【蒸留日記 vol.135】ヒロハラベンダーの蒸留。
こんちゃこんちゃ
この頃になって急に蒸留作業が慌ただしくなってるラベンダー栽培家のエフゲニーマエダでっす!
この時期まで開花したヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)を放置してしまっていました!
だって見ての通り花がコモンラベンダーほど目立たないんだもん。
とはいえ日本で最北の土地北海道というかなり極限な環境で、たった2株しか育っていない限界ギリギリのヒロハラベンダーですが、ラベンダー属植物の中では産油量が特段多いラベンダー系統種。(香りの良さは別として)
なのでオイル取れないことはないはずなので、ハッカとヨモギの蒸留合間を縫って本日(10/21)北海道育ちヒロハラベンダーの蒸留・精油抽出を試みました!
■Introduction -about 'Lavandula latifolia'
長い目で見た西洋の歴史的には、イングリッシュラベンダー(ことLavandula angustifolia)よりもヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)は以前から人々によく知られ、香りや精油成分を駆虫や浴用などに活用していました。
もっとも、イングリッシュラベンダーが雪の降るような高い山々にしか生育せず開花期も短期に限られ入手が難しかったのに対して、ヒロハラベンダーは海沿いから欧州内陸の低い土地(暑い土地にも)に普遍的に生えており、開花期が長く植物のサイズも大きめだったので収穫・活用がしやすかったのです。
美しい紫色のベールをまとう鑑賞花としてはもちろん、香水原料に利用されるイングリッシュラベンダーのほうが『ラベンダー』としての印象が強い植物ですが、一方の色彩であまり目立たぬヒロハラベンダーも立派なラベンダーの1種。
日本国内ではマイナーなラベンダー種であるLavandula latifoliaの呼び名はさまざまあってはっきりと定まってはいませんが、当ブログでは生物の本名とされるラテン語の学術名:Lavandula latifoliaはそれを直訳した「広い葉のラベンダー」の名称で呼んでいます。(Eng.→Lavender of Large leave)
中国の遺伝子解析研究でおよそ200万年に共通先祖のラベンダー種からそれぞれ酷暑・低地適応種(L. latifolia)と寒冷地適応種(L. angustifolia)とに分岐したことが判っているそうです。
不思議なことに、ヒロハラベンダーの園芸的見栄えは質素なシルバーリーフボタニカルといった外見なのですが、日本のハーブ苗市場ではなぜか苗木の取り扱いがあります。(ラベンダー ラチオーリアの名で流通)
花の香りも強烈な樟脳臭がありそこまで良いものでもなく、姿も質素で花茎だけやけに長く大きくミョーンと伸びる、ちょっと変わった形のラベンダーの1種なのです。
けど日本では苗木を意外と簡単に手に入れることができます。
もちろん精油生産も可能です。
ヒロハラベンダーに品種はある?ない?
ヒロハラベンダーの品種についてですが、ヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)自体が原種植物であり、園芸品種は存在していないようです。
ですが欧州の研究機関によると、地域個体群ごとに精油品質が異なるもの(ケモタイプ?)を精油生産用の作物として利用しようとする研究的動きがあるようです。いずれは産業別に精油成分が特化した遺伝タイプを選抜し品種化させる動きが予想されます。
■Materials&Methods
北海道のわが家では植えると寒さと積雪にやられて毎年枯れてしまうのでラベンダー系統種の見本花壇にしか植えていないのですが、運良く2株越冬し生き延びた子たちがおります。
(水はけがさらに良くなった花壇土がよかったのかな?)
圧倒的に遅れていて本来の収穫時期ではありませんが、彼らを無視して雪に埋めるのもナンなので数十本の花茎を収穫して蒸留してあげます。
ものの10分15分程度ハサミでパチパチと細かくするだけの簡単な収穫作業。
ラベンダー属植物のなかでも抜きん出て高い収油率とうたわれるヒロハラベンダーの実力を知りたいので一応重量計測。
容器重量と差し引きで231グラムでの蒸留となります。
蒸留時間は1時間としました。
■Results
蒸留開始直後から、花茎収穫量の少なさからは想像ができぬほどの大粒の油玉(精油)がドバドバと蒸気管を下っているようす。すごい、圧巻…!
ピペット計測で2.7mLの抽出結果となった。
やはり精油となると生花のときに感じられたなんともいえない素晴らしい花の芳香ではなくなってしまっている。
1.収油率 - EO Yield
いやぁ…噂ではコモンラベンダー(Lavandula angustifolia)より収油率が3倍も高いと聞いていたのですが、3%とまではいかなくともかなり高い収油率を記録しました!
時期も時期ながら、ラバンジン(Lavandula x intermedia cv.)と並ぶ収油率といえそうです。
もっと早い時期8月中の蒸留であればさらに高い収油率となっていたんだろうなぁ…
2.香りとか - EO Scent
かなりニッチではありますが実は市販品の精油サンプル(南欧産)としてヒロハラベンダーの精油をすでに所有していたのです。
なので今回、ついに自家栽培&自家蒸留ヒロハラベンダー精油と市販品ヒロハラベンダー精油の香りを比較することができるように!!!
パッとした印象は、ラバンジンに似た印象の香り。
手持ちの市販ヒロハラベンダー精油と比べてみると…
(鼻風邪やらかしてるので官能比較はComing soon…)
●Add.秋咲きのコモンラベンダーも蒸留してみた。
秋冬の枝葉剪定も兼ねて花を収穫したので枝葉込みの素材重量となっています。→すなわち収油率がかなり低下するのを意味
得られた精油量はピペット計測で1.3mLであった。