マガジンのカバー画像

ささぶね【ゆったり共同運営マガジン】

35
「ほんとうに素敵だなあ」という方たちといっしょに運営しています、ちいさな文芸部あるいは同好会みたいな場所です。 マガジンに入れてアップしたら、お互いにコメントをそっと無理なく送…
運営しているクリエイター

#小説

生きていて「これは何の時間なんだろう」と思うことがたびたびある。何をするでもなく、ショートしたように固まっている時間。でも、そういう時は、整えていると思うことにした。うまく生きていくために内面外面ともに整えるための時間が必要なんだ、と。そう思うようになってから少しだけ落ち着いた。

初恋 #ウミネコ文庫応募

初恋 #ウミネコ文庫応募

 むかしね、青い瞳の男の子と出会ったの。夏の終わりの頃だったかな。うちの近所の駅前でね。気づいたらわたしその瞳のこと、「綺麗だね」って言ってた。そしたらその子、「海の目薬を使ってるんだ」って言ったの。

 わたしは驚いて(わたしが彼に声をかけたことにも、彼がふつうに応えてくれたことにも、海の目薬なんて返答にも)、驚いたんだけど咄嗟に思いついて、「わたし耳がすごく良くって、それは山の綿棒を使ってるか

もっとみる
おやすみ、シューシュー【童話】

おやすみ、シューシュー【童話】

「ねえ、ママ。お話しして?」布団のなかで、娘が言った。

「えっと、それじゃあ……積み木の国の王子様は旅に出ました。積み木の国に、バスを誘致するため、シエーバス王国に向かったのです」

「ねえ、ゆうち、ってなあに?」

「うーん、来てください、ってことだよ」

「どうして、来てほしいの?」

「積み木の国にはバスが来ないから、遠くまで移動できなくて、とても不便だったんだよ。昔からね」

「むかしっ

もっとみる
呼吸【掌編小説】

呼吸【掌編小説】

 口ずさんでいたら「呼吸みたいな曲だね」とあなたに言われた。そうしてそのまま、後ろからするりと抱きすくめられた。

 漫画を読みながら爆笑していたときもそう。後ろから抱きすくめられたのだった。しゃっくりが止まらなくなっていたときも、こうすればきっと早く治るからって。

 本当はもっとたくさんあるけれど、ぜんぶ挙げたらきりがないから……。

 わたしは息をしながら、あなたに想いを伝え続けよう。そして

もっとみる
お話の続き【あとがき】

お話の続き【あとがき】

(このnoteは小説『お話の続き』のあとがきです。本編を読んでいただいてからの方が、より楽しんでいただけるかもしれません。その旨ご了承ください。)

○○○○○ ○○○○○ ○○○○○

このお話は、tenさんとそのお店『tender hope town』、小川千紗さんのお名前からイメージをいただいて作ったお話でした。

tenさん…数字の十
tender…やわらかい、やさしい
hope…希望、の

もっとみる
お話の続き【小説】

お話の続き【小説】

昔々、あるところに
やわらかな川がありました

その川の水には千の希望が
薄く透明な織物になって流れていました

その川の側にあった十の町から
たくさんの希望が溢れてきていたのでした

それぞれの町が川をはさんで
お互いの町を鏡のように映しあっており
それはそれは静やかに
それぞれに輝いてあったのでした

ある日のこと
やわらかな川を一艘の笹舟が
すらすらと音もなく進んでいました

いくつもの透き

もっとみる