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短篇集

23
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記事一覧

短編「16小節と付点四分」

「ねぇ、こんな感じで弾いてくれない?」 不和、そんな想いを伝える。 梅雨入りした私の学校…

Aene
3年前
13

短篇「幽霊の夏、そば粉と」

こんな瞬間の後は蕎麦を食べたくなる。 「私の浴衣、どう?」 柄にもなく、さっきまでウレタ…

Aene
3年前
5

短篇「逢引」

『今日もまた相談にあったんだ……?』 まだ尻が青く、時代を謳歌し切れてなかった時期。矢…

Aene
3年前
4

短篇【芍薬】

携帯電話は携帯しなくちゃ意味がない。 家で居眠りを続けるようなら持つ癖自体に疑問を持たな…

Aene
4年前
3

短篇【夜風が調律してくる】深川麻衣

『髪切ったの、どう?』 そういえば、この言葉はどういう意味だったのか。2日前のたわいもな…

Aene
4年前
3

短篇【身体が。】齋藤飛鳥

衝動的に生きていたのは、高校に上がって数日間経った春の平日まで。 何をするにも後先考えず…

Aene
4年前
1

短篇【夏に生きるだけ】橋本奈々未

冷房は25度がいい。 体温に合わせて順応していく流動体たちが私の課題への熱を丁寧に包んでくれる。風向きは良好、脳への巡回も終わり。 今日も学校から近い図書館に来た。夏と大型休憩という理由だけでまとめて出される課題の数々は無残に息を潜めて、手をつけられるのを待っている。 私はいつも外が見える日当たりの良い場所に敷居を広げて、いつもで片付けられるような荷物を置く。高校三年目になると課題への真摯な生き方も呼吸の仕方も玄人の所作。 ゆっくりと筆を進めて、自然と入る景色の色合い

短篇【この距離から見つめる愛が】白石麻衣

「頭痛が痛い」 昔から麻衣が良く使う言葉。 テスト勉強で新しい言葉が頭の中に羅列されても…

Aene
4年前
3

短篇【plastic love】西野七瀬

揺れる_______ シングルベッドで寝る僕らはかなり密着したままで五月の微力ながらに火力が強…

Aene
4年前
2

短篇【夢見る機械】齋藤飛鳥

下校の夕暮れ、空は楽しく晴れていた 赤く光る空に映える騒々しい雲が、 今でも少し憎たら…

Aene
4年前

短篇【テレポート】清宮レイ

シャーペンよりも鉛筆の方が気持ちがいい。 古い文化という理由で固執してるわけじゃなく削る…

Aene
4年前

短篇【感情線】森田ひかる

「貴方が聴いていた曲のタイトルが思い出せない」 耳に置くと素早く心地良い低音、BPM120で足…

Aene
4年前
3

短篇【Hello Everything】梅澤美波

隣の席にいる私は彼が好きみたいだ。 彼の長い前髪は切りたくなるけど、先生に指されると驚く…

Aene
4年前
6

短篇【夜間飛行】渡邉理佐

蝉達の切削な合唱が途絶えていく秋の始まり まだ残暑の延長で再開した学校に止め処なく労る生徒たちは、気怠く息巻いている。 特質された面白みも健気な話も途切れて、だれていくだけだった。 微妙に鼓膜を遊ぶ蝉の泣き声は二ヶ月間の休みの距離を徐々に縮めてくれる。 今は数学の時間 教師が書く公式がチョークの無駄遣いと 思えてしまうほどに。 ここには希望はなく、同じような顔をした同士たちが表面上で必死に黒板を写す。 僕は空気だ。 誰も見ないし、誰も知らない。 窓側の1番端に佇む