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スタートアップが“PMF前”にやってはいけないことと、積極的にやるべきこと

こんにちは。株式会社マイノリティの代表の柳澤です。

当社はシード期-シリーズAのスタートアップを中心にグロース支援をしており、主にBtoB企業のプロダクトマーケットフィット(PMF)の推進、マーケティング・営業戦略の立案を担っています。

このnoteでは、多くのプロダクトのPMF前後のフェーズを間近で見てきた経験から「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」について解説しています。

これまでの記事はこちらのマガジンにまとめていますので、よかったら読んでみてください。

PMF前にやらなくていいこと

PMF達成に必要のないことに時間を使ってしまうのは、初期のスタートアップによくある問題です。

「PMFするまでは、コード書くこととユーザーの声を聞くこと以外は何もするな」という考え方もあるくらいです。

例えば、PMF達成前のスタートアップがミッション、ビジョン、バリューを作るのは早すぎます。これ、わりと会社をつくった時にやりがちなんですけど、そもそも最初のプロダクトが市場に受け入れられるまでは必要ありません。

そもそもミッションというものは、自分たちの事業を通して世の中をどう変えるのかっていうメッセージです。プロダクトが定まってないのにミッションをつくっても無駄です。あとでいくらでも変わる可能性があります。

私も経験がありますが、創業したてのスタートアップや、シード期の経営者から事業相談の問い合わせが来て、ホームページを見ると商品情報はまだないのに、ミッションとバリューが書いてあったりします。これは結構“あるある”なんです。

プロダクトがPMFしてない段階でミッションやバリューを決めてしまうのは、プロダクトづくりに悪影響を与える可能性すらあります。

どういうことかというと、事業のピボットを妨げることにつながるからです。従業員が二桁いないぐらいのフェーズで、がむしゃらにPMFを目指すなかで、思考や行動を規定するものは極力少なくするべきです。

従業員が20人、30人と増えてきて、組織の壁のようなものにぶち当たったら必要になるでしょうけど、数人の場合は全くいらないです。その段階では権限移譲も不要です。

ちゃんとした営業組織もいりません。創業者と役員が中心となってガンガン売り込みましょう。ジュニアの営業は入れずに自分たちでちゃんと売り方を定めるのが最重要。初期は開発と顧客ニーズを把握するためのテスト営業に集中するのがいいと思います。

ある程度、ユーザーの声を聞いて、プロダクトをつくって、ベータ版のプロダクトをローンチしたら、少数精鋭でプレ営業をしましょう。手応えがあるまでは特にプロモーションも、メディアの露出もいりません。

マーケティング予算や採用予算の策定なんかもこの段階ではできるはずがないですね。だってどれだけ売れるかわからないですから。でもつくってしまうケースがかなり多いです。PMF達成するまではぐっと我慢しましょう。

あと、商品をリリースする前に社内の議論を重ねすぎてしまうのも問題です。お客さんにプロダクトを見せたり、モックやプレゼン資料で提案して顧客の声を聞いた方がずっと有益です。

顧客の声はどんどん取りに行く

それでもありがちなのが、社内でずっと議論していること。現場に行かずに会議室ずっと議論していてもPMFには近づけません。4〜5時間会議するよりか1時間お客さんに話を聞いた方が解像度が上がります。

市場と顧客に関する情報を拾いにいかないケースも多いです。これは新規事業に限らず、マーケターに結構当てはまります。PMFした後の会社で、マーケティングがうまくいってないところはほぼこれです。

マーケティング担当の話を聞くと、スプレッドシートで数値をまとめたり、計画書みたいなものを必死につくってるんです。結局は机の上でしか仕事をしていなくて、客先に行ってないからお客さんのことがわからない。

マーケティングはこうあるべきだとか、うちのお客さんはこういう人たちだと、頭では考えていますが、本当のところが見えていない。営業が商談でお客さんに相対しているのと同じくらい、マーケティングだってお客さんのことを知る必要があるんです。

日々の仕事とは別に、自分から能動的に客先に出向く必要があります。もちろん、オンラインでもかまいません。でも意外とそれをやってるマーケターは少なくて、BtoBの企業では特に、マーケターがお客さんのことを理解できていないケースも見られます。

では具体的にどうすればいいか。私がやっている方法を紹介します。

商談の映像から顧客を理解する

私が初めて支援先企業のプロジェクトに加わるときは、まずキックオフ前に事業に関する資料一式を準備してもらいます。お願いすると結構な量の情報をいただけます。

1.市場調査資料
2.競合調査資料
3.事業計画
4.提案書
5.商談録画
6.既存顧客リスト
7.売上実績
8.これまでのマーケ施策の結果

キックオフ前の確認資料

みなさん、ちゃんと調べるべきことは調べてるんです。市場環境を把握して、売上計画もちゃんと立てていて、既存のお客さんも少ないながらも10-20社はいたりします。

そういった資料をざっと見たら、その後に必ず、営業がお客さんと商談した録画を見ます。これは営業同行してるみたいなものですから、見ているだけで事業内容の解像度がグッと引き上がります。

新規事業の立ち上げやグロースを支援するときは、顧客の声や営業がどうやって話してるのかを見るだけで解像度が違ってきます。資料だけを見ているときの理解度が20〜30だったとすると、お客さんの声を聞くことによって70〜80に一気に引き上がる。それぐらいのイメージです。

社内での議論を減らし、市場に関する情報を得ることを優先してプロジェクトを進めることで、結果が変わってきます。これは新規事業を推進する上でのセオリーだと思います。

あとは何事も「時間をかけすぎないこと」が重要です。ターゲット企業は早急に決めてしまい、営業資料やLPは完成度が低くてもいいのでサクッとつくり、小さく早く回すのが大事です。これは過去のnoteで何度も伝えていますが、本当に大事なことです。

スタートアップのあるべき姿に

精度はあとから高めていけばいいのです。そもそもスタートアップの働き方ってそうあるべきじゃないですか。

例えば何かのタスクがあった時に、60%ぐらいの完成度ですぐにみんなに見せて、それを叩き台にどんどんディスカッションして進めていく。それでいいと思います。

一方で大企業だとそうはいきません。最初から90%ぐらいの完成度で出そうとします。本来であれば60%の完成度で1週間で出してくれればいいのに、2〜3週間かけて、本人の中での90%を出してくる。でもそれが、評価する側から見たら全然ダメだったりします。「ちょっと認識ずれてるね」みたいなことがあって結局、遠回りになるんです。

せっかく小回りが効くスタートアップなんだから、最初から完璧なものを時間かけてつくるよりも、小さく早く、多少荒くてもいいから前に進めることが重要です。これがPMF達成への近道になります。

まとめると、PMF達成までは、余計なことに時間を使わず、プロダクトの開発とユーザーの声を聞くことに集中する。そして素早く市場に出して、反応を見て、改善を繰り返す。これがスタートアップがPMFするためのセオリーです。


「スタートアップや大企業の新規事業がPMFするために必要なこと」を書いていく連載。シリーズ第7回は“PMF前にやってはいけないこと、積極的にやるべきこと”について解説しました。

次回は「PMFに至る戦略とバリュープロポジションについて」です。よかったらnoteをフォローしてお待ちください。

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