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書籍『ハリネズミくんと森のともだち』
S.G.コズロフ(著) S.A.オストロフ (イラスト) 田中 潔(翻訳)
出版社 岩波書店
発売日 2000/5/24
単行本 133ページ
目次
1 やさしいゾウ
2 森の雪どけ
3 洗いたての鳥たち
4 ハリネズミが夜明けを見にいったこと
5 小川
6 こういう木
7 あまいニンジンの森で
8 ハリネズミと子グマが星をみがいた話
9 ふしぎな樽
10 ゾウがハリネズミのお客に来て
11 ハリネズミのバイオリン
12 霧の中で
13 雲を釣りあげたかったら
14 秋のおはなし
15 ロバがこわい夢を見た話
16 トゲトゲオーバーのコブタ
17 ハリネズミとモミの木
18 冬のおはなし
19 とびきりの春
20 黒い淵
21 ロバと小グマがオオカミをやっつけた話
22 ぼくたち、いつもいっしょだね?
訳者あとがき
内容解説
シラカバの森に住むハリネズミくんは空想するのが大好きです。寒さが厳しい冬の夜など、象がきて温かい息を煙突から吹き入れてくれないかなあ、などと考えます。ところが、本当に部屋が暖かくなってきて……
季節ごとに多彩に変化するロシアの森の美しさとハリネズミの途方もない空想力が、ふしぎな雰囲気の物語を作ります。
レビュー
本書は次のように始まります。
二月の森はひどい寒さでした。ハリネズミは一日じゅう暖炉をたきつづけ、それでもやっぱり、朝にはベッドから出てこられませんでした。それほど、家の中は寒かったのです。
「ぼくがいったいなにをしたっていうのさ?」フェルトの長靴をはき、ベッドからおりながら、ハリネズミはぶつぶつ言いました。
「あと一週間もこんな寒さがつづいたら、もう燃やすものがなくなっちゃうぞ……」
小いさなハリネズミが、冬の朝の寒さに「ぼくがいったいなにをしたっていうのさ?」と愚痴っている姿が目に浮かび、その余りの可愛さに一瞬で物語の世界へと誘われました。
どのお話にも思わず、「クスッ」としてしまう面白さがあります。
しかし面白いだけではなく北国の自然のように、豊かであると同時に厳しい世界をも内包する本書は、世界と命の輝きに満ちています。
本書は、ユーリ・ノルシュテイン監督の映画『霧の中のハリネズミ/霧につつまれたハリネズミ』の原作。
ただし映画とはまた別の世界が広がっており、その素晴らしい世界は優しく、そして深く、読む者の心を満たしてくれます。
読者がもし、北国生まれ、北国育ちであれば、本書をより深く楽しめるかもしれません。
厳しく長い北国の冬の終わりから翌年の夏の終わりまでを、心に残る22のお話で綴る、ロシア児童文学の傑作です。