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誰もが文化を享受できる場所を守りたい—国立科学博物館へのメールー
西田祥子と申します。「アートマネージャー・ラボ」というグループで文化芸術に関わる互助ネットワークづくりやアドボカシー活動を行っています。
この度は、貴館のクラウドファンディングのニュースを拝見し、居ても立っても居られず筆をとりました。この事業がわずか2日で目標の4倍近い金額を達成し、科博を愛する人がこれだけ多いことを嬉しく思うと同時に、貴館がランニングコストを補うために市民に寄付を求めたことが、
ブックレビュー:日常に侵入する自己啓発 生き方・手帳術・片づけ
準備社会と言われる今日、望ましい未来をつかむため、自分を磨き、高め続けなければならないと思ってしまう感覚は、多くの人が共有するもののように思います。
本書は、そうした「自分磨き」の指南書ともいえる自己啓発本を分析したもの。
ターゲットとなる性別や年代を明確に指定した「年代本」。手帳を使って「自分の時間」の有効活用を呼びかける「手帳術」。身の回りの片付けと自己啓発を結びつける「片付け本」。自己啓
ブックレビュー:武器としての「資本論」
己の価値を「換算」しなければならない。
働いたり、仕事を求めたりしていると、自分の全てがお金にすり替わっていくような、何とも言えない気持ち悪さを覚える時があります。
本書は、マルクスの名著『資本論』から現代社会を読み解くもの。イノベーション。働き方改革。紙幣と電子マネーの決定的な違い。読み進めるうちに、19世紀にマルクスが看破した資本主義の機構が、現代社会にどれほど深く根付いているかが分かります
ブックレビュー:人間は料理をする ㊤ 火と水/㊦ 空気と土
「絵を描きたい」とか「何か作りたい」とか思っていたのに、料理をしたら満たされてしまった。そんな経験はないでしょうか?私はあります。料理への欲求と創作への欲求は、同じところから湧いてくるのではないか。そんな気さえします。
というのは個人の印象に過ぎないとはいえ、料理が、極めて「生産的」な営みであることは間違いありません。本書は、あるジャーナリストが、そんな料理の根源に迫ろうとする試みの記録。筆者が、
シャドウ・ワークとコロナ禍の10ヶ月 —第45回木村伊兵衛写真賞受賞作品展によせて―
これは、第45回木村伊兵衛写真賞受賞作品展の開催に際して、本展でキュレーターを務めた西田が書いたステートメントです。会場でハンドアウトとして配布していますが、緊急事態宣言発令下での展覧会開催となったことを鑑み、noteでも公開いたします。
【開催概要】
『第45回木村伊兵衛写真賞受賞作品展 片山真理・横田大輔』
会場:ニコンプラザ東京 THE GALLERY
会期:2021年1月19日(火) 〜
「アートマネージャー・ラボ」のこと。
最近、知人とともに、「アートマネージャー・ラボ」というものを立ち上げた。
最初のきっかけは、コロナ禍に際して文化庁が始めた継続支援事業である。
今年の6月に可決された第二次補正予算案で、文化芸術分野のフリーランスの人々への緊急支援案が盛り込まれた。しかし、その内容を受けて、私が主なフィールドにしている美術分野の人々は大いに慌てた。そこに書いてある内容が全体的に舞台芸術寄りで、「美術」という分野が
情念のマネジメント―「あいちトリエンナーレ2019」に思うこと
私が「あいちトリエンナーレ2019」に足を運んだのは、お盆休みのさなかである8月11~12日のことだ。《表現の不自由展・その後》の展示中止に際して、韓国からの参加アーティスト2名が展示中止を表明した直後で、タニア・ブルゲラなどが抗議声明を出した当日に、作品を鑑賞していた形になる。そして、感想に窮したまま、その後の事態の進展を注視しているうちに、文化芸術の世界を超えた問題にまで発展してしまった。
『無意味』の奔流―フランク・ステラについて
制作するという行為そのものについて、最近改めて関心が深くなってきている。このことについて考えるとき、私は、どうしてもフランク・ステラのことを考えずにはいられない。
学生時代、1回生向けのゼミの授業のテーマに取り上げたのは、ミニマリズムの作品だった。
実家にあった西洋美術の本を見開く中で、最も不可解だったミニマリズム。
前の記事にも書いたことではあるけれど、解説を読むと、「主観を排除」し、「芸術の
「作品」と「言葉」の距離―LEGOから考えたこと
近頃、LEGOが熱いらしい。
というわけで、知人の誘いで年末にLEGOを触り、先週、仕事の関係でも触る機会がありました。LEGO® Serious Playというワークショップのことで、LEGOブロックを用いて個々が表現したものに、メタファーを用いた語り(解釈といっても良い気がする)を乗せていくいくことで、チームメンバーの内面を共有し合い、組織力の強化を図るプログラムであるらしい。
やってみて思