syan

Web編集者。たまにシナリオも書いています。

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マガジン

  • 短編シナリオ

    10分程度の短編シナリオです。

最近の記事

「そういうとこ」

◯走行する車内 後部座席にいる岸田亮(28)、窓の外を見ている。横にはカメラバック。 運転をしている安藤道香(32)。 道香「ごめんねーいつも急で」 岸田「いいっすよ。どうせ暇だったんで」 道香「撮影場所の都合で、今日しか撮影できなくなっちゃってさあ。もともと頼んでたカメラマンも今日は来れなくて」 岸田「代打で呼ばれるのも、もう慣れました」 道香「ちょっとー皮肉言わないでよ。今度、別のメディアでカメラマンを募集してるから、岸田くんにも声かけるよ」 岸田「お願いしますよ」 道

    • 「生島麻美」

      ◯駅前広場(夜) クリスマスのイルミネーションがきらめいている。 仲睦まじそうに歩くカップルが数組。 ◯横断歩道(夜) 信号機が点滅している。 横断歩道を歩いている生島麻美(30)。スカジャンを着込み、ロングヘアーの前髪をハーフアップでまとめている。若干、千鳥足である。 麻美「ったく、どいつもこいつもよー」 ◯コンビニ・外観(夜) ◯同・店内(夜) 入店する麻美。レジにいる店員に話しかける。 麻美「すんません、トイレ借りれます?」 店員「あ、うちお貸ししてないんです

      • 「ノスタルジック」

        ◯(十年前)高原村・広場 緑のすすきに囲まれた広場。 樋口裕也(34)が、雲梯の端に立ち、鉄棒を掴んでいる。 それを見つめる樋口の妻・瑞稀(30)と、息子の拓真(4)。 樋口「いくからなー、見てろよ」 樋口、テンポよく鉄棒をつたい、向かいの端までたどり着く。  瑞稀「おおー、すごい」 拓真「パパ、すごい」 樋口、得意げな表情。 ◯(現在)走行する車内 樋口裕也(44)が車を運転している。 助手席には、山本明日美(24)が座っており、スマホをいじっている。 樋口「…

        • 「町中華にて」

          ◯駅前 小田急線沿いにある小さな駅。 ◯商店街 商店街を歩いている中野太一(26)。 中野M(モノローグ)「いつぶりだろう。日曜日の午前中に、こうやってゆっくり時間を過ごせているのは」 中野、店の看板や、すれ違う人を眺める。 中野M「営業として転職して半年は、仕事を覚えるのに必死で、休日もろくに休めなかった。だけど、最近はそれも落ち着いてきた。こうやって余裕を感じられてるのは、俺も少しは成長したってことか」 中野、商店街を抜け、人通りの少ない道に出る。 中野M「こ

        「そういうとこ」

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        • 短編シナリオ
          14本

        記事

          「合わない二人」

          ◯旅館・外観(夜) ◯同・客室・洗面脱衣室(夜) 鏡の前に立っている北村佳子(62)。 佳子「……大丈夫。イライラしない」 ◯同・和室(夜) 襖を開け、入ってくる佳子。 奥の広縁で、北村舞香(28)が電話をしている。 舞香「もし。伶奈? 久しぶりじゃん。元気?うん。大丈夫。全然。仕事終わり? お疲れ。うん。え、マジ? もしかして続いてんの? ヤバあ」 佳子、深呼吸をして怒りを鎮めつつ、舞香の前に立つ。 舞香、佳子の姿が目に入っても気にせず、電話を続ける。 舞香「え

          「合わない二人」

          「ストライプ」

          ◯婦人雑貨店・外 百貨店のフロアの一角にある、婦人雑貨店。 杉本啓太(17)がやってきて、店の前で足を止める。啓太はメガネをかけていて、どこか垢抜けないファッションをしている。 ◯同・店内 女性店員が、ガラスケースの上に何種類かのハンカチを広げている。 店員「このへんが、今年の流行りですね」 ハンカチを見比べる啓太。 啓太「なんか、どれもいいですね」 店員「プレゼント用ですか」 啓太「はい」 店員「あとは、お相手の好みにもよるかもしれませんね」 啓太「なるほど。そうで

          「ストライプ」

          「友人」

          ◯藍子の部屋(夕) 一人暮らし用のマンションの一室。電気は点いていない。 窓から日没後のほのかな青光りが差し込み、部屋全体をうっすらと照らしている。 デスクで勉強をしている北見藍子(21)。 金色のミディアムヘアで、凛とした顔立ちをしている。 机上には「看護学」と書かれた教科書が数冊積まれている。 藍子、ペンを置き煙草を手に取る。窓がある場所に移動し、窓を開ける。 窓は出窓になっており、床板のところには灰皿が置かれている。 煙草に火をつける藍子。 窓からは、2軒ほど先に建つ雑

          「友人」

          「CALL」

          ◯工藤家・工藤の部屋(夜) スマホの着信が鳴り響いている。 寝ていた工藤直哉(25)、スマホを手に取る。 画面に「功太」と表示されているのを見て、少し驚いた表情。 須藤、起き上がり、電話に出る。 工藤「もしもし」 しかし、応答はない。 工藤「二見?」 ◯湖畔(夜) 湖畔のベンチに座り、電話をしている二見功太(25)。フードをかぶっている。 二見「久しぶり」 ◯工藤家・工藤の部屋(夜) 電話をしている工藤。 工藤「久しぶりだな。どうした?」 (以下、適宜カットバ

          「CALL」

          「20歳の夏」

          ◯駄菓子屋・店内 アイスケースからガリガリくんのソーダ味を取り出す栗原志穂(20)。 髪型はショートで金髪。 志穂、それをカウンターに持っていく。 初老の女性店主が会計をする。 店主「あい。マンゴー味もあるけど」 志穂「大丈夫です。これで」 店主「あそう」 店主、志穂におつりを返す。 店主「あいよ」 ◯同・店外 夏の日差しが眩しい。 店から出てくる志穂。購入したガリガリくんを店の前で開封し、食べ始める。 蝉の声が鳴り響いている。 志穂、ガチャガチャの前でしゃがみ、小銭

          「20歳の夏」

          「フィナーレ」

          ◯チャペル・控え室 ウェディングドレスを着た夏樹エリカ(32)が鏡台の前に座っている。 エリカ、小枝柄のヘッドドレスを髪につける。 その後ろから、エリカの肩に手を置く片山紀明(30)。 片山「似合ってるね」 エリカ「なんか、自分じゃないみたい」 片山「緊張してる?」 エリカ「ちょっとだけ」 片山「俺も」 エリカ、立ち上がり、片山と一緒に控え室を出て行く。 ◯チャペル・式場内 祭壇上で、エリカと片山が向かいあっている。 神父「それでは誓いのキスを」 片山、エリカのベー

          「フィナーレ」

          「日曜日。キャットストリート」

          ◯アイスクリームの移動販売車・前 アイスを注文している、布施奏太(24)の横顔。布施は黒いキャップを被っている。 布施をベンチから見つめる、上原凛(23)。 凛M(モノローグ)「奏太はめったに笑わない。笑ったとしても、だいたいは愛想笑い。でもたまに、本当に可笑しそうに笑うときがある」 布施が、購入した2人分のアイスを持って凛のところにやってくる。 布施、凛にアイスを差し出す。 布施「はい」    凛「ありがとう」 凛、布施を見つめる。 布施「なに? なんかついてる?

          「日曜日。キャットストリート」

          「善悪」

          ◯駄菓子屋・外 年季の入った店構え。 店の壁面に、不審者への注意喚起のポスターが貼られている。色が少し色あせている。「怪しいと思ったら、すぐ通報を!」という文言。 ◯同・店内 伊藤裕斗(11)が、カウンターに爆竹の箱を数箱もってやってくる。 裕斗「これください」 老齢の男性店主が、いぶかしげに裕斗を見る。 店主「悪いことに使うんじゃないよ」 裕斗「大丈夫です、あとこれも」 裕斗、近くに置いてあったマッチ箱を手に取り、カウンターに置く。 ◯川沿いの道 枯葉が舞い落ち

          「善悪」

          「水の音色」

          ◯すずかけ学園・廊下 手洗い場の蛇口をひねり、水を出す須藤夏海(8)。 手を洗うわけでもなく、ただそれをじっと見つめている。 ◯同・正門 「特別支援学校・すずがけ学園」と書かれた表札がある。 ◯同・体育館 ラジカセから流れる軽快な音楽に合わせて、生徒たちがダンスの練習をしている。    身体全身をつかっておもいきり踊る生徒、首をふってリズムだけをとる生徒、車椅子に座りながら踊る生徒など、様々。 教員の野村栄子(23)が生徒たちにダンスの振り付けを教えている。 栄子「はい

          「水の音色」

          「雪の化学式」

          ◯高校・外観 校舎の窓のサッシに、雪が積もっている。 窓の奥に見える教室には誰もおらず、ガランとしている。 ◯同・廊下 3年生の掲示板に「以下の期間は自由登校期間とする」として、1月中旬から下旬の日程が記載されている。 ◯同・職員室 数名の教師しかいない職員室。 黒板には、「一月三十日(土)」と書かれている。 瀬島達也(18)が、バスケ部顧問の名倉(35)と話している。 達也、名倉に部室の鍵を渡す。 名倉「悪いな。部室片付けてもらって」 達也「いいっすよ。ついでだし」

          「雪の化学式」