1993年に日本で公開されたフランス映画『愛を弾く女』についてのマガジンです。同名のノベライズもこの映画の公開に合わせて出版されました。ノベライズを書くにあたって苦労したこと、刺…
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記事一覧
冬の心(その9)——遠い記憶。
そろそろ、このノベライズのまとめのような、レジュメのようなものを締めくくらなければなりません。
自分を取り巻くすべての人間関係を破綻に追い込んでしまったステファンは、恩師ラショーム先生の隠棲するサン=マルタンの森へと向かう。そこで今回の騒動の顛末をすべて打ち明ける。「自分の感情を完璧に支配しようなんて、傲慢だよ」という恩師の一言に、深く項垂れるステファン。
冬の心(その5)——ラヴェルのヴァイオリン・ソナタ。
カミーユから修理を託されたヴァイオリンを前にして、ステファンの頭で鳴る曲の描写。しかし、今、自分で書いたものを読み直し、あらためてラヴェルのヴァイオリン・ソナタについて調べていくと、自分がとんでもない勘違い、あるいは確信犯的ともいえるアクロバット的な小説化をやってのけていることがわかる。冒頭の引用は次のように続く。
もっとみる冬の心(その2)——シテ島のアトリエ。
今、パリの街はオリンピックで湧き上がっている。でも、これまでの盛り上がり方とは様子が違う。なぜなら、パリの街そのものが競技会場と化しているから。選手たちが船に乗ってセーヌを降る前代未聞の開会式もさることながら、一部の競技はセーヌ川とその周辺のオープンスペースで繰り広げられることになっている。
百年ぶりのオリンピック開催ということもあって、世界各国から観光客も押し寄せている。開会式を狙った鉄道襲