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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2023年12月の記事一覧

不登校対応の公立校を全国に設置するという縦割り行政が大阪からスタート

不登校対応の公立校を全国に設置するという縦割り行政が大阪からスタート


不登校対応公立校 大阪府教育委員会は不登校生徒が特別なカリキュラムで学べる「不登校特例校」を公立高校として全国に先駆けて設ける案を発表したというニュースを見かけました。

この計画の中には、生徒らが登校しなくても学習支援を受けられる「バーチャル空間」の設置も検討している、と記事にはあります。

こうした試みをすること自体は決して否定できるものではありません。

事実、不登校の生徒は年々増加傾向に

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別府市の家族旅行欠席免罪符、「たびスタ」に意味はあるのか?

別府市の家族旅行欠席免罪符、「たびスタ」に意味はあるのか?


「たびスタ」全国的に導入が進みつつあるのが、家族旅行の生徒を欠席扱いにしない「れーケーション」という制度です。

日本では愛知県が最初に導入したように記憶しています。以前私はこの内容に関して一度記事にしました。

大分県別府市では「たびスタ」なる名称で同制度を導入しています。

別府市は観光産業を営む保護者が多く、暦通りの休日を取れない家庭に配慮するというのが目的としてあるようです。

公立小中

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最近の若者の学力は低下していないし、あの頃の試験は難しくない

最近の若者の学力は低下していないし、あの頃の試験は難しくない


最近の若者の学力低下「最近の若者」論、その中でも日本における大学受験が簡単になった、という話は中高年の飯のタネ、酒の肴としては最もありがたがられるものの一つです。

上記のポストを書いている「めいろま」こと谷本真由美氏はそうした中高年の一人でしょう。

彼女はITコンサルかつ著述家で、国際事情やITに関しては見識高い方ではありますが、中高年が陥りやすい若者の学力低下というドグマに陥っている人の一

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これからの教員に求められるのは「年少者に教えを乞うことができる能力」

これからの教員に求められるのは「年少者に教えを乞うことができる能力」


年上が年下に教えるという固定観念イェール大学のアシスタントプロフェッサーである成田悠輔氏は「X」に以下のようなポストをしています。

これまでの教育においては、経験知のある年長者が経験知の少ない年少者に教えるという構図が当たり前のように語られてきました。

成田氏はこの構図が固定化されたものではない、という考えを表明したわけです。

教科教育と技術、ICT実際、教科教育においては当然ながらその傾

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日本における他人の子に金を使う不公平感と教育が社会インフラであるという意識の欠如

日本における他人の子に金を使う不公平感と教育が社会インフラであるという意識の欠如


無償化の賛否東京都や大阪府の私立高校を含む高校無償化がメディアで連日話題になっています。

無償化に関しては賛否が分かれており、特に高学歴層の場合は低いレベルの高校生に公費を出すべきではない、という意見は多いようです。

また、中学生が私立高校に安易に進路決定し受験勉強をおろそかにするという批判もあります。

この意見に関しては私なりの反論をまとめています。

教育費=親負担主義日本では教育費は

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那覇市の小中学校、春休み6日間延長は朗報

那覇市の小中学校、春休み6日間延長は朗報


那覇市の小中学校、春休み延長那覇市の小中学校が教職員の負担軽減のために春休みを延長するというニュースを見かけました。

このニュースは沖縄の教員には朗報でしょうし、おそらく全国の教員は羨ましいと感じるものではないでしょうか。

教員が最も忙しい時期一般的に教員という仕事には明確な繁忙期というものは存在しません。

ただ、基本的には年度初めと年度終わりに関しては種々の書類業務と引継ぎや年間計画など

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「行政の受験料補助」という政策の「コレジャナイ」感

「行政の受験料補助」という政策の「コレジャナイ」感


山口県宇部市の受験料補助制度教育とお金の問題はここ最近の小中高親世代が最も関心のある話題の一つです。

授業料無償化や隠れ教育費など、いくつもの話題に関して私も自分自身の考えを発信してきました。

そんな中で追加で見かけたのが以下のニュースです。

どうやら山口県宇部市では高校や高専の授業料を2万円を限度額として補助するようです。

昨年までは所得制限をかけていたものを撤廃し、全ての世帯が支給の

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「隠れ教育費」と指定学用品価格の問題

「隠れ教育費」と指定学用品価格の問題


「隠れ教育費」「隠れ教育費」とは授業料などの目に見える部分以外にかかる学用品などの費用のことです。

これは本来無償である義務教育の小中学校でもかかるため、費用負担を想定していない家庭も多いようで、実際に必要だということが分かった時点でトラブルになるケースもあるようです。

この問題に関して、事前に費用をきちんと明記するなどの対応が遅れているのは学校および行政サイドの手落ちであるのは確かです。

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学校のFAX文化、終焉の日を迎えることに

学校のFAX文化、終焉の日を迎えることに


学校のFAX廃止FAXが未だに利用されているのが学校現場です。学校への申込などの様式をFAX指定にしているところも少なくありません。

そんな中、ついに政府が重い腰を上げて改革に乗り出したようです。

学校現場よく見かけるのが、一覧表がFAXで送られてきてそれを手打ちでExcelに入力するという業務です。

こうした無駄を省き、業務負担の軽減を進めるのが政府の方針のようです。

1年半前と比べて

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現行の入試制度では公立高校と特別支援学校の一体化は絵に描いた餅にしかならない

現行の入試制度では公立高校と特別支援学校の一体化は絵に描いた餅にしかならない

インクルーシブ教育インクルーシブ教育の推進が叫ばれて久しくなりますが、日本においては一向に進んでいないように思います。

そんな中で、国際都市東京が高校教育におけるインクルーシブ教育推進の方向性を打ち出しました。

はたしてこの政策がどの程度実効性があるのか、私には疑問です。

兵庫県立阪神昆陽高校の事例記事内では参考事例として兵庫県の阪神昆陽高校を上げています。

しかしながら、この阪神昆陽高校

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私立単願による学力低下は高校無償化の弊害ではなく、高齢化の必然

私立単願による学力低下は高校無償化の弊害ではなく、高齢化の必然


高校無償化の流れ高校無償化を打ち出す自治体が増えつつあります。

このニュースに関してはまず補足をしておくと、そもそも私立を含む高校無償化はすでに2020年から国の政策としてスタートしていました。

ところがこの制度は所得制限によって無償化の恩恵を受けない世帯も多く、その点が問題となっていました。

今回のこの流れは、大阪を中心に支給額の引き上げや東京都の所得制限撤廃といったものが話題になったも

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多子世帯の大学無償化は誇大広告、実際には学費割引制度

多子世帯の大学無償化は誇大広告、実際には学費割引制度


多子世帯大学無償化の大枠が判明先日「異次元の少子化対策」の一つとして報じられた多子世帯大学無償化の大枠が発表されました。

以前、第一報の時点でも私は記事として書いていましたが、その予想に近い状況のようです。

先日予想していたのは国立大学の学費標準額相当になる、と考えていましたが、どうやら私立大学に関しては多少の色を付けた支給になる見通しです。

この点に関しては予想よりも多めになったこともあ

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20年前の「大学像」をもとに大学教育を批判する中高年の滑稽さ

20年前の「大学像」をもとに大学教育を批判する中高年の滑稽さ


20年前の「大学像」現在42歳の私が大学に入学したのは1999年、今から24年前です。

その当時は私が通っていた地方国立大学でも教養などは300人収容できる大講義室で行われる講義も多く、出席も単位認定もがばがばというものが当然にありました。

特に文系の学部の場合はそうした講義が必履修のかなりの割合で存在し、大学に行かなくても卒業できる、大学は勉強する場所じゃないというイメージを持つ人が多かっ

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「多子世帯大学授業料無償化」は少子化対策には一切ならない

「多子世帯大学授業料無償化」は少子化対策には一切ならない


「異次元の少子化対策」異次元の少子化対策として、3人以上の子供のいる多子世帯については2025年度より大学授業料を無償化するという報道があっています。

詳しい内容は不明ですが、おそらくは国立大学の標準額に相当する額が支給される可能性が高いと思われます。

私立大学の学費の場合は、ここからはみ出た分を手出し、という形になるのでしょうか。あくまでも予想ですが、私立医学科などの学費を全額免除するとは

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