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筋脳連関。運動が脳機能低下を防ぐメカニズム

📖 文献情報 と 抄録和訳

老化した脳を健康に保つための筋肉トレーニング

📕Burtscher, Johannes, and Martin Burtscher. "Training muscles to keep the aging brain fit." Journal of Sport and Health Science (2024): S2095-2546. https://doi.org/10.1016/j.jshs.2024.04.006
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[レビュー概要] 年齢を重ねても筋肉と筋脳軸を正常に保つことは、肉体的にも精神的にも健康でいることに役立つ。人生というレースにおいて、エンドスパートをかければ早くゴールできるわけではないが、その代わりに、より長く、より良い代謝、心血管系、筋肉、そして大脳の健康状態で走りを楽しむことができる。

この図は、運動が加齢による脳機能の低下をどのように防ぐかを説明している。中心的なテーマは「筋肉-脳軸(muscle-brain axis)」で、特に筋肉から分泌される「マイオカイン(myokines)」が、脳の健康に重要な役割を果たす点に焦点が当てられている。

■ 加齢に伴う細胞・分子レベルの変化
・図の中央に示されている「老化の細胞・分子の柱(Cellular/molecular pillars of aging)」は、加齢の主要な分子メカニズムを示している。これには以下の要素が含まれ、これらの変化は細胞や組織の機能低下を引き起こし、脳と筋肉の機能障害に繋がる。
- マクロ分子の損傷(Macromolecular damage)
- ストレス応答の調整異常(Dysregulated stress response)
- プロテオスタシスの乱れ(Disruption in proteostasis)
- 代謝の不調(Metabolic dysregulation)
- エピジェネティックの漂移(Epigenetic drift)
- 幹細胞の枯渇(Stem cell exhaustion)
- 慢性炎症(Inflammaging)

■ 脳の防御機構と機能向上
・これらの細胞・分子レベルの変化は、脳機能の低下(認知機能障害や認知症)に関連しているが、運動は次のような防御機構を通じて脳の健康を維持するのに役立つ。
- 脳の抗酸化作用とDNA損傷防御(Brain antioxidant and DNA damage defense):酸化ストレスから脳を保護し、細胞の損傷を軽減する。
- 脳のストレス応答(Brain stress responses):ストレスから脳を守り、神経細胞の安定を保つ。
- 凝集体防御(Aggregation protection):異常タンパク質の凝集を防ぎ、神経変性のリスクを低減する。
- ミトコンドリア機能と基質利用(Mitochondria function and substrate utilization):エネルギー代謝を改善し、脳細胞の活力を維持する。
- エピジェネティック調節(Epigenetic regulation):遺伝子発現の調整を通じて、脳機能の劣化を防ぐ。
- 新生ニューロンの生成(Neoneurogenesis):新たな神経細胞の生成を促進し、記憶や学習能力を支える。
- 神経炎症の低減(Reduced neuroinflammation):脳の炎症を抑え、神経細胞の健康を保つ。

■ 脳と筋肉の機能低下
・右側には、これらの変化が脳の認知機能の低下や筋肉の機能低下(筋力低下やサルコペニア)に繋がることが示されている。
・これらは、加齢による神経や筋肉の劣化を直接反映している。

■ 運動の影響
・図の下部に示されている「定期的な運動(Regular exercise)」は、「エクサカイン(Exerkines)」と呼ばれるシグナル分子の放出を促進し、これらの防御メカニズムを強化する。
・特に、筋肉から放出される「マイオカイン(myokines、例:イリシン)」が脳や他の臓器に影響を及ぼし、健康維持に貢献する。

■ 臓器間の効率的なコミュニケーション
・図の左側では、運動が臓器間の効率的なコミュニケーションを促進することで、全身の健康を保つメカニズムが強調されている。
・特に、筋肉と脳の間の「筋脳連関(muscle-brain axis)」が運動を通じた脳の健康維持において重要であることを示している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

運動は、認知機能を維持・改善させる。
『Exercise is Medicine』の代表的な効果の1つだ。
これまで、関連するいくつもの文献抄読をしてきた(関連note参照)。

果たして、その仕組みはどのようなものなのだろうか?
今回の抄読研究は、そのメカニズムを図示してくれた。
細胞・分子レベルの変化メカニズムがここまで分かってきているとは驚いた。
運動を推奨するのに、そのメカニズムのイメージを持った上で、語っていきたい。

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