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【蒸留日記 vol.135】ヒロハラベンダーの蒸留。

本記事で解説するヒロハラベンダー(L. latifolia)の蒸留日は10/21です。

2024年Lavandula latifoliaの蒸留実施日

こんちゃこんちゃ
この頃になって急に蒸留作業が慌ただしくなってるラベンダー栽培家のエフゲニーマエダでっす!

ラベンダー属植物見本花壇に2株育っているヒロハラベンダー
こう見えて実は開花状態にある

この時期まで開花したヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)を放置してしまっていました!
だって見ての通り花がコモンラベンダーほど目立たないんだもん。

とはいえ日本で最北の土地北海道というかなり極限な環境で、たった2株しか育っていない限界ギリギリのヒロハラベンダーですが、ラベンダー属植物の中では産油量が特段多いラベンダー系統種。(香りの良さは別として)

なのでオイル取れないことはないはずなので、ハッカとヨモギの蒸留合間を縫って本日(10/21)北海道育ちヒロハラベンダーの蒸留・精油抽出を試みました!

たぶんヒロハラベンダーを最北で栽培してるのは俺だけのはず・・・


■Introduction -about 'Lavandula latifolia'

こう見えて花茎を直径1.5mほどに広げて展開しているヒロハラベンダー
本来の生育地とは大きく異なる寒冷地なので満足に大きくなれてないようだ

長い目で見た西洋の歴史的には、イングリッシュラベンダー(ことLavandula angustifolia)よりもヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)は以前から人々によく知られ、香りや精油成分を駆虫や浴用などに活用していました。
もっとも、イングリッシュラベンダーが雪の降るような高い山々にしか生育せず開花期も短期に限られ入手が難しかったのに対して、ヒロハラベンダーは海沿いから欧州内陸の低い土地(暑い土地にも)に普遍的に生えており、開花期が長く植物のサイズも大きめだったので収穫・活用がしやすかったのです。

美しい紫色のベールをまとう鑑賞花としてはもちろん、香水原料に利用されるイングリッシュラベンダーのほうが『ラベンダー』としての印象が強い植物ですが、一方の色彩であまり目立たぬヒロハラベンダーも立派なラベンダーの1種。

日本国内ではマイナーなラベンダー種であるLavandula latifoliaの呼び名はさまざまあってはっきりと定まってはいませんが、当ブログでは生物の本名とされるラテン語の学術名:Lavandula latifoliaはそれを直訳した「広い葉のラベンダー」の名称で呼んでいます。(Eng.→Lavender of Large leave)

中国の遺伝子解析研究でおよそ200万年に共通先祖のラベンダー種からそれぞれ酷暑・低地適応種(L. latifolia)と寒冷地適応種(L. angustifolia)とに分岐したことが判っているそうです。

ヒロハラベンダーの花①
花びらの色はラベンダーに共通の鮮やかな青紫色
ヒロハラベンダーの花②
コモンラベンダーとは違い、地味に長々と長期間にわたって咲く性質がある

不思議なことに、ヒロハラベンダーの園芸的見栄えは質素なシルバーリーフボタニカルといった外見なのですが、日本のハーブ苗市場ではなぜか苗木の取り扱いがあります。(ラベンダー ラチオーリアの名で流通)

花の香りも強烈な樟脳臭がありそこまで良いものでもなく、姿も質素で花茎だけやけに長く大きくミョーンと伸びる、ちょっと変わった形のラベンダーの1種なのです。
けど日本では苗木を意外と簡単に手に入れることができます。
もちろん精油生産も可能です。

ヒロハラベンダーに品種はある?ない?

ヒロハラベンダーの品種についてですが、ヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)自体が原種植物であり、園芸品種は存在していないようです。

ですが欧州の研究機関によると、地域個体群ごとに精油品質が異なるもの(ケモタイプ?)を精油生産用の作物として利用しようとする研究的動きがあるようです。いずれは産業別に精油成分が特化した遺伝タイプを選抜し品種化させる動きが予想されます。

https://www.researchgate.net/publication/257154282_Chemical_characterization_of_Lavandula_latifolia_Medik_essential_oil_from_Spanish_wild_populations

スペイン野生個体群からのラバンデュラ・ラティフォリア・メディク精油の化学的特性(2013,2月)

https://www.researchgate.net/publication/347621918_Environmental_Effects_on_Yield_and_Composition_of_Essential_Oil_in_Wild_Populations_of_Spike_Lavender_Lavandula_latifolia_Medik

スパイクラベンダー(Lavandula latifolia Medik.)の野生個体群における精油の収量と組成に対する環境の影響(2020,12月)

https://www.researchgate.net/publication/370835379_Agronomic_Evaluation_and_Chemical_Characterization_of_Lavandula_latifolia_Medik_under_the_Semiarid_Conditions_of_the_Spanish_Southeast

スペイン南東部の半乾燥条件下におけるラバンデュラ・ラティフォリア・メディクの農業評価と化学的特性(2023,5月)

■Materials&Methods

あまり精油の香りは良くないと言われるが
生花の香りはかなり甘美でフローラルな美しい香りがする!ラベンダーの収穫はいいぞ!

北海道のわが家では植えると寒さと積雪にやられて毎年枯れてしまうのでラベンダー系統種の見本花壇にしか植えていないのですが、運良く2株越冬し生き延びた子たちがおります。
(水はけがさらに良くなった花壇土がよかったのかな?)

圧倒的に遅れていて本来の収穫時期ではありませんが、彼らを無視して雪に埋めるのもナンなので数十本の花茎を収穫して蒸留してあげます。
ものの10分15分程度ハサミでパチパチと細かくするだけの簡単な収穫作業。

収穫重量は231g

ラベンダー属植物のなかでも抜きん出て高い収油率とうたわれるヒロハラベンダーの実力を知りたいので一応重量計測。
容器重量と差し引きで231グラムでの蒸留となります。

蒸留時間は1時間としました。

■Results

蒸留開始直後から、花茎収穫量の少なさからは想像ができぬほどの大粒の油玉(精油)がドバドバと蒸気管を下っているようす。すごい、圧巻…!

ピペット計測で2.7mLだった

ピペット計測で2.7mLの抽出結果となった。
やはり精油となると生花のときに感じられたなんともいえない素晴らしい花の芳香ではなくなってしまっている。

1.収油率 - EO Yield

抽出量[ 2.7ml ]÷ 素材重量[ 231g ]x 100 = 1.173%

24年10月下旬 北海道産ヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)の収油率

いやぁ…噂ではコモンラベンダー(Lavandula angustifolia)より収油率が3倍も高いと聞いていたのですが、3%とまではいかなくともかなり高い収油率を記録しました!
時期も時期ながら、ラバンジン(Lavandula x intermedia cv.)と並ぶ収油率といえそうです。
もっと早い時期8月中の蒸留であればさらに高い収油率となっていたんだろうなぁ…

2.香りとか - EO Scent

かなりニッチではありますが実は市販品の精油サンプル(南欧産)としてヒロハラベンダーの精油をすでに所有していたのです。
なので今回、ついに自家栽培&自家蒸留ヒロハラベンダー精油と市販品ヒロハラベンダー精油の香りを比較することができるように!!!

パッとした印象は、ラバンジンに似た印象の香り。
手持ちの市販ヒロハラベンダー精油と比べてみると…

(鼻風邪やらかしてるので官能比較はComing soon…)


●Add.秋咲きのコモンラベンダーも蒸留してみた。

素材重量401gでの蒸留

秋冬の枝葉剪定も兼ねて花を収穫したので枝葉込みの素材重量となっています。→すなわち収油率がかなり低下するのを意味

得られた精油量はピペット計測で1.3mLであった。

抽出量[ 1.3ml ]÷ 素材重量[ 401g ]x 100 = 0.324%

24年10月下旬 秋咲きコモンラベンダー(Lavandula angustifolia)の収油率

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エフゲニーマエダ(平成林業。)
若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。