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お話の続き【小説】

昔々、あるところに
やわらかな川がありました

その川の水には千の希望が
薄く透明な織物になって流れていました

その川の側にあった十の町から
たくさんの希望が溢れてきていたのでした

それぞれの町が川をはさんで
お互いの町を鏡のように映しあっており
それはそれは静やかに
それぞれに輝いてあったのでした

ある日のこと
やわらかな川を一艘の笹舟が
すらすらと音もなく進んでいました

いくつもの透きとおった希望の織物にふれながら
またいくにんもの町の人たちに見守られながら
笹舟はひろいひろい海へ向かって進んでいきました

あしたは雨が降るらしいよ、とある人が言いました
ぶじに行けるといいのだけれど、とまたある人が言いました
わたしたちに出来ることはなんだろうか、とまたある別の人が言いました

それを皮切りにみんながみんな思い思いの希望を織って(あるいは、人知れず涙を流しながら)川へ流して過ごしてゆきました……


この笹舟のお話はこれでおしまいなのですが
このお話にはきっと続きがあると思えてならなかったので
わたしはそれを書いて生きてみることにしました

聞くところによるとわたしのほかにも
たくさんの(ほんとうにたくさんの)人たちが
みんながみんな思い思いに
今もなお
お話の続きを書いている、ということです