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教師のプライド (1分小説)

指がカサついてきた私は、答案用紙のうち、1枚だけツバをつけて返してしまった。

100点満点中、4点しか取れない不良の生徒、中島は、その瞬間を見逃さなかった。

ヤツが「不潔ジジイ」と騒ぎ出したもんだから、私は、クラス中から蔑みの目で見られ、教室に居づらくなった。

教師にだって、プライドはある。

職員室で、同世代の佐々木先生に一部始終を話すと、「年ごろの子供ですから、ヘタに怒ったら逆襲に合いますよ」と、指サックをくれた。

「私も昔は、よく、指にツバをつけてビニール袋を開けていたもんです」

そして、佐々木先生は、Tシャツの胸元を指差した。

「でも、プーマのロゴ入りシャツを1年近く着ていたら、両手の指に、透明の肉球ができてきて」

まさか。

「冗談ですよ」   
               

            

【1年後】

「中島が行方不明らしい」

「もう2週間経つわ、心配ね」

教室も職員室も、ザワついている。

「キミ、まさか」

佐々木先生が、ヒジで脇腹をつついてくる。

私は、ジャージのチャックを、遠山の金さん並みにゆっくりと降ろした。

そして、インナーシャツの胸元を見せた。

ラコステのロゴが、ひと回り大きくなったような気がする。

「冗談ですよ。また、家出でもしてるんでしょう」










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