「生きている、そのことがまさに哲学~『鏡の中、神秘の国へ』~」【YA55】
『鏡の中、神秘の国へ』 ヨースタイン・ゴルデル 著 池田香代子 訳 (NHK出版)
2006.8.12読了
重い病気のため自宅で寝たきりのセシリエは、ある日天使がベッドのそばにいるのを見ました。
アリエルという小さな天使です。
ふたりは、家族がいないときにいろんなことを話し合いました。
人間の心と身体について、この地の国と天の国、そして宇宙まで広がる壮大なまでの神秘な世界について語り合ったのです。
天使はなんでも知っているけど、でも人間の身体で起きるさまざまな感覚に関しては全くわからないようです。
一方、セシリエは天使が空中をふわふわ飛んだり、瞬間的に移動したり、壁を通り抜けられるという感覚がわかりません。
ふたりはお互いのことを、もっともっと知りたくなりました。
生きている、この世にいるということはいったいどういうこと?
そうして自分の身体からはなれ、安らかに眠っている自分を上から見て「美しい」といったセシリエはアリエルとともに、鏡の向こう側へと旅立っていったのでした…。
“生”と“死”について、幼い少女が考えていく物語です。
哲学的な内容の話を、少女と天使というキャラクターに会話をさせて、読み手に考えさせるという形式なので、構えることなく読み進めていけます。
しかしやはり深く考えると難しい課題に変わりありません。
元気で生身の肉体を持ち、日常の何気ない生活を送っている私には、アリエルやセシリエの話はあまりピンとくるものではないのです。
何気ない日常…と書きましたが、そういう日常でも何かしら必死に生きていると思います。
必死に何かを深く考えるのは、ひと段落してホッとした瞬間ぐらいかもしれません。
人間、いまわの際には自分の人生を、この世の中を、この宇宙をじっと考えてみるのかしら。
もしかしたら私は、この世からいなくなる時には過去のことに思いを馳せるのが大半かなと思ってしまいます。
楽しかった思い出や、後悔していること、できるなら今からでもやり直したいとこの期に及んでも思っていたり…。
そういうことばかり考えているかもしれません。
物語ほどには深い考えはできないかもしれませんね。
でも、なぜ自分がこの世で生きていられるのか、この世に存在するのか、考え直すきっかけを与えてくれたのは間違いありません。
この本は、以前も紹介しました『オレンジガール』と同じ作者、ノルウェー出身のヨースタイン・ゴルデルの作品です。
『オレンジガール』についての感想文はコチラ。↓
やはりテーマは生と死、なぜ人は生きるのか、宇宙の存在の意義など物語の内容が実に哲学的なのはこの作家の特徴のようですね。
ところで、先日事務局からnote開設1周年のお祝いメッセージが届きました。
実はnoteに登録した日は昨年1月10日。
でも最初の記事をここにあげたのは昨年1月23日でした。
元々別ブログに書いていた子育て日記をこちらに残しておこうと思ったのがきっかけでした。
これまで、いくつかのブログが突然無くなったりすることがありました。
なので保険みたいな形で複数のブログを利用させていただいていたのですが、子どもたちのことや読書した本の感想をそれぞれに書いたりしてバラバラな感じでまとまりがなかったのです。
しかしこのnoteの存在を知り、まわりに広告も出てこないし使いやすそうだったので、ここに全てを集結させようと思いました。
登録して開設したはいいけど、子育て、読書…と、どうまとめようかと考え、手を付けるまで時間がかかってしまいました。
1月10日に1周年の上記のメッセージが来た時、時の速さを感じました。
「1年はあっという間だったなあ」
かなりの過去に書いた記事がほとんどですが、現在の自分の状態や環境が変化しているのに合わせて、当時の内容をすこし変えながら、また変な文章だったなと思ったものも、手を加えたり書き直したりと自分で校正しています。
途中お気に入りのモノや旅行記も加えました。
これからも、現在の私についても少しずつ増やしていきたいと思っています。また読み来てくださると嬉しいです。
どうぞ皆様、よろしくお願いします。