ランニングと膝の軟骨
📖 文献情報 と 抄録和訳
健康な成人における定期的なランニングと膝関節軟骨の構造との関係
[背景・目的] 本研究の目的は、定期的なランニング距離とバイオメカニクスが大腿骨内側中央軟骨(MCFC)の構造と関連しているかどうかを明らかにすることである。
[方法] 18~65歳のランナーおよび非ランナー1164名を対象とし、参加者は身体活動およびランニング歴に関するアンケートに回答した。膝軟骨の定量的磁気共鳴画像-T2緩和時間(T2)マッピング(高T2は軟骨変性を示す)-と3次元モーションキャプチャシステムを用いたランニングバイオメカニクス解析を行った。また、14日間の運動モニタリングも行った。
[結果] 35~49歳では、MCFCのT2が最高レベル(85パーセンタイル、P<0.05)である確率が、若年成人と比較して84%高く、MCFCの構造が加齢とともに変化している可能性が示された。男性であることは、女性に比べてT2が最高レベルにある確率が34%低いことと関連していた(P < 0.05)。非ランナーおよび週当たりのランニング距離が最も長いランナーは、週当たりのランニング距離が6~20kmのランナーに比べ、T2が高い可能性が高かった(P < 0.05)。
さらに、最大膝内転モーメントは、T2が最高レベルである確率を19%低くすることと関連していた(P<0.05)。
[結論] 男性と比較した女性、および若いコホートと比較した中年コホートは、MCFC構造の変性と関連しているようであった。週6~20km-1走るランナーは、高活動者や非ランナーと比較して、MCFCの質が高いことと関連していた。膝前額面バイオメカニクスはMCFC構造と関連しており、定期的なランニングによって膝内側コラーゲン線維ネットワークが修正される可能性が示唆された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
変形性股関節症者の股関節負荷に関して『累積負荷』という考え方がある。
つまり、歩行の質 × 歩行量によって股関節負荷を考えよう、というものだ。
今回の抄読研究は、ランニングと軟骨変性について、それを考えようとした研究と言えるだろう。
その結果として、量的にはU字型、つまり軟骨を保護するランニングの適量(6-20km)があった。
一方、質的には膝内転モーメントが大きい方が軟骨が保護される、という結果だった。
この内転モーメントの結果は、仮説とはむしろ逆の結果であったが、やはりある程度の負荷が軟骨の質を高めるという概念の上では一致した結果とも思える。
とにかく、ランニングにおいて、膝の軟骨の質、という視点からは『ちょうど良い量』というのが存在しそうだ。
やりすぎにはご用心、である。
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