タイミング (1分小説)
「康江ちゃん、僕ら、近所の公園でよくあそんだよね」
「砂場でのおままごとや、ジャングルジムも楽しかったわ」
マナブは、ゆっくりとブランコを動かした。
「僕らは、幼稚園の頃から一緒。あの頃から、僕は君が好きだった」
康江は、力強くブランコを漕いだ。
「嬉しいわ」
マナブの右手には、ダイヤの指輪が握られている。
それを確認すると、康江は、前方に左手を突き出した。
マナブは、意を決して言った。
「僕と結婚してください」
「ええ。指輪を、はめてちょうだい」
二人の距離が縮まる。
その時だった。マナブは、バランスを崩してブランコから落ちてしまった。
落胆の声と、まばらな拍手。
「あんた、これで何度目よ!?私、早く仕事辞めたいのに」
マナブと康江、45歳。サーカス団員の夜。