悲しみが好むもの
なぜ泣いているのか
思い出せないくらい
長い時間が過ぎた
悲しいことがあったから
泣いていたはずなのに
涙がまた別の悲しみを生んで
底なし沼に嵌った仔犬のように
もがけばもがくほど
悲しみの虜になっていく
この感覚は確かに知ってる
抵抗しても無駄なことや
やり過ごすしかないという
今は知識があるから
命までは奪われない
悲しみはそこまで外道ではない
打ち勝とうなどと思わなければ
悲しみが好むものを
決して身体に入れなければ
やがて然るべき処に帰ってくれる
この感覚は確かに知ってる
悲しみが好むものも
嫌というほど知ってる