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スタートアップが“PMF”に至るための戦略と「バリュープロポジション」

こんにちは。株式会社マイノリティの代表の柳澤です。

このnoteでは、多くのプロダクトのPMF前後のフェーズを間近で見てきた経験から「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」について解説しています。

こちらのマガジンにまとめていますので、よかったら読んでみてください。

今回はPMFを目指すスタートアップが考える競合戦略についてです。

競合戦略とバリュープロポジション

競合との戦いで、戦略もなしに飛び込んでしまうケースが実はよくあります。

一番多いのはすでに競合がいるところに後発で参入するケース。この場合、戦略なしで入ってしまうと、どうしても不利になりがちです。だからこそ戦略をしっかり立てることが大切。

似たようなサービスがあるとき私は「この商品のバリュープロポジションは何ですか?」とよく聞きます。

バリュープロポジションとは、「顧客が望んでいて、競合相手は提供できず、自社が提供できる価値」のことです。

この質問にスパッと答えられる会社って、どれくらいあると思いますか?経験上、PMFしていない段階の会社は半分くらいが答えられません。

私はこれをエレベーターピッチのようなものだと思っていて、「3分以内に簡単に説明してみませんか?」って話すんですけど、パッと答えられる人はかなり少ないですね。

初期の段階ではバリュープロポジションをしっかり考えないといけません。商品の魅せ方まで含めて設計することが大切です。

バリュープロポジションをつくると「顧客がその商品を購入するべき理由」が明確になります。バリュープロポジションは主に以下の5つの要素を考慮して作成すると完成度が上がります。

①商品の特長や利点

提供する商品の特長や顧客にもたらす利益を明確に示します。たとえば商品の品質、機能、使いやすさ、コスト削減、時間短縮などです。

②顧客ニーズや問題点

顧客が直面している課題や問題を理解し、それに対する解決策を提供して顧客ニーズに応えることが重要です。

③競合との差別化

他社商品と比較して自社商品の優位性を示すことが重要です。顧客が自社の商品を選ぶ理由を明確にしましょう。

④独自性

自社商品がどのように独自であるかを示すことが重要です。代替品と比較して、なぜ自社商品が優れているのかを説明することが必要です。

⑤顧客にとっての価値

顧客が商品を利用することでどのようなメリットが得られるのかを端的に説明できるようにしましょう。

バリュープロポジションが明確であるほど、顧客に選ばれやすくなるため、新規事業開発においては欠かすことのできない考え方です。

本当のライバルはExcel?

ただし、よく考えないと、競合を見間違えてしまうケースも多いです。

たとえば、CRMツールを売り出す場合、セールスフォースや国内の類似製品を競合だと捉えがちですが、実は一番の競合は表計算ソフトの「Excel」だったりします。

企画者目線でみると、同じような考えで作られた製品を競合だと思ってしまいますが、実はExcelから抜け出せない市場環境こそが一番の壁なのです。

となると、ある程度の競合がいることは、逆に良いことでもあります。競合がマーケティング・営業活動をすることで、クラウドで顧客管理することの利便性を広めやすくなったり、Excelからの移行を進めやすくなったりします。

競合がすでにいる場合は、トップを走る企業を分析して、なぜあの会社が伸びているのか、どの市場に強いのかを把握することが大切です。そして、ちょっと視点を変えて差別化を図りましょう。

例えば競合が製造業をターゲットにしていたら、自分たちは建設業から攻めるとか、同じ土俵で戦うと絶対に負けてしまうので、少し立ち位置をずらすのがポイントです。

PMFに関連するさまざまな指標

戦略の正当性を見るにはさまざまな指標・数値の管理が必要です。以前の記事で、「PMFを測定するための明確な定義はない」と書きましたが、実はPMFに関連する指標はいくつかあります。

もっとも有名なのが売上に関する指標で、「T2D3」と呼ばれるものです。聞いたことがある人も多いと思います。

これは厳密にいえば、PMF達成後に目指す成長指標ですが、PMFして1年目で売上3倍、2年目も売上3倍、さらにその後3年間で毎年2倍ずつ売上を伸ばすということです。T2D3=Triple2、Double3ということですね。

凄まじい成長率ですが、ユニコーン企業になるような会社はだいたいこれを達成しています。

国内だとSmartHRさんが超えています。最近だとSansanさんの「Bill One」とかもT2D3を超えていると思います。このペースで売上を伸ばすのが、PMFを達成後のスタートアップの1つの指標になっています。

同様に、製品をローンチして1年後〜2年後に見えてくる指標として、リテンションレートやチャーンレートのような遅効指標があります。

これらは契約時にはまだはっきりと見えず、次回の契約更新のときに初めてわかってくる数値です。プロダクトをリリースして、導入が進んだらしっかりとチェックしておきたい指標です。

そして「業界シェア」です。よく目にする言葉ですが、これってどのように捉えればいいのでしょうか。シェア1位を目指すべきか、シェア◯%を目指すべきなのか。

ちなみに、いわゆるBtoBのSaaS製品において「シェア1位」ってどれくらいだと思いますか。

答えは30%くらいです。興味深いことに40%まで取ってしまうと、それ以上増やすのがかなり厳しくなるんです。

そこから先は予算がない会社とか、まったくニーズがない会社にも無理やり営業しなければいけなくなってしまうので、獲得効率がぐっと落ちます。

もちろん100社あったら100社全部から受注できれば最高なんですが、財務的な事情とかもあるので、一旦30%以上取れば十分という認識が一般的です。40%超えて深追いすると難易度が上がりすぎて、疲弊してしまうこともあります。

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さて、今回はPMFを達成するための戦略とバリュープロポジションについての雑感と、PMF前後で意識すべき指標について書きました。

結局のところ、新しい事業や製品をつくるときは、競合をちゃんと分析して、正面からぶつからなくて済むよう戦略的に考えつつ、バリュープロポジションをはっきりさせること。これが成功の鍵になります。


「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」を書いていく連載。次回は「PMFにおけるドメインエキスパートの重要性」です。よかったらnoteをフォローしてお待ちください。

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