術直後 “栄養補給” の威力。体組成の維持・合併症予防の効果
📖 文献情報 と 抄録和訳
条件付き必須アミノ酸の補給は、骨折固定後の術後合併症と筋力消耗を減少させる。無作為化比較試験
[背景・目的] 筋骨格系外傷後の術後合併症と身体機能の大幅な喪失はよくあることである。我々は、急性骨折の手術固定後の成人における合併症と骨格筋量に対する条件付き必須アミノ酸(conditionally essential amino acid: CEAA)補給の影響を評価するために、前向き無作為化対照試験を実施した。
[方法] レベルIの外傷センターで手術固定の適応となった骨盤および四肢の骨折を負った成人が登録された。対象者を損傷の特徴(開放骨折および/または多発外傷、脆弱性骨折、孤立損傷)により層別化し、標準栄養(対照群)または1日2回のCEAA経口補給に無作為に割り付け、2週間摂取させた。身体組成(無脂肪量[fat-free mass: FFM])をベースライン時および術後6週と12週で測定した。合併症はプロスペクティブに収集した。intention-to-treat解析が行われた。CEAA群に対する対照群の合併症の相対リスク(RR)を決定し、線形混合効果モデルを用いてCEAA補給とFFMの変化との関係をモデル化した。
[結果] 400名(対照群:200名、CEAA群:200名)が登録された。CEAA群は対照群に比べ、全合併症が有意に少なかった(30.5% vs. 43.8%、調整後RR = 0.71、95%信頼区間[CI] = 0.55~0.92; p = 0.008)。対照群では6週目にFFMが有意に減少した(-0.9kg、p=0.0205)のに対し、CEAA群では6週目にFFMが維持された(-0.33kg、p=0.3606)。このFFMの差は、その後の時点では見られなかった。
[結論] CEAAの摂取は、四肢および骨盤骨折の手術固定後の一般的な合併症および早期の骨格筋の消耗に対する保護効果を有することが示唆された。この安価で低リスクの介入による利点の可能性を考慮すると、重点的な外傷患者集団における多施設プロスペクティブ研究が必要であると思われる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
手術後には、自律神経系、内分泌系、疼痛、食欲・・・、さまざまな側面から身体が『異化』に傾く。異化となすなわち、身体を分解する方向への代謝傾向である。
そして、その結果として筋骨格系手術後の患者は低栄養状態のリスクが高く、その状態では合併症率が3倍に跳ね上がる(📕Hendrickson, 2019 >>> doi.)。
術直後という、栄養補給のゴールデンタイムにおいて「CEAAを補給することで体組成が維持され、合併症が防げる」ことが明らかになった。
さらに、リハビリテーション(≒ 運動)は栄養補給の需要を高める。施設別に高齢者の低栄養者の割合を調べた研究では、一般病院よりリハビリテーション病院の方が割合が高いことが示されている(📕Kaiser, 2010 >>> doi.)。
超回復のためには、どうあっても補給が必要だ。
その補給がとくに必要になるタイミングには、敏感になった方が良いと思う。
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