【短歌と俳句】初夏の東北を旅して―十四歳の思い出―
湖畔にてかすむ対岸にらみつつ朝もやの中われ逍遥す
車窓より見ゆる人影田植え人
中学三年生のとき、修学旅行で東北地方を訪れた際の作品です。私が通っていた学校は都内の大変喧噪な場所にありました。毎日、地下鉄の轟音と車の排ガスとにさらされて通学していた私には、初めて旅する東北地方の初夏の空気は実に涼しく、さわやかでした。
湖というのは十和田湖のこと。すぐ近くのホテルに宿泊していました。朝起きて、誰もいない湖畔を散歩したときの情景を詠みました。湖面の青さと、辺りの静謐さとが強く心に残りました。
もう一つは、移動中の列車から見た光景を句にしたものです。何の説明も必要としないほど素朴な作品ですが、恐らくこれは私が自身の表現として古語を用いた最初ではなかったかと思います。
中学生になって文学が好きになった私は、石川啄木の『一握の砂』などは当時すでに読んでいました。「不来方のお城の草に寝転びて空に吸はれし十五の心」と詠んだ啄木が見上げていた空も、今僕が見ているような空だったろうか。そんなことを思って東北を旅するような、十四歳の少年でした。
私に魅力をお感じ下さるそのお心を、もしサポートとしてもお伝え下さいましたなら大変幸せに存じます。体質上、生きるために私にはどうしても日々必要な、保険適用外の医療を含め、制作に充当させて頂きます。より美しい作品、演奏をご披露することで、頂戴したお気持ちにきっとお応え致します。