りなよってお誘いの意味合いもあるわけです。
ちなみに、僕はまったく野球に興味がありませんが。
ですから、もし、野球に興味がなくても、世代が違う人と何かしらの共通項の話題を持っておけよという意味に解釈しています。
ルックス、話題、趣味、食べ物、なんでもいいから、親しくなりたい人との共通項をみつけておくと、その人から好意を持たれやすいと思います。
それでは。
僕が実践している「好意」は次のとおりです。
・自分の意見のないことは、ネガティブなことを言わない。
・どうでもいいことで争わない。
人間、生きる上で、大事なことって、そんなにたくさんあるわけではないと思います。
これだけで、他者からの好感度は上がってくると思います。
5.権威
専門家に指示や助言を求めてしまう心理です。
「何を言うかより、誰が言うか」。
肩書だけで説得力を感じさせてしまうテクニックです。
これは、スキルを取得したり、仕事のキャリアを形成するのが手っ取り早いかな。
6つの戦術のうち、すこし努力が必要なものだと思いますが、1番強力な効果もあります。
資格試験の取り組み方、勉強法は以前にブログに記述しました。
ニートだった頃は誰にも相手にされなかったけど、社会保険労務士になったら、こうやって、みんなに日記まで読んでもらえるんだもん。
このブログが権威性の証明になっていると思います。
でも。
このブログを読んでいる人にも、勉強とか、努力とか、キライだーって人もいますよね?
医者に白衣、弁護士にバッジということもあります。
見た目や形式から、それっぽく見せるのも手です。
一時のハッタリ程度には使えると思います。
ですが、詐欺的手法なんで、僕はあまりお勧めしません。
うわべより中身です。
それでは、僕の実践している権威性とは何か?
それは、「先生と呼ばれない社会保険労務士になること」です。
いや、ほんとに、マジで、これは効果が強力すぎる。
俺、そんな立派な人間じゃないって。
まちがいなく、見習っちゃダメな人です。
自分から人前に出たり、手を上げてしゃべるのは苦手だから、話しかけられやすい社労士になりたいなって。
だから、この権威性に限っては、弱める努力が必要だと思っています。
6.希少性
手に入りにくいレアなものほど価値があると思い込みやすい心理です。
限定品や残りわずかの商品が魅力的に感じませんか。
人は少ないものほど大好きです。
例えば、旅行に行ったとき、どこのコンビニでも売っているお菓子でも地域限定のお菓子だとお土産に選んだりしませんか?
「その土地でしか買えない」という限定的なバリューが加わるから選ばれるんですよね。
実は、この法則。僕もそうなんですが、このブログを読んでくれている人たちは、1番実践しやすいかもしれない。
難病や障害で苦労した話をそのまま公開してしまうのが、お勧めです。
不幸が大きければ大きいほど、希少性が高まり、キャラクターは強まります。
僕もクローン病になってから、良い事なんて1つもなかったんだけどさ。
悔しいけど、社会保険労務士になってから、他の社労士さんたちと「差別化」されるのに、難病が役立つこともあるんだと気付きました。
病気になんてならないことが1番いいんだけどさ、今まで難病で良い事がなかった分、利用できるものは徹底的に利用してやろうと思っちゃってます。
だから、自分がクローン病であることも積極的に開示しました。
ボクがオススメするのは
難病患者のボク流「影響力の武器」いかがだったでしょうか?
参考になった方は、この6つの戦術のうち、まず3つを実践してみてください。
選んだ3つが「自分らしさ」につながっていきます。
自分で自分を知ることは難しい。
もし、僕があなたの「自分らしさ」を知るきっかけの手伝いができたなら光栄です。
僕がこの「影響力の武器」を読んだときは、障害雇用のブラックリスト入りをして、もう就職先や仕事はないんだろうなと精神的にすごく追い詰められていました。
なんとか自分を救いたくて、この6つの戦術を藁にもすがる思いでやってみました。
当然、「うまくいくこと」と「うまくいかないこと」があって。
こういった経験談がまとめられるようになるまで、たくさんの失敗もあって、すこし時間がかかりました。
今では、「影響力の武器」の6つ戦術も意識することなく実践できています。
しかし、できるようになったら、できるようになったで。
正直、今となっては「影響力の武器」はどうでもよくなりました。
(おい。長々と書いて、元も子もねーだろ。)
言葉の裏に愛情がないと、言葉は誰かの心に刺さらないとわかったから。
外面の技巧より、内面の心だと思う。
ただ、自分は、外面から変えて、内面も変えることに成功したんだと思います。
言葉の裏に愛情があって、「影響力の武器」を実践できれば、自分らしく生きる強みとなります。
人は生きる上で、自分だけのワイルドカードを持って生きたほうがいい。
困難に直面したときに、立ち向かえるから。
自分らしく強く生きることは美しいと思います。
だから、最後にココ・シャネルのこの言葉を贈ります。
美しさは「武器」であり、装いは「知恵」であり、謙虚さは「エレガント」である。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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