短篇【夏に生きるだけ】橋本奈々未
冷房は25度がいい。
体温に合わせて順応していく流動体たちが私の課題への熱を丁寧に包んでくれる。風向きは良好、脳への巡回も終わり。
今日も学校から近い図書館に来た。夏と大型休憩という理由だけでまとめて出される課題の数々は無残に息を潜めて、手をつけられるのを待っている。
私はいつも外が見える日当たりの良い場所に敷居を広げて、いつもで片付けられるような荷物を置く。高校三年目になると課題への真摯な生き方も呼吸の仕方も玄人の所作。
ゆっくりと筆を進めて、自然と入る景色の色合い