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学校に行かないという選択。「成果とは、つながりから生まれる感覚のこと。」
勤労感謝の日。毎日が祝日みたいな我が家ではあるが、車が使える日は、行動範囲が少し広くなる。
子どもたちに何処か行きたい所ある?と尋ねると、普段はあまりそういった主張をしない二男が素早く答えた。
「アートスタジオ、って行ける?ラーメンさんで遊べるかな?」
アートスタジオとは、長男が先日、フランスを旅した凧をいただいたスタジオである。
その凧を頂いた際に、「ラーメンさん」で遊ばせてもらった。その時は、長男しかおらず、「あぁ、これは二男が好きそうだなぁ~。」と呟いたら、「年内に解体予定なんですけど、それまでは遊べるから、また来てください!」とスタッフの方に言っていただいていた。それを二男に伝えていたので、その機会を待っていたのだろう。
さて、「ラーメンさん」とは?
2019年度の国際公募プログラムでアートタジオに滞在し、札幌市の小学校でアーティスト・イン・スクール・プログラムを行ったアーティストユニットのアドルウント。彼らが当時制作したノイズマシーンが「ラーメンさん」です。
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天神山アートスタジオのブログよりお借りしました。
天神山アートスタジオでは、「アーティスト・イン・スクール・プログラム」というものを行っており、アーティストが学校に滞在し、子どもたちとアートプログラムを行っている。
*Artist in school/アーティスト・イン・スクールとは
高度経済成長期にマンモス化した日本の公立の小・中学校の校舎では、少子化が進み、校舎の中に空き教室が生み出されるようになってきました。この時代の変遷で生まれた「すきま」をアーティスト・イン・レジデンスの新しいサイトとして見出し、子ども達の通う(現役の)小学校の「余白教室」をアトリエにして、アーティストが一定期間、一時的に滞在し、制作活動を行うプログラムです。アーティストは、学校での制作活動を通じて、子どもたち、教職員、保護者、地域住民と交流を行います。
今までの活動をまとめた冊子を館内で閲覧することもできる。初めてアートスタジオを訪れた時、私の目を引いた冊子だった。
「学校は社会の入口となるのか?」というタイトルが私の興味を惹いた。
常に、私が考えていることでもある。社会の入口とは何処であるか?と。
私個人の考えとしては、社会の入口は「家庭」であると思っている。
親や兄弟・姉妹、3人集まれば社会というが、2人であっても、そこには、社会が存在すると思う。そして、第二の入口が、地域であり、学校や幼稚園、保育園などであるかなと。
「子どもたちの学校にアーティストがやって来る」という取り組みは、とても興味深く、子どもたちの生き方のモデルがひとつ増えることになる気がしている。
「ラーメンさん」の制作を子どもたちと行ったアーティスト「アドルウント」のインタビュー動画を拝見した。アートの中に、様々な「生」への視点、子どもたちへの「眼差し」があると感じ、私は胸躍った。
「私たちが作ったこれらは、いわば、道具であって、最終的な成果物ではありません。成果とは、学校と、アーティスト、それから生徒たちのとのつながりから生まれる、感覚です。」
アドルウントのお二方は、このように動画の中で仰っていた。
成果主義、と言われる世の中において、このような活動、このような眼差しで、子どもたちと関わってくださる方がいらっしゃることは、子どもたちに、〈既存の価値ではないところにある価値〉を感じるきっかけとなるのではないかと思う。
二男は、予想通り熱心にラーメンさんに触れていた。末娘も楽しそうに音を出していた。1時間半くらいだろうか。子どもたちは3人で、音を出したり、触ったり、揺らしてみたり・・・
ラーメンさんには、リサイクル品が沢山、使われている。ダイヤル式の電話機であったり、木琴であったり、瓶ビールの蓋であったり。昭和生まれの私は、「あ、コレ、懐かしい!」と声を挙げてしまった。
なぜ、リサイクル品を使ったかという理由を、ドキュメント動画の中でもお話ししてくださっていたのだが、リサイクルということは、誰かが使ったもの、即ち、「人の生活に馴染みのあるもの」を敢えてアーティストが選んだのだそうだ。「ラーメンさん」が見知らぬ存在ではないもの、誰にでも身近に感じられるようにという意図もあったようだ。
ラーメンさんは、年内に「さよなら」、解体の予定なのだそうだ。
長男が、スタッフの方に「解体する時に手伝いたいから呼んで欲しい。」というと、「ホントに?!じゃ、連絡しますね!」と言ってくださった。
2019年に、アーティストが子どもたちと「ラーメンさん」を作り、それを通じ共有した感覚。
2022年には、また別のアーティストと子どもたちが、「さよなら、ラーメンさん」の日には、解体し、その感覚を共有するのだろう。
それを成果と呼ぶなら、いくらでも成果を上げることに時間を費やしたらいいと思う。
生きている、そして、その感覚を共有することそのものが、「アート」。
そんな気がしている。
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おそらく、制作時よりは、ノイズが少なくなっている様子。
アドルウント インタビュー/ADRUNNOGNT Interview 2019年度国際公募プログラム・アーティスト・イン・スクール・プログラムの動画です。ご興味があれば♪
ヘッダーは〈みんなのギャラリー〉より、にしはらあやこさんのイラストをお借りしました。ありがとうございます♪
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