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戦争を学ぶ

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戦争を学びたい人のためのマガジンです。軍事学のテーマを中心に、戦略、戦術、兵站、戦史などに関する記事を収録します。
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記事一覧

論文紹介 なぜルトワックは冷戦期に西側の軍事ドクトリンを批判したのか

研究者のエドワード・ルトワックは、1981年に戦略と戦術の中間に位置する分析レベルとして作戦…

武内和人
3週間前
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論文紹介 兵士の結束を強化するため、軍隊はいかに訓練を活用するのか?

軍隊は戦闘状況で兵士が協働し、部隊として任務を遂行できるようにするため、さまざまな社会的…

武内和人
1か月前
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論文紹介 ネットワーク分析で国際テロ組織の構造を分析すると何が分かるか?

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件以降、多くの研究者が国際テロ組織の調査研…

武内和人
1か月前
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論文紹介 冷戦期に選択的な核打撃の可能性を検討した戦略理論家の考察

コリン・グレイ(Colin Gray)とキース・ペイン(Keith Payne)は1979年にソ連がアフガニスタ…

武内和人
3か月前
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メモ 日露戦争における日本軍の戦略と通信インフラの関係

戦争において情報の優越が重要であることは古くから議論されていることですが、具体的にそれを…

武内和人
3か月前
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あるソ連の従軍記者が見たスターリングラードの戦い(1942-1943)

スターリングラードの戦いは1942年6月から1943年2月までヴォルガ川の西岸に位置するスターリン…

武内和人
3か月前
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ポスト冷戦時代に「テーラード抑止」を提唱したDeterrence in the Second Nuclear Age(1996)の紹介

ソ連の崩壊と共に冷戦構造が崩れると、国際システムの状況は冷戦期のそれとは大きく異なるものに変化しました。それぞれの地域大国が冷戦構造の制約を受けず、独自の判断で行動する傾向を強めたのです。ポスト冷戦時代に国際安全保障の課題として核拡散防止が注目されたのは、こうした状況で一部の「ならず者国家」が核兵器を開発、配備した場合、アメリカの核戦略は再考を余儀なくされることが認識されたためです。 キース・ペインは『第二の核時代における抑止(Deterrence in the Secon

論文紹介 コンピューターがサイバー戦争のすべてではない

サイバー戦(cyber warfare)という概念は安全保障の分野ですっかり定着しましたが、その意味…

武内和人
3か月前
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メモ 一次大戦で米国社会が直面した鉄道輸送の渋滞と長距離トラック輸送の台頭

1917年にアメリカ政府が第一次世界大戦に参戦すると、それまで見過ごされていた準備不足が次々…

武内和人
3か月前
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ベトナム戦争におけるリモート・センサーの運用を記述したWiring Vietnam(2007)の紹介

ベトナム戦争で北ベトナムがアメリカの軍事的支援を受ける南ベトナムの対抗し、1975年には南北…

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武内和人
4か月前
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メモ ソ連の軍事理論家スヴェチンは軍事産業の管理をどのように考えたのか?

ソ連の軍事理論家アレクサンドル・スヴェチンは『戦略』(1926)で独自の戦略理論、作戦理論を…

武内和人
4か月前
26

核の時代における防衛知識人の働きを記したThe Wizards of Armageddon(1983)の紹介

フレッド・カプラン(Fred Kaplan)はアメリカの防衛問題を専門とするジャーナリストであり、…

武内和人
4か月前
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メモ なぜヒトラーは降伏しなかったのか

イアン・カーショー『ナチ・ドイツの終焉』(宮下嶺夫訳、白水社、2021年)は外交によって戦争…

武内和人
4か月前
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論文紹介 指揮統制システムが第三次中東戦争でのイスラエル軍の優位を支えた

1967年に勃発した第三次中東戦争はイスラエルが数的に劣勢であるにもかかわらず、作戦、戦術の運用で優位に立てることを示した出来事でした。この事例はさまざまな研究で分析の対象になりましたが、Horowitz(1970)は、行政学の立場で軍隊の指揮統制が軍事力の有効性を高めることを論じています。 Horowitz, D. (1970). Flexible responsiveness and military strategy: The case of the Israeli