CHROだからこそできるリファラル採用のポイント~信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方Vol:3~
こんにちは。株式会社シンシア・ハート代表の堀内猛志(takenoko1220)です。
このシリーズでは、「信頼できる柱が欲しい経営者のための『プロパーCHRO』の育て方」について、50名から4000名まで成長した企業で、各ステージの人事組織戦略の遂行に人事役員として奔走した自身の経験をもとに、人事トップになるために実行したことや、意識していたマインド、経営や現場とのコミュニケーションのtipsなどをお伝えしていきます。
私の経歴詳細は以下からご確認ください。
それでは、今回のアジェンダです。
リファラル採用が浸透しないわけ
人材獲得と活用において、人手不足、労働市場で勝つのは至難の業、採用費用が高い、さらには、苦労して採用した人材のミスマッチや早期離職と、経営者や人事を悩ませる要素は非常に多いですね。
そこでどの企業でもなんとかリファラル採用を推進しようと躍起になっているわけですが、うまく言っていると言える会社は数少ないと思います。理由は以下の通りです。
①そもそも自社へのエンゲージメントが高くない
経営者には残念なお知らせですが、この理由が一番多いと思います。側近にいるような役員や事業責任者ですらなかなかリファラル採用を進めてくれないのは、近い人物ですらエンゲージメントが高くない可能性を一番に疑ってください。
リファラル採用は『自社のことを好きで好きでたまらないから他の人にも勧めたくなる』というマインドがあることが前提です。このマインドを持ち合わせていないのに人に勧めるのは嫌に決まっています。
責任者は事業の責任を持っているのだから主体的に人を集めるのもミッションのうちだ!そう考える経営者も多いでしょう。それ自体は間違えていないのですが、だからこそ責任者はリファラル採用ではなく、エージェントに頼るのです。自分で候補者を探すのは面倒なうえに、そもそもエンゲージメントが高い状態ではないのです。悲しいかな事実です。
リファラル採用を推進したい企業は、まずはメンバーのエンゲージメント向上から始めていきましょう。
②リファラル採用の『対象範囲』を誤解している
リファラル採用と聞くと、対象者を自分の友人だけと勘違いしている人が多いのです。「僕の友人にベンチャー志向の人はいないから」「俺の友人の年齢だとうちの採用基準では落ちるから」このような発言をする人は、リファラル採用の『対象範囲』を誤解していると認識して、定義を揃えてあげましょう。
リファラル採用の対象範囲は『友人と知人』です。友人となると範囲は相当狭いですが、知人の範囲は無限です。お客様、ビジネスパートナー、交流会で知り合った人、何かのきっかけで話すことになった人、すべてが知人の範囲に入ります。
友人を増やし続けるのはなかなかパワーがかかりますが、知人を増やすことはそんなに難しいことではありません。知人が増えないくらい内にこもっているメンバーは、リファラル採用以前に自己研鑽の観点で問題があると思いますので、外に目を向け、情報収集やサードプレイスとなるコミュニティを作る方法を教えてあげてください。サードプレイスの重要性や作り方は以下のnoteをご確認ください。
③『あいつは絶対に無理』という意識の壁
これも非常に多い言い訳です。しかし自分に当てはめて考えてください。今の自分の状態は1年前から予想できていましたか?予想できていなかった環境変化や心境の変化、価値観の変化が自身の中では少なからずあるのではないでしょうか。
人間は環境の生き物です。環境が変われば人間の価値観や思考は変わります。そして今はVUCAの時代と言われるように変わりやすい時代です。つまり、人も1年もあれば変わるのです。SNSで自分の繋がりのある人がびっくり転職をしている報告を見たことはありませんか?「え?まさかあいつがそんなところに?」そういうものなんですよね。
大好きすぎて絶対に結婚すると言っていたカップルがその数日後にあっさり別れるように、「俺はこうだ!」と言っていた友人知人があっさりと朝令暮改することはよくあります。それが人間です。
人事はその人間特性を理解し、『あいつは絶対に無理』という言い訳をするメンバーの言うことは聴かずに、ずっと狙っている人にアプローチを続けさせてください。そうすると1年もあれば3割くらいの確率で山は動きます。
CHROこそリファラルを率先垂範すべき理由
では、リファラル採用を推進する立場であるCHROこそ、率先垂範すべき理由を解説します。以下の通りです。
①リファラル採用を社内で一番できるからこそのCHRO
リファラル採用は、何よりも「人」という存在をよく理解することから始めるものだと思います。人は合理的な感情人です。合理的な側面がある一方で、感情による判断を行います。そして感情にはパラメータが多いので、分析し、仕留めるのが非常に難しいのです。
CHROは何ができる人かと問われると、まずは「人」に詳しいことが求められると思います。よって、合理的に説明がつかない施策を実行する決断を行い、人材獲得や活用のために必要性を訴え、実行し、結果を出す必要があります。
人への感度、興味、リテラシーが一番詳しいCHROだからこそ、自社らしいリファラル採用の戦略を描き、実行する必要があります。社内で一番リファラル採用戦略を描けるからこそCHROを名乗れる。その意識をまずは持って欲しいと思います。
②CHROができない/やらない施策はメンバーはやらないから
これも当たり前の話ですが、自分でやらずに人にやらせるだけの責任者に部下はついてきません。責任者が全て行う必要は当然ないのですが、ヨーイドンで一斉に同じことを行ったとしたら一番できる必要があります。
特にリファラル採用の実績がない企業でリファラル採用を実施する場合、それは新規事業と同じだと思ってください。責任者が新規事業で矢面の営業を行わない新規事業はあるでしょうか。そんな新規事業は必ず失敗します。
実績がないということは成功事例がないということです。成功事例がない中でやみくもにメンバーを動かすのは非効率ですよね。裏を返せば、成功事例をつくり、まずはそのままメンバーにやらせてみる、というやり方は、成功確率を高めます。
CHRO自ら率先垂範で実績を作り、成功事例のパターンをいくつも作り、そのノウハウやtipsを体系化し、メンバーにそのままインストールできるように構造化して運用に乗せる。このフローを作り切るのがCHROのミッションです。
③労働市場での戦いでCHRO力が磨かれるから
市場はとてつもないスピードで動いています。それに合わせて人材の価値観も動きます。前述した通り、CHROは人に一番詳しくあるべきなので、人への変化を感じる場に常にいることが求められます。
その場こそが市場です。外部人材と話し、他社はどういう人材を求めているのか、個人はどういう価値観を持ち、所属企業に何を求めているのか、そういう情報を収集しましょう。その場数を踏むことで人への感度やリテラシーが磨かれます。
以前のnoteで書いた通り、人事だけに詳しくなるのであれば、それは人事部長と変わりません。経営戦略と人事戦略を接続できるからこそのCHROであり、そのために、外に出て市場を知ることはマストなのです。デスクに座ってシコシコ役員会議の資料を作っている暇があれば、外に出て、どんどん新しい人に出会ってください。
リファラル採用は人事としての総合力が問われる施策だと考えます。リファラル採用を成功させるためには、ブランディング、マーケティング、企画、戦略、プロジェクトマネージメントなどの力が必要です。責任者とは言え、ひとつの専門力だけを見ればメンバーより劣るところがあっても全く問題ありませんが、総合力でメンバーに負けるわけにはいきません。つまり、リファラル採用を推進し、成功事例をつくることを継続する中で、CHRO力が磨かれていくのです。
CHROだからこそできるリファラル採用のポイント
最後に、CHROだからこそできるリファラル採用のポイントをお伝えします。
①近づいてくる人はみんな採用するという意識でアクションする
なかなかのパワーメッセージですが、この意識は重要です。近くにいる優秀な人はみんな採用してやるという意識を普段から持っているからこそ、いざというときに瞬発力がきくのです。
特に役職者ほど色んな人が近づいてきます。肩書の力は偉大です。自分で頑張って新規開拓しなくとも、プル型営業に成功しやすいのです。
わかりやすいのが他社からのアポイント設定依頼です。どの企業も決裁者アポをとりたいので、役職者はアポインターのターゲットになります。無駄なアポ設定は時間の無駄と考えるかもしれませんが、アポ獲得の電話がイケていると感じた企業のアポは受けるようにしましょう。イケているダイレクトセールスに出会うチャンスです。
向こうは売り込むのに必死なので、こちらの問いには素直に答えてくれますし、飯でも行こうと誘えば断りません。お客様やビジネスパートナーであれば引き抜きは禁止、または憚れることもあると思いますが、営業をかけてくる企業から引き抜きを行ってもなんら問題はありません。引き抜かれる方が悪いのです。
特に若い営業経験者をスカウトデータベースから見つけ、出会うのは相当難しくなっています。であれば、勝手に向こうから近づいてくる新規営業は大事にしましょう。新規営業を受けることは出会いのチャンスなのです。
②数年かかってでも採用すべき人材と定期的に接点をとり続ける
優秀人材ほど現状の所属企業で評価され、仕事や待遇面に満足しています。また、所属企業へのエンゲージメントも高く、札束でひっぱたいてもなかなか振り向かないのが日本的な優秀人材です。だからこそ、短期で口説けると思わずに、何度も何度も数年かけてアプローチしましょう。これは、優秀なスタートアップの経営者ならみんな行っていることで、いろんな逸話がありますよね。下記のnoteでもメルカリの小泉さんの事例が紹介されています。
しつこいくらいのアプローチを行うからこそ、優秀人材のハートに届くのです。このような定期的なアプローチを行うのもCHROとして大事なことです。
そもそも優秀な人材は会話のネタも豊富だし、同じかそれ以上のレベルの人としか会食には行ってくれません。何度もご飯に誘っても来てくれるのは、その優秀人材にとって、あなたと会ってると楽しい、学びがある、というメリットがあるからです。自社に来て欲しいからというスケベ心丸出しの誘いに何度も来てくれるわけがありません。「飯奢るから」とかどうでもいいです。優秀な人はお金に困っていません。
つまり、優秀な人材と出会い、定期的に会える関係を作れるくらい、ビジネスパーソンとしての知識、見識、経験、話題を持っているからこそのCHROだということです。上記の通り、労働市場で戦う中で磨かれるところもありますが、自分の本業の理論を古典や最新の論文から学んだり、本業以外の知識や教養を様々な自己研鑽を通して学び続けるべきです。そうやって、人としての深みがあり、話題が面白いからこそ、人に会いたいと思ってもらえるのです。
③リファレンスチェックを使って優秀人材の周りの優秀人材と接触する
重要なことですが、見落としがちで、軽く見がちなのがリファレンスチェックです。杓子定規にリファレンスチェックツールを使い、部下に問題がないかだけをチェックさせていないですか?それは非常にもったいない行動です。
何度も言いますが、優秀な人材を見つけることは難しいのです。採用したいくらい優秀な人材を見つけたら、その人材の社会関係資本、つまり繋がりに注目してください。人は似た人と群れます。つまり、優秀な人材の周りには優秀な人材が多いのです。
CHROであるあなたは採用した人の以前の職場の上司や同僚のことを知っていますか?出会ったことはありますか?優秀な人ほど評判が良いどころか、飛ぶ鳥後を濁さない行動をとるので、以前の会社との関係性も良好なはずです。つまり、優秀な人材が所属していた優秀な会社にいる、優秀な上司や同期と繋がることができるチャンスがあるのがリファレンスチェックなのです。
リファレンスチェック用のシステムからメールを送って、本人に書いてもらって終了なんてもったいない。あなたのCHROの肩書を利用して、採用候補者の上司や同僚にアポを頂きましょう。そして、対象者ついてインタビューをしつつ、その受け答えから判断し、やはり優秀だと感じたらカジュアルに仲良くなっていきましょう。あなたの肩書があり、丁寧な対応ができれば一度ご飯に誘い出すくらいのことはできるはずです。
誘い出すことができたらいきなり口説かずにキープインタッチ。②の行動を実践してください。リファレンスチェックを活用し、このような出会いと行動を実践できるのも、あなたがCHROであるからです。相手の会社に失礼じゃないか?ノンノンノン!労働市場は自由競争です。引き抜かれるくらい脇が甘い会社が悪いのです。
いかがでしたでしょうか?今回は「CHROだからこそできるリファラル採用のポイント」というテーマで解説を行いましたが、CHROじゃなくても実践できる要素はあるので、是非、これを読んだ皆さんに実践してみてもらいたいと思います。
より詳しいリファラル採用方法を実践したい、自社で人事責任者を採用したい、育てたいがうまくいかない、という経営者の方はご連絡をください。CHRO採用とCHRO開発を承っています。
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