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働き方改革のユニークなアイデア:スポーツの発想を病院へ

このコラムでは、スポーツから発想した病院での働き方改革のユニークなアイデアについて紹介します。そのアイデアとは、ユニフォーム2色制とポリバレントナース育成です。


看護師さんの残業を減らす働き方を考える


NHKでときどき放送される『発想転換!世界を変えるシン・キング』という番組があります。発想を転換することで、売上を急激に上げた事例などがクイズ形式で出題されます。2022年8月20日の放送で出題された病院の働き方改革のアイデアが非常に興味深いので紹介します。

多くの病院で、看護師さんは日勤と夜勤の交代制になっていると思います。熊本地域医療センターでは、看護師さんの残業が非常に多いのが課題でした。

番組では5人の回答者が、それぞれアイデアを出し、ディスカッションで一つのアイデアに絞りました。コストがかかるかどうかと、効果が大きいかどうかの2軸で各自のアイデアをプロットして検討しました。コストがかからず効果がなるべく大きいものを選ぶ寸前までいきましたが、一人が、「コストはかかっても効果が大きい方がいいのでは」とコメントし、正解に辿り着きました。

働き方のユニークなアイデア1:ユニフォーム2色制


正解は、日勤と夜勤でユニフォームの色を変えるというアイデアです。それまでは、日勤も夜勤も白いユニフォームで、医師は、残業している人かどうかわからずに声をかけてしまっていました。ユニフォームの色が違えば、誰に声をかければいいか一目でわかります。

この働き方改革のアイデアは、スポーツの発想に由来しています。

院長先生がアメリカンフットボールの試合を見ていたときのことです。オフェンスとディフェンスの入れ替わりが非常に素早いことに気づき、病院でも速やかに交代できないかと考えていました。そんな時、忘年会で若手の看護師さんたちが、ユニフォーム更新のためのファッションショーを開いたそうです。そのイベントを見た院長先生に、ユニフォーム2色制のアイデアが浮かびました。

投票の結果,バーガンディ(濃い赤色)とピーコックグリーンが選ばれました。ファッションショーと色の投票は、職場のコミュニケーション活性化のために行ったのですが、院長の発想と融合して、働き方改革のアイデアにつながりました。

実際に働いている看護師さんの反応としては、メリハリがつくようになったとか、残務の引き継ぎがスムーズになり協力体制が強化されたなどがあり、いい効果が出ていることがわかります。

NHKの番組ではここまででした。しかし、全体の仕事量は変わらないので、どこかに皺寄せがくるのではという疑問が残ります。

実際の残業時間のデータがあります。ユニホーム2色制導入前は、日勤、夜勤とも年間14,000時間もの残業がありました。ユニホーム2色制導入により、半分ぐらいに減りました。半分でもかなりな効果です。しかし、「業務過多」と「始業時間前の出勤」はまだ解消されませんでした。

働き方改革のユニークなアイデア2:ポリバレントナースの育成


働き方改革のユニークなアイデア第2弾も、スポーツの事象をヒントにしています。

2018年のサッカーW杯のメンバー発表記者会見で、ポリバレントプレーヤーという言葉が出てきました。複数のポジションを担うことができる選手のことです。これを病院にも導入しようということになりました。記者会見でぱっと出てきた言葉に反応できるというのは、ものすごい観察力ですね。

サッカーから発想して実施したのは、院内留学やジョブローテーションを通じて、病棟、外来、検査室といろいろな業務をこなすポリバレントナースを育成する取り組みです。看護師さんたちも、以前から、一つの病棟だけでなくいろいろな経験をしたいという希望がありました。

いろいろなことができる看護師さんがいれば、仕事の集中しているところに応援に入ることができます。ポリバレントナース育成を始めた翌年には、夜勤の残業がついにゼロになりました。日勤の残業時間も年間3,000時間程度に減少しました。素晴らしい結果ですね。

異業種から発想のヒントを取り入れる


病院とスポーツはかなりかけ離れた業態です。でも、両方ともチームワークがものをいいます。だから、熊本地域医療センターの皆さんは、スポーツのいろいろな場面に、自分達へのヒントがあるに違いないと注視しているのだと思います。このように、自分達とは違うところにヒントはたくさん隠れています。それを発見する力と、自分たちもやってみようと行動する決断力。働き方改革のユニークなアイデアを実のあるものにするには、この二つがとても大切です。

はじめのうちは、“人を入れては辞める”の繰り返しでした。『働いてよかった』と思ってもらえる病院をめざした取り組みが、こうして実を結んだことは本当にうれしく思います

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ナースプラス






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