ストレッチ × 睡眠改善
📖 文献情報 と 抄録和訳
睡眠障害を持つ人々における慢性ストレッチトレーニングが睡眠の質に及ぼす影響に関するスコーピングレビュー
[背景・目的] 広範囲にわたって健康を損なう睡眠障害が蔓延しているため、睡眠の質を高めるための非薬物療法としてストレッチ運動が研究されている。しかし、睡眠障害を持つ人々に対するストレッチ運動の影響に関する包括的な理解は不足している。
[方法] このスコーピングレビューでは、睡眠障害を持つ人々におけるストレッチ運動が睡眠の質に与える影響について、既存の文献を系統的にマッピングし、研究上のギャップを特定する。
[結果] 16件の適格な研究が含まれ、加重平均変化は、些細なものから非常に大きなものまで、睡眠の質改善の肯定的な傾向を示している。しかし、個々の研究結果に関しては、16件のうち5件のみが有意な改善を報告している。
■ ストレッチングによる睡眠改善効果
・注目すべき改善点としては、睡眠の質が全体で1.22%改善、不眠の深刻さが6.51%減少、睡眠効率が8.88%増加、入眠潜時が4.36%減少、入眠後の覚醒が8.27%減少、総睡眠時間が14.70%改善したことが挙げられた。
・睡眠時間(0.58%)、睡眠障害の減少(0.07%)、日中の機能障害の減少(0.19%)については、わずかな変化が認められた。
■ 睡眠改善効果の仕組み
・睡眠の改善のメカニズムとしては、自律神経系の調整、筋肉の緊張緩和、コルチゾール値の調整、血行促進、ストレスの軽減や気分向上などの心理的効果などが考えられる。
この図は、ストレッチング運動が睡眠の質にどのように影響するかを示している。図は、ストレッチによる身体的・心理的効果が段階的に睡眠の改善に結びつくメカニズムを整理している。
・自律神経系の調節:ストレッチは交感神経の活動を抑制し、副交感神経を活性化することでリラックス状態を促す。この自律神経の調整は睡眠の質向上に重要だ。
・筋肉の弛緩促進:ストレッチにより筋緊張が緩和され、身体がリラックスする。これは、入眠しやすくするための準備段階を整える。
・ストレスホルモン(コルチゾール)の調節:コルチゾールは日中に高く、夜に低くなるべきホルモンだが、ストレッチはその自然な低下を助け、睡眠の導入を容易にする。
・血流の促進:ストレッチによって血行が促進され、身体に酸素や栄養が行き渡る。これにより、筋肉や全身のリカバリーが進み、リラックスが促される。
・心理的効果(ストレス低減や気分の改善):ストレッチは不安感やストレスを和らげ、精神的な安定を促すことで、睡眠環境を整える役割を果たす。
[結論] ストレッチ運動が睡眠障害を持つ人々の睡眠の質にプラスの影響を与えるという証拠はほとんどない。さらに、最適なプロトコルの設計、長期的な効果の理解、メカニズムの解明には、さらなる研究が不可欠である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
最近の文献抄読によれば、睡眠不足は以下のような弊害をもたらす。
そんな睡眠不足だが、重要なことは、「じゃあ、その部分にどうやって改善をもたらすのか?」である。
ただ、問題に対して認識するだけでは、現実は何も変わっていないのだ。
今回の抄読研究は、その部分に一隅の光を与えてくれる論文だった。
ストレッチングによる睡眠の改善効果をレビューした。
その結果として、睡眠の質が全体で1.22%改善、不眠の深刻さが6.51%減少、睡眠効率が8.88%増加、入眠潜時が4.36%減少、入眠後の覚醒が8.27%減少、総睡眠時間が14.70%改善することが示唆された。
さらに、その効果の仕組みまでレビューしてくれている。
睡眠の改善を求めるならば、まずはストレッチングから始めてみてはいかがだろうか。
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