現代版お菊さん (1分小説)
「一枚、二枚、三枚、四枚、五枚…、やっぱり一枚足りない」
使用人のお菊は、がっくりと肩を落とした。
「奥さま、わたくし、痛恨のミスをしてしまいました」
女主人は、お菊から買い物かごを受け取った。
「誰にでも間違いはあるわ。それより、お菊さん、お買い物ご苦労さま」
お菊は、冷蔵庫に貼られた応募用紙を恨めしそうに見つめた。
「シール、あと一枚で貰えたんですけどね、『ヤマザキ 春のパン祭り』のお皿」
「また、来年もあるわよ」
女主人は、買い物かごの中から、敷島パンの『超熟』を取り出した。