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偽・日記

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日記です。偽の場合もあるし、半分偽の場合もあるし、偽じゃないのに偽ということにするために偽ということにした場合もあるかもしれません。うかつに創作物に自己を入れないためのデトックス…
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つっこんでなかを撫でるね(偽日記 縺薙l縺ッ縺ゥ縺ョ譎らゥコ縺ァ繧りヲ壹∴縺ヲ縺?k縺薙→)

つっこんでなかを撫でるね(偽日記 縺薙l縺ッ縺ゥ縺ョ譎らゥコ縺ァ繧りヲ壹∴縺ヲ縺?k縺薙→)

海のなかでも波の動きはわかる。無形の手が私のからだを包んでいるような心地。海は触る。私は海の腕をみる。その肩が揺れ、肘まで伝わり、手のひらに、指さきに、波動する力で、私が見た数秒後に私のからだは持ち上げられる、重力をすこしだけ無視して、私の内臓がふわわと体内で踊る。撫でられながら砕けるよう、体内のあちこちに散り積もった埃はバラバラと振り落とされ、海水に溶けていく。もうどこにもない。この時間のあいだ

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レ/クリエーション(偽日記76)

レ/クリエーション(偽日記76)

晴れていてよかった、とすこし嘘みたいにいったそばから熱気が背骨を撫で、私たちは同じ温度の空気を肺にいれた。深々と、確実に、肺にそれがまわったあと、なごり惜しく吐き出して、あと少ししたらいこう、といったのはもう誰かも覚えていない。急ぎはしないのは、ゆるされていると錯覚できる時間はあたりまえにすぐ終わるので、すぐ終わるからこそ急いで台無しにしたくないからだ、と全員がおもっていた。いま私は、全員が”おも

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または最後の楽器について(偽日記57)

または最後の楽器について(偽日記57)

生活のこと。仙台の春はすこし遅れてくる、とおもうのは、そうじゃない春を知っているからで、去年のいまごろ私は京都にいた。そのときはなにかを終えて、なにかを始めると決めたときで、そのなにかがなにだったかはもう思い出せないくらい遠く、もしいまの春と去年の春が重なったら、私と私のそれぞれはみでた輪郭の、違いのぶんだけ記憶もずれていく。散歩ばかりしている。あるいているとくちびるに触れる空気が、空気のなかに保

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どうでもいい音楽(偽日記52)

どうでもいい音楽(偽日記52)

わりかし簡単な手続きでエモくなって、乱暴な情緒で踊りだしかねない邪悪の人間なので、好きな曲こそあまり容易にきくことができず、だからしょうじきどうでもいい音楽をきくことのほうがおおい。なんかのアニメ曲(ゲーム?)のカバー(歌ってみた?)とかlofi-hiphopの曲名もわからないまま纏まった動画とか好きでない作曲家のクラッシックのまとめアルバムとか下手くそな素人のジャムセッションとかもしくはほんとう

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それなら幽霊の練習(偽日記44)

散歩をする。
なんとなくドライマンゴーをコンビニで買い、公園でたべた。
ちょうどいい歯応えがくちのなかで甘く壊れていく。ざらつかないなめらかな果肉で、ファミマのマンゴーはいつもすばらしかった。
それだけで1日が終わりうる。
とくだん生活が生活の様相を示さない時間がいまで、時間への扱いの荒さがあらわれている生活リズムは、よくないことはわかりつつ、なかなか矯正できない怠慢に甘えつつさいなまれている。

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みえない臓器になる(偽日記25)

みえない臓器になる(偽日記25)

深夜にカップラーメンを食べた。ゆず塩味。寝る前に、ああきょうなにも食べてないと気づいて、そうおもうと、なんだか妙に腹が減って、いろんな欲望がきゅうに立体的になって、磨りガラスみたいだった視界が短期的にぴんと澄みわたり、だから、からだを起こしてコンビニで買ってきて食べた。太るかも、とおもいながら啜る。深夜にカップラーメンなんて、いつぶりなんだろう。太ってみようか、とおもう。太ってみたらいい。じぶんの

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部屋のくらがりがキーパーグローブを嵌めて(偽日記23)

部屋のくらがりがキーパーグローブを嵌めて(偽日記23)

なんか小説の賞とった、友達のLINEでいうと、じゃあドンキと万代いくか、とかえってきて、いくいくとなって乗り込む。全体が灰皿みたいな車。ぐるぐるだ、とおもう。景色。書く気にもならない景色。口笛がきこえる。友達は口笛がうまい。とてもうまいので不快にならない。「WTAPSの秋服が欲しい、スウェット」といわれる。へえ、という。私は馬鹿なので、スウェットにロゴだけ入っている数万の服の意味がよくわからない。

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歯を光らせて、厳粛かつ潔く涎を垂らして(偽•日記21)

歯を光らせて、厳粛かつ潔く涎を垂らして(偽•日記21)

繁華街にいた。午前1時とかだった。腹の中ではキムチ鍋がやさしく蠢いていた。私は平置きのコインパーキングで時間を潰していた。すこしばかり、人を待っていなければならなかったのだ。タバコも吸い飽き、もってきた文庫本も読み終わってしまい、繁華街を散歩することにした。通りはさすがにコロナ前と比べると閑散とはしていたが、まあそれでもまだ人通りがあった。活気はないが。光が少ない。欲望たぎらせて歩む悪そうな大人が

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モヒカンのパターン(偽・日記20)

モヒカンのパターン(偽・日記20)

とある現場にはいっていた。学生時代よく日雇いの仕事をしていたが、それらの現場に比べれば天国みたいな仕事だった。クーラーが効いていたし、怒鳴るような人間もいなかったし、ちょっとでもバランスを崩したら大怪我するような重量の物体を運ぶ必要もなかった。(本来、少なくとも私が学生時代に行っていた日雇いかつ取っ払いの仕事は本当に酷い。筋肉より先に人間性が擦り切れていく。一度24時間休みなしで肉体労働をしてみる

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ぬれた髭から滴らない(偽日記18)

ぬれた髭から滴らない(偽日記18)

髭が伸びている。無職だと、髭がたくさん伸びる。髪も、伸びる。背も伸びて、手足も、からだのあらゆるが伸びて、いまや私は軟体の電柱のようだ。でも、これは引き伸ばすの伸ばすで、だから雨風に晒されれば、ぽきりといくつかの節に折れてしまうはず。

顔を洗う、髭に水がたまる。顔は、たいていの場合は水を跳ねるものだから、顔のまわりに水が溜まってなかなか滴らないのは不思議。今日はずっと部屋にいた。ずっと一人暮らし

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波(偽日記17)

波(偽日記17)

近所に7つくらい寺が密集している。そんな、変な場所に住んでいるのに、引っ越してきてからまる一年以上立ち寄ることもなく過ごしていたので、ついに先日ぜんぶいっぺんに回ってみることにした。はいってみると、案外に敷地が広い寺も多く楽しめた。よく京都とか、なんかジャパン!みたいな土地の観光地にいくとある線香立てるでかい鍋みたいなのもあったが、近年は参拝客も少ないのか、一本も線香が立っていなかったし、販売もし

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9人のゴッホがいる銭湯(偽日記14)

9人のゴッホがいる銭湯(偽日記14)

銭湯にいく。アパートのガス代がとても高いからだ。ほとんどシャワーで済ませているのに月に1万円は請求されている。都市ガスではなくプロパンガスで、とりわけ悪質な価格設定の業者が私のアパートにガスを通しているせいで、年中ガス代をどうにかする算段を立てなくてはならないし、冬は凍えながら暮らさなくてはならない。

ガスが高くなくても銭湯にはときおりいっていただろう、というくらい風呂好きな私は、昨日も銭湯用の

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「9回裏ツーアウト永遠」(偽日記4)

「9回裏ツーアウト永遠」(偽日記4)

2021 1/31-2/8 追想/日記

電気代を払うのがきつくなってきて、エアコンを止めたら部屋の中で息が白くなった。心配してくれた先輩がもう使わない古いガス式の暖房機をくれて、その先輩と仲の良い先輩が灯油をくれた。でもその灯油もあと一回分でなくなるので、寝る数時間前は布団に包まって耐える。いまもそうしている。宮城の冬はかなり応える。子供の頃はむしろ好きだったのだけれど。

月曜日に暖房機をくれ

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「本屋泥棒と縁が深い」(偽・日記1)

「本屋泥棒と縁が深い」(偽・日記1)

2021/1/8

とにかく金がなく、私ははるかむかしに捨ててしまった盗賊のこころを取り戻していた。それはつまり、スーパーで必ず無料の牛脂をもって帰り、JTの喫煙所でサンプリングを配っているお姉さんと談笑して仲良くなりこっそり3つもタバコをもらったり、もしくは本屋で短編小説やエッセイを立ち読みするこころだ。

仙台アエルに入っている丸善で文藝、新潮、文学界のなかで気になったものをぱらぱらと、しかし

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