髙 たかよ(たか たかよ)

|エッセイ|旅行と語学と写真好き|

髙 たかよ(たか たかよ)

|エッセイ|旅行と語学と写真好き|

最近の記事

日々是徒然とー11月中旬編ー

11月X日 職場からまた退職者が出ることになった。 それでなくても人材の乏しい会社から、どんどん人がいなくなっていく。 先月はとても気の利く大学生のアルバイトが辞めていった。 彼女とおしゃべりするのは楽しかった。 びっくりすることを教えてくれたこともあったな。 たまに自転車で通る雑木林の一角が、実はトヨタ自動車の会長の家だと教えてくれた。 あれには驚いた。 まさか生活圏内に世界的大企業の会長が住んでいたなんて。 会長の家には、私が毎日自転車でヒィーヒィー言いながらのぼる坂道が

    • 電話1本でできること

       まだ、私が実家に住んでいた時のこと。  私は2階の自室にいて、1階からは断続的に声が聞こえるので父が長電話していることはわかっていた。父が電話することなんてあまりないから気にはなってはいたし、それもとても長かったので何かあったのだろう、とは思っていた。  1時間以上経って、父が階段をのぼる音が聞こえて、自身のぐちゃぐちゃのパソコン部屋に入ったのを音で確認すると、私は1階の食卓に行った。  そこに居たげんなりした様子の母が、ヤクザから電話があったと言った。  少々込み入っ

      • 消えた黒光りの車

        学童保育所に勤めているので、たまに近くの小学校に授業が終わった子どもたちの迎えに行く。 以前は毎日だったが、今は私にその当番がまわってくるのは1ヶ月に1、2度くらいだ。 先生方の駐車場の横を通って校舎へと行くのだが、そこにはいつも異彩を放つ車が1台あった。 テッカテカに磨き上げられた真っ黒な車。 ギンギラギンでら凝った形状をしたホイール。 ホストクラブの経営者が乗りまわしていそうなこの車は、校長先生の車だ。 校長先生はいつ見ても、ホストクラブの経営者にしか見えなかった。

        • 日々是徒然とー11月上旬編ー

          11月X日 実家に姪ふたりが来ているというので私も実家へ。 夕食を一緒に食べた。 アジとオジサンの刺身、鯖の味噌煮に田作り、と魚料理がてんこもり。 もちろん切り干し大根やかぼちゃの煮付け、野菜のスープなど副菜もたくさん。 それらがテーブルに並ぶのを見て、「ここでたんまりと栄養を補給していくぞ」と強く心に決めた。 そしてたんまりと食べた。 姪ふたりがあまりにもたくさん食べる姿を見て、私ももっと食べた。 11月X日 翌日の午前2時。 胸のあたりがつかえて苦しく目が覚めた。 仰向

          日々是徒然とー10月下旬編ー

          10月X日 午前中、地方裁判所に傍聴へ。 さくさく自転車を漕いだら前回より10分早く着いた。 だけど自転車で通うにはやはりちょっと遠い距離できつい。 初めて「新件」を傍聴することに。 これは1回目の裁判、ということでこれから追っかけることができるので気になっていた。 法廷も裁判官も、先日、同級生が脱税で捕まった裁判と同じだった。 1つめは窃盗。 高齢の、とても不健康そうな高齢女性。 窃盗なのに手錠に腰縄。窃盗なのに拘束されているのだ。 窃盗なのに、なんて言ってはいけないが。

          日々是徒然とー10月下旬編ー

          変わらないサヨ

           自宅から自転車で行ける範囲にショッピングセンターはいくつかあるも、電車でないと行けない、ちょとおしゃれ気取ったショッピングセンターに行った。  ここには何回か来たことがあるので、見たい店はもう決まっている。  私の住む街にはまだ1店舗しかないお高め気取ったパン屋、アメリカっぽい大きなインテリア雑貨店、本屋、安さが売りの雑貨屋、そして食器を見るのが目当てのインテリアショップ。  その食器目当てのインテリアショップに入ると、展示品のクッションを自分の太ももにパンパンとあててホ

          タコとイカの両方を

           自転車を20分、30分と漕いで繁華街へと向かう途中。  あと一息、というところで信号に引っかかった。  この信号は渡っておきたかったのに。  そう思いながら先を見ると、交差点の向こうにある、介護用品を売る店が目に入った。  あの店は昔、薬局だった。  小学生5年生の夏だったと思う。  テレビCMでちらっと見た日焼け用オイルと日焼け止め乳液のビジュアルに目を奪われ、絶対に欲しいと思った。  日焼け用オイルはタコオイルと言い、タコの形をした容器に入っている。  日焼け止め

          馬主だった祖父

           馬、もしくは競馬をテーマにしたエッセイのコンテストに応募し、先日、結果発表があった。のですが、まことに残念な結果でしたのでこちらにアップします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『馬主だった祖父』  あれはまだ、祖父母が生きていた頃。祖父母の家に遊びに行っている時だった。  とは言ってもいつも特別にすることはなく、一緒にテレビを観たり、一緒にご飯を食べて過ごすだけで、余白の時間がたっぷりとあった。  その時間をつかって、古い家の戸棚や物置部屋の中をほじくり

          日々是徒然と ー10月中旬編ー

          10月X日 放置していた家計簿に突然取り掛かる。 家計簿は半年に一度、6時間くらいかけて一気にやっつける。 すべてのクレジットカード利用明細の付け合わせから、通帳の付け合わせ、数百円のメルカリ売り上げ金も、数百円のガチャガチャの出費もすべてエクセルに入力していく。 電気、ガス、水道に至ってはメーター数も入力し全てをグラフ化する。 預金残高がうっすらと右肩上がりになったグラフを最後に眺めるのが好きだが、めんどくさいことこの上ない。 今回は10ヶ月放置したため、本当に大変だった。

          日々是徒然と ー10月中旬編ー

          理解できないこと

          「4人合わせて382才」 いやいや、年齢って他人と合算するものじゃないでしょ。 「そんなこと1ミリも思ってない」 思いの単位は長さと同じではないよね。 注文を終えると「メニューをお下げします」 いやいや、このまま置いておいてくれれば後で何か追加で注文するかもしれないし、料理が来るまでパラパラ見てたいし。 っていうか、メニューがテーブルの数だけないってこと? 「ポイントカードはお持ちですか?」 「ないです」 「失礼しました」 ポイントカードを持っていないことは触れてはいけ

          私的、日本人にベジタリアンが少ないわけ

           「いただきますは命をいただくってことなんだよ」  子どもの頃から何度も耳にしたセリフだ。だが、何度耳にしても私の心に響いたことは1度もない。  パックされ、スーパーの店頭にきれいに陳列されている肉。  たまに血が滲んでいることもある。  なのにそれが生きている動物だった、という実感が私には未だにない。  仮死状態にさせ血を抜き、皮を剥ぎ、内臓をずるっと取り出し、ぶった斬って解体したものであることは頭では理解しているけれど、本当にはわかっていない。  もう随分と前のこと

          私的、日本人にベジタリアンが少ないわけ

          巨大な稲荷寿司

          小学校1、2年生の時だったか。 父の会社のスキー旅行に行った。 長野だったはずだが、長野のどこなのか、そんなことは小学生の関心事ではない。 夜、旅館の古い和室の部屋で家族でテレビを見ていた。 隣の県に行っただけでもCMががらりと変わるので、旅先のテレビは面白い。 それは突然始まった。 CMだったのか、短い番組だったのか全くわからない。 それはカップのきつねうどんを作るシーンからはじまった。 お湯を注ぐと油揚げが大きくなり、1分後には油揚げがカップからはみ出した。 2分後

          小学校の同級生が被告人となった裁判を傍聴しに

           やっと少しだけ秋らしくなってきたある日の平日。  休みを取って地方裁判所へと向かった。  官公庁のずっしりとした威厳ある建物が並ぶ地域を自転車で駆け抜ける。  ここ一帯は品の良い大木が道路沿いに茂っていて、緑がふんだんで本当に気持ちが良い。地元という感じが一切しない。東京の皇居や丸の内周辺に似た雰囲気だ。  今日は今シーズン初めての長袖を着てみたが、少し腕まくりはしているものの柔らかな風が気持ち良い気温で、ちょっとしたサイクリングも兼ねられた。  地方裁判所の裏にある駐

          小学校の同級生が被告人となった裁判を傍聴しに

          クミンとの決別を考える

           ある日、ひとり暮らしの自宅にてひとり着替えていると、至近距離にインド系カレー屋の店員の気配を感じた。心臓が止まったかと錯覚するくらいの衝撃が体に走った。  はっと振り返るが誰も居ない。反対方向にも振り帰るが誰も居ない。ならばこっちか、と首を勢いよく正面に戻した。おかしい、誰も居ない。  誰かが居る、という驚きが少しずつ薄まってくるのを落ち着いてきつつある心拍数に感じながら周りを見渡した。  私以外には誰も居ない。でも、さっきは間違いなくカレー屋の店員の気配があった。  

          クミンとの決別を考える

          文芸思潮エッセイ賞

           募集要項なるものを読んで、書いて、応募する、ということを初めてやってみた。  エッセイのコンテスト。  それが優秀賞に選ばれた、という知らせを先月もらった。  募集要項にあった「日々の中に埋もれている強い思いや記憶」「残しておきたい体験」「体験に基づいた現代への鮮烈な視点」という3つの言葉にものすごく惹かれた。  これに当てはまることを書きたい、と強く思った。  私に何が書けるだろうか。  20個30個書き出してみるも、どれも当てはまらず、どれも3の言葉に対してひどく弱

          文芸思潮エッセイ賞

          お金持ちになったら

           私の現在の収入はとても低い。  月給としては間違いなく底辺に位置する。  そんな中でも毎月7万円貯金しているので、その節約っぷりたるや、ケチっぷりたるや。それらは凄みすらあると自負している。  じゃあ、お金を余りあるほどに得たいかと言われたらそうでもない。  ブランドものの類は、昔こそ憧れはあったが今は欲しいと思わない。  ユニクロが一番好きなので、むしろ数年前から衣類は「ユニクロ縛り」をしている。  ユニクロには存在し得ないデザインのものを見つけるとたまにジーユーにも手

          お金持ちになったら