文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究報告書」を見て(2)
以下、所属の組織に関係なくごく個人的な見解です。
様々なバイアスが入っていますので薄目でご覧ください。
元の調査結果は以下のとおりです。
前記事はこちら
ひきつづき報告書部分を読んでいきます。
https://kohatsu.org/pdf/futoukouyouin_202403.pdf
p.16 児童生徒回答のきっかけ要因
いま学校に通っている子が去年「学校へ行きづらい・休みたい」と思った要因と、不登校の子が最初に「学校へ行きづらい」と思ったときの要因を比較しています。
通っている子1人が「学校の決まりごとなどがつらくて行きたくないなぁ」と思ったとき、不登校の子のおよそ4人がつらいと感じていたようです。(OR=3.94)
不登校になりやすい子は、つらいと感じやすいのか、つらいのは他に合わせるのが疲れる(過剰適応)のか、話声や机などを移動させる音や食感などが苦手な感覚過敏があるのか、それとも?
ここらの究明はこれからになるのでしょう。
今後の研究が楽しみです。
なお、オッズ比が高いからといって不登校の「因果」とはなりません。
不登校には即時対応が必要?
見ていて驚いたのは、将来の進路に悩んだのは大きなきっかけではなさそうです。
登校G 36.1% : 不登校G 27.0%(OR=0.66)※登校Gの方が多い
もちろん不登校さんも今は悩んでいるかもしれないし、不登校でなくともみんな悩んでいるのかもしれません。
(若年層の自死の多くが新しい生活をはじめる4月と9月(R4は10月が多かった)が多い背景でしょうか)資料
それに比べ、すぐにでも解決すべき問題の方がオッズ比が高いようにも思えます。
すぐにでも解決すべき問題とは?
あくまでも個人的な見解ですが、からだの不調・入学や進級・宿題ができない・先生と合わない・いじめ など。
これらは簡単に解決できなくとも、明日や来週じゃなく今すぐに解決にとりかかるべきなのかなとも思います。
熱を測ったら39度ありました。
よし、来月になったら病院に行こう
とはならないですよね?
でも実際には相談までに時間がかかる
以前にスクールカウンセラー(SC)さんに面談をお願いしたところ、「予約できるのは来月の○日」と言われ愕然としたことがあります。
援助希求が低い我が家が「このままではまずい」と思い意を決してお願いしたのに、1ヶ月後でないと話を聞いてくれないこの「制度」に意味があるのか?と思いました。
そうした個人的な背景もあるのですが、不登校の対応には即時性の必要なものがあるかもしれません。
p.10 教師・児童生徒・保護者の回答の比較
「対象者は、令和 4 年度問題行動等調査において不登校として報告された児童生徒で、教師回答は 1,424 名、うち児童生徒回答は 239 名、保護者回答は 200 名」とあります。
当事者がめっちゃ回答してくれてる!
いいなぁ、、昔を思い出させて辛かったかもしれないのに、、本当にありがたい回答です。
さて、この回答は調査が最もフォーカスしたい「認識の違い」をよく表しています。
最初の「いじめ」が気になります。
一部報道によれば「先生はいじめを不登校の原因として認識していない」といった論調でしたが、まぁそれもあるかもしれませんが、、、
報告書を見てみると、教師への質問は「事実としてあったか」を問うているので、教師がいじめと認識していない、あるいは正式に報告をしていないものはここに上がっていない可能性があります。
ただ、当事者や保護者はいじめとして認識していたというズレが出たのかもしれません。
ここで気にしたいのは先生が「どういじめを事実として認識していたか?」です。
ハラスメントは相手が不快に思うことが条件だったと思いますが、「いじめである」との判断は「誰が」すべきなのか今後議論を呼ぶ内容ではないでしょうか。
いじめの情報をどう共有するのか
生徒指導提要では教育委員会等への報告は重大事態になった場合に限られるようですが、事態の大小にかかわらず事前に先生間で情報を共有しようとも書かれています。(文科省生徒指導提要 pp.122-124)
別の調査で聞いたのは、先生たちは児童生徒に異変があっても「自分の指導力が無いと思われるのが嫌で、同僚に相談しにくい」そうです。
じつは、私の職場では学生に「大丈夫?」と聞いてはならないという研修も行われています。
大丈夫?と聞くと「大丈夫」と答えるよう圧力をかけているからとのことです。
そこで
「どこに困っている?」
「何に困っている?」
と聞くようにとのこと。
これには
「しんどそうにしている」
「手が動いていない」
といった行動があっての声かけです。
同僚間でもこういう会話ができるようになるといいですね。
特に上級職の方は、後で発生してしまう仕事を予防できたかもしれません。
つまり仕事を減らせるかもしれません。
p.12 保護因子について
この調査では保護因子についても調査しています。
どのような質問文だったか分からないのですが、「保護因子」から想像するに不登校リスクを軽減する因子を調査しているようです。
数値が表示されていない物は質問をしていない(対象が回答できない)項目とのこと。
注目したいのは、不登校生は「仲の良い友人」をあげており、不登校生と保護者とが「家庭内での良好な関係」を高確率であげています。
不登校界隈ではこの「仲の良い友人」としてメンタルフレンドをあてるべきとの考えもあります。
メンタルフレンドは心理を学ぶ大学生や院生など、年齢が近くてある程度メンタルヘルスに知識があるお兄さんお姉さんのことです。
友達は同級生でなくてはならない、友達は同じ学校にいなくてはならない、友達とは対面であそばなくてはならないという思い込みをまず捨てて、家庭外にも安心できる存在がいることで改善へとつながるかと思います。
そしてもう一つの家庭内での良好な関係の部分を見てやはりなと思いました。
不登校になって最初に解決すべきは家族関係(特に夫婦関係)と信じています。(家族関係が悪ければ)
養育者の抑うつ度と、子の抑うつ度が相関しているとの研究もあるそうですし、まぁ養育者の状態が良いにこしたことはないですよね。
私は特に父親がキーパーソンになると考えているので、研究仲間のSCさんや心理師さんに具体例をお知らせしています。
願わくば、全国の首長さん(特に男性首長)が「子どものメンタルヘルスにかかわる」研修を受けたり、ワークショップなどを体験して、社会の意識を変える旗振り役を担ってほしいなと思います。
<画像について>
出展を示していない画像はDALLE-3を利用して生成しています。画像のキャプションはDALLE-3のプロンプトです。
ヘッダ画像のプロンプトは「森の中に壁の無い小屋があります。小屋の中には小学生が複数人いて、小屋の外にいる男女の大学生と楽しそうに会話をしています。小屋の前には草原へとつながる道が続いています。この画像を横16縦9の比率で作成してください。」
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