「検討します」の本当のココロは? お客さんの本音がわからない法人営業の悩み
こんにちは。マイノリティという会社で代表をやっている柳澤です。
ここ数回、法人営業の商談について連続で記事を書いてきました。
今回は商談をした営業が抱えがちな悩みについて。
「提案して、金額も提示したけれど、お客さんの本音がわからない」という声をよく聞きます。
私たち営業は実際、10件商談したら9件は「検討しておきます」って言われます。でも、この「検討しておきます」が曲者なんです。
「検討します」をどう受け取るか
本当に前向きに検討してくれるのか、それともダメなのか。日本人ってはっきり言ってくれないところがあるので、よくも悪くも「検討します」で終わってしまうことが多々あります。
私が営業トレーニングでいつもする話があります。
おもしろいことに、営業が10人いたら、「検討します」の受け取り方も10通りなんです。
「検討する」って言われたときに、ある営業は「ほぼいける」と思うし、別の営業は「全然ダメだった」と思ったりします。楽観的に受け止める営業もいれば、悲観的に受け止める営業もいるんです。
私は毎週、さまざまな会社の営業のForecast(受注見込み)をレビューしています。たとえば先週、商談が10件あったとして、まずはそのうち「Aヨミ」「Bヨミ」「Cヨミ」がどれくらいあるかを確認します。
これは営業からの自己申告なので、私が直接お客さんに聞いているわけではありません。失注してない限りは営業の感じた「見込み」が手がかりです。
しかし、お客様は提案に対して悪く言うことにメリットがないので、「検討します」とか「連絡します」って言って、その場をしのぐケースが多いわけです。
では、その「検討します」の温度感をどのように測れば良いのか。
ここで大事なのが「BANT(バント)情報」です。
「BANT情報」の4項目とは
これはけっこう有名な考え方ですね。BはBudget(予算)、AはAuthority(決裁権)、NはNeeds(必要性)、TはTimeframe(導入時期)の頭文字をとったものです。
この4つが満たされているかどうかで、営業のForecastの確度がわかります。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
予算(Budget)
まず予算(Budget)。少なくとも商談が行われたということは、営業はもう金額を提示してるはずです。だから予算については聞きやすいんですよ。
たとえば、「今回120万円の提案をしましたが、予算の範囲内でしたか?」とか「この金額ならご検討いただけそうですか?」みたいな感じで聞いてOKです。
金額を提示してるわけだから、当然、お客さんからのリアクションも返ってくるはずです。「ちょっと高いですね」とか「予算内ですね」とか。
ここで「高い」って言われても諦める必要はありません。たとえば120万円の提案に対して、お客さんが「100万円だったら何とかなるかもしれない」と言ったのなら、「これはいける」と判断できます。
決裁権(Authority)
次は決裁権(Authority)です。社長と商談していたのなら、当然のように決裁権はありますが、法人営業だと社長と商談しないこともよくあります。
そうなると商談相手の担当者がどういうプロセスで発注まで持っていくのかを把握することが大事です。でも実際は、これが確認できてないケースが多いんです。
「上司がOKって言えば大丈夫です」とか「どういうプロセスで決まるかちょっとわからないです」みたいな答えをもらってしまうことがよくあります。
ここで私がよくやるのは、こんな聞き方です。
「以前にもこういうシステムを導入された時は、○○さんがご判断されたんですか?」
これ、ちょっとしたテクニックなんです。たとえば、明らかに決められない立場の人だとわかっていても、「あなたがすべて決められるんですか?」って聞きます。
そうすると、相手は「いやいや、私ひとりでは決められないです。上司と、さらにその上の上司の承認を得てから、最後に稟議をまわして決めます」といったように、詳しく教えてくれます。
必要性(Needs)
次は必要性(Needs)です。ウェブからの問い合わせなどの場合、そもそもニーズがある商談です。でも5人以上の営業組織だと、ほとんどの営業はテレアポなども行い「取り敢えず話だけ聞いてみるか」という温度感の見込み客とも商談をするはずです。
だから、現状ではニーズを感じていない相手に、高いお金を払ってまでどんなメリットがあるのかを明確にしなければいけません。
この点において私が営業トレーニングでよくやっていることがあります。
たとえば製造業の帳票をデジタル化するSaaSの提案だとして、営業に対してこんな質問をします。
「今回は初期費用込みで160万円ですけど、お客さんが160万円払ったら、どんないいことがあるんですか?」
そうすると、イケてない営業だと「紙管理をデジタル化できるようになります!」みたいな答えしか返ってこないんです。確かにそれは便利かもしれないけど、いまの時点では紙でも運用はまわっているわけじゃないですか。
多少の問題があるものの、一応運用がまわっているものに対して160万円払う?ってさらに聞くと、「うーん」ってなっちゃうんです。
月10万円とか年間160万円を払って、どんなメリットがあるのかを営業側がしっかり言語化できてないと、お客さんは必要性を感じてくれません。
この記事でも書きましたが、商品やサービスの説明をするだけでは必要性はアピールできないのです。「Solution selling」の視点を持ちましょう。
導入時期(Timeframe)
最後に、一番難しいのが導入時期(Timeframe)です。これまで出てきた3つの項目は比較的聞きやすいのですが、「いつ契約するか」「いつ導入してくれるか」は、営業が一番聞きづらいのです。
それはやっぱり、怖いからなんですよね。
提案した時に「検討します」って言われたら、最後に「今月、契約してもらえますか?」とはなかなか聞けないものです。
いまは見込みにしているけど、「ここで聞いてダメだったら一気に失注だな」と思うと、ちょっと今回は聞かないでおこうみたいな、引き延ばしたくなる気持ちが出てきます。
特にこちらから営業をかけていると、相手がほしくて連絡してきてるわけではないので、余計に聞きづらいものです。
「検討します」って言われたら一応、見込みとしてカウントしますが、この「検討します」が3ヶ月以内なのか、半年後なのか、1年後なのかで優先度は全然違ってきます。だから、一歩踏み込む勇気が重要です。
トライアルは営業の武器になる
こんなときに、うまい聞き方があります。
たとえば、トライアルを提案する。営業が商談をして売り込む商材の場合は、だいたいトライアルのセットアップも営業側がやるわけです。
ほとんどの営業は「トライアルできないんですか?」って言われたら「できます」って言って、すぐにトライアル環境の準備に入りますけど、ここで導入予定時期を聞くのがセオリーです。
「トライアルできないんですか?」っていうお客さんからのオファーが来た時は、前向きに検討している証拠です。
ここでのポイントは、「ありがとうございます。トライアルですね。ちなみに、トライアルをやっていただいて良かった場合、いつ頃ご導入いただける予定ですか?」と聞くことです。
もし「来年だよ」って言われたら、「いまトライアルやっても、また来年トライアルをやらなきゃいけないと思うので、来年のこの時期にトライアルはやりましょう」と提案します。
逆に「トライアルが良ければ2ヶ月以内には発注できるよ」って言ってもらえれば、導入時期は確定するわけです。
さらに踏み込んで、「トライアルで確認したいところはどこですか?基本的には全部クリアできると思ってはいますが、どこを確認して、どの条件がクリアできたらご発注いただけそうですか?」まで詰めてもいいと思います。
ただ、ほとんどの営業はトライアルをそのまま受けてしまい、トライアルをやったのに決まらなかったというパターンに陥りがちです。
極端な話、トライアルしても導入時期が1年先だと言われたら、断ってもいいんです。1年前にやったトライアルの結果なんて、お客さんは覚えていないですから。
お客さんの「検討しておきます」という言葉は、トライアルという武器を使いながら、このBANT条件をちゃんと把握して、お客さんの検討度合いが今月なのか、3ヶ月以内なのか、またはその先なのかを見極めていくものです。
BANT情報は初回商談ですべて押さえる
営業としては、お客さんと話す中でBANT情報の4つをすべて聞き出せたら、「ちゃんと検討してもらえている」と思って良いでしょう。
逆に、この4つをどれかでも満たせていないと、決まる可能性は極めて低いです。3つ聞けたからOKというものではありません。1つでも聞けていなければ危険信号です。
営業トレーニングでよく言っていますが、この4つの項目は基本的には初回商談で全部聞くようにしましょう。初回商談でこれらを満たしてなかったら2回目の商談には行けません。行ってもほぼ決まらないでしょう。
たとえば、予算がないところに対してどんなに営業しても、お金がないので決まらない。決裁権がなければ担当者にいくら話しても決まらないです。そもそもニーズがなかったら、、、言うまでもありません。
あとは1年後に導入すると言っているところに対していま提案しても、大企業じゃない限り、うまくいきません。中小企業の「来年検討する」は期待薄です。いま提案してもお互いに時間の無駄になります。
だからこのBANT情報の4つは初回商談で一発で押さえるんです。
あともう1つ、テクニックを追加します。BANT情報をすべて押さえた上で、さらに受注確度をはっきりさせる方法です。
それは、お客さんが発注してくれる可能性を聞くことです。
「ご発注いただける可能性は何%ですか?」
商談で金額の提示が終わったら、「ちなみにご発注いただける可能性は何%ですか?」と聞きます。これを聞いたらけっこう答えてくれます。
手応えがある場合はだいたい「80%か、90%は発注しますよ」って言ってもらえます。もし「30%かな」って言われたら、それはそれでチャンスで、「ちなみに残りの足りない70%はどうしたら上がりますか?」って聞くんです。
そうすると足りないところがはっきりわかるので、BANT情報を満たした上で、埋めるための情報が得られます。
ただ、ほとんどの営業はこれを聞くのが怖いので聞けていません。この質問をするという考えすらないケースも多いんですけど。
これはわりと答えてもらえるので有効に使いましょう。「残り70%上げるにはどうすればいいですか?」について具体的に答えてもらえますし、もし逆に相手がそれに答えられなかったら、いずれにしても決まらないんです。
答えられなかった場合は、こちらが得たBANT情報が実態とは違っていることが多いです。その担当者から決裁権のある方に上げてもらう状態に達していない可能性もあります。
なので「検討します」の意味合いが、全く検討してない温度感だったことがここで判明します。
たとえば、残り70%が「いまはxxの機能が足りてない」とかだったら、これは貴重な失注情報として持ち帰っておきます。その機能がアップデートされたときに再度提案すればちゃんと発注いただけます。
こういうふうに聞くと貴重なデータにもなるんです。営業努力でコントロールできないことは早めに把握しておいたほうがいいですよね。「検討します」って言われて持ち帰って、後日に「どうですか?」って聞いて失注するよりも、さっさと失注してしまったほういいわけです。
このお客さんにもう一回時間を割く間に新しいお客さんのところに行けますから。相手の時間も無駄にならないので、お互いにとって良いことです。
最後に
結局のところ、お客さんの「検討します」という言葉の裏にある本当の気持ちを理解することが大切です。そのためにはBANT情報をしっかり押さえて、さらに発注確率まで聞いていく。そうすることで次にどういうアプローチをすべきかがはっきりしてきます。
営業ってやっぱりトレーニングで変わるものです。見込み客の「検討します」の意図を把握することは、商談を進める上でかなり効果が出ると思います。
すごくほしい情報でも、押し付けがましくないように、あくまでも自然な会話の流れの中で引き出していく。そのバランス感覚も、優秀な営業マンが持つ能力の1つです。
というわけで、自社の営業力に課題を感じている管理職の皆さま、よかったら弊社の資料をご覧ください。
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